目の前でお行儀よく座っている男の子は、氷堂カズマ君というらしい。
プリン頭がちょっと古い若者みたいな感じだけれど、ユウが威嚇するほど怪しい人には見えなかった。

いつの間にか庭でユウと遊んでくれていたみたいだけれど、一体どうやって入ってきたのだろう。
一応、フェンスと塀で区切られてはいるんだけど……。

隙あらば逃げ出してカズマ君を引っかいてやろうという気満々のユウを抱きしめてなだめながら、ひとまず温かい紅茶を勧める。


「すんませんすんませんいきなり押しかけてお世話になるとか」


何故か必要以上にへこへこしながらずずーっと紅茶をすすったカズマ君に「お気になさらず」と言おうとして、違和感にふと首を傾げた。


……お世話になる?


「ええと……カズマ君?」
「はい?あ、この紅茶マジうまいっすね!ザンザスんとこのも最高級品だったけど、普通の紅茶がこんなにうまいなんて……!!」


何やら感動しているカズマ君の肩をたしたしと叩いて(ユウは反対側でがっちりホールド)(暴れても駄目!カズマ君は変な人じゃないでしょ!)、おそるおそる訊いてみる。


「あの……お家はどこですか?」
「家?家、いえ、いえ……俺の、家……」


呟きはどんどん小さくなっていって、それに比例するように小難しい顔になっていった。
しばらくうんうんと考えこんでいたカズマ君は、ややして情けなさそうに笑う。




「あー……そのー……俺の家、あるかどうかわかんない」




「は?」
「いやだって、俺のいたところじゃ、そんな変な奴いなかったもん」


それ、なんて生き物?と小首を傾げるカズマ君に、ユウの爪が襲いかかる。
ひょいと身軽にそれをよけたカズマ君は、「うっわー、マジで爪の出し入れできんだ!すっげー!」とかはしゃいでいた。


いやいや、そこははしゃぐところじゃないから!
そしてユウ、むやみやたらに引っかこうとしちゃ駄目!


慌ててユウを引き戻しながら、どうしたものかと眉を下げる。

残念ながら、我が家には見知らぬ(しかも同世代の)男の子を泊められないのだ。
カズマ君自身はとてもいい人なのはわかるんだけれど、やっぱり「知らない男の人」を部屋に上げるのは少しだけ抵抗があった。


   どうしても、あの時の恐怖がよみがえってしまうから。


「うーん……知り合いの家を紹介するんじゃ、駄目ですか?」
「あ、それでも全然いいです。んで、そのちまっこい某神田みたいな生物は?」
「某神田?」
「あー、うん、知らないならいいです全然関係ないです」


想像していたよりも提案にあっさりとうなずいたカズマ君は、それよりもユウのことが気になって仕方がないようだ。
じっと覗きこむカズマ君からユウを隔離しながら(というよりもユウの攻撃からカズマ君を守りながら)、改めてユウについて考えてみる。


ある日突然、ぼとりと落ちてきた。
流れで一緒に暮らすことになってしまったけれど、楽しいことの方が多い。

私の中では、ユウはユウで   




「ユウは、ユウでしかないからなあ……」
「おれはおれだ!」
「うん、そうだね」




胸を張ったユウにうなずいて頭をなでると、「こどもあつかいするな!」と怒られた。
だって、可愛いんだもん!


「はあ……そうっすか」


ぼんやりとうなずいたカズマ君を連絡の取れた男友達(一人暮らし)に引き渡して、ユウと二人顔を見合わせる。




「……変わった人だったねえ」
「あんなやつ、いえにいれるな!」
「はいはい。お夕飯、何がいい?」











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というわけで、やっちまいました!(笑)
書きたいなー書きたいなーとずっと思っていたので、とりあえず満足です。
カズマ君がものっそい偽物ですいません…!!(ヘコー)