ハロウィンが終わったと思ったら、次の日からクリスマスのイルミネーションやら装飾やら。
日本って本当に節操ないなあと呆れながらも、そのイルミネーションを楽しみにしている自分もいるんだから世話がない。
ええ、日本国内でのみ通用する、無宗教ですとも。

試験に追われながらそのイルミネーションの街並みを通っているとき、ふと思った。
……アレン、イルミネーションって見たことないんじゃない?

一緒に暮らし始めたのは冬だけど、そういえば誕生日がいつなのかも知らない。
普通の子供に当てはまらない規格外だからなあ……身長もあてにならないし。
帰ったら訊いてみようと思いながら、近くにあったロフトに足を向けた。


さん、おかえりなさい!」
「ただいまー、あー暖かい」
「てがこおりみたいですよ!ストーブつけますね」
「ありがとう、アレンも手ぇ洗ってね。私の手、まだ汚いから」
「はい!」


ぱたぱたと慌ただしく動き回るアレンに声をかけると、ちゃんといい子の返事が返ってくる。
私もしっかり洗わないとね、ノロとかインフルとか怖いから。

納戸に荷物を放り込んでから、アレンと一緒に念入りにうがい手洗い。
紅茶とホットミルクを淹れて一息ついたところで、幸せそうにマグを持っているアレンに訊いてみた。


「アレン、誕生日っていつ?」
「たんじょうび?」
「うん。そういえば聞いてなかったなって思って」
「……たんじょうび、って、なんですか?」
   え?」


あまりにも予想外すぎる内容に、思わず間抜けな声が出てしまった。

誕生日って、そりゃあ誕生日だ。
まさか、自分が生まれた日を知らない   のかもしれない。

当たり前すぎて忘れていたけれど、アレンは元々一人で生きていたんだった。
周りに疎まれて、気持ち悪がられて。
そんなこの子が自分の生まれた日を知らないのも、無理はないのかもしれない。

無性にやりきれなくて、小さな頭をぎゅうと抱きしめた。


「誕生日ってね、自分が生まれた日のことなの。生まれてきてくれてありがとうって、無事に大きくなってくれてありがとうって、お祝いする日」
「…………ぼく、たんじょうびがいつか、わかりません……」


しょんぼりしょぼり。


尻尾を下げて落ち込んでしまったアレンの背中をなでて、どうしたら元気になれるかをフル回転で考える。

これからアレンに毎年楽しく過ごしてらえるように。
誕生日が来ることを、喜んでくれるように。


「……アレン、コートとマフラー持っておいで。いつもの帽子も忘れないでね」
「……さん?」
「外に行くよ!今の時期はすごく綺麗なんだから」
「?」


首を傾げながらも早足で上着を取りに行くアレンはおりこうさんだ。
そりゃあ不思議だよね、何をどうしたらいきなり出かける流れになるんだって感じだし。
訊かれないだけ信頼されているのかなと、ちょっとだけにやけてみたりして。

どれだけ厚着をしても外は鬼のように寒いから、湯たんぽ代わりにアレンを抱っこ。
本当は都心に出た方が派手で綺麗なイルミネーションがあるけれど、外に慣れてないアレンを連れ回すわけにもいかない。

せいぜい駅前ぐらいかなあと思いながら歩いていたら、小さな公園が目に入った。
私が越してくるのとほぼ同時期に建てられたマンション群、そのついでに造られたとか聞いたことがある。

小さい子供が多いからか、アーチや植え込みなどに随分手の込んだイルミネーションが施されていた。
駅前よりもむしろこっちの方が気合いが入っているかもしれない。


「…アレン、顔出して?」
「はい……わあっ!!」


お腹の小山に声をかけると、そろそろと顔を出したアレンが目を輝かせた。


「すごい!きれいですね、さん!」
「うん。この時期になるとね、毎年こうやって装飾するんだよ」
「なんでですか?」
「誕生日をお祝いするの。みんなの罪を肩代わりしてくれた、救い主の誕生日だよ」
「すくいぬし……」


おおう、はてなマークが乱舞しているぞ。


「んー……みんなに大事に思われてる人?」


適当にそれっぽい言葉に噛み砕いて言い直してみると、こくこくとうなずいたアレンの目に羨ましそうな光が混ざった気がした。
大事に思われてないから、自分には誕生日もないんだとか思っていそうだ。

心外である。
非常に心外である。


「こーら、私はアレンがすっっごく大事なんだけど?」


柔らかいほっぺたを強めにつまみながらジト目を向けると、大きな目がぱちくりと瞬いた後にはにかんだような笑みに変わった。
可愛いなあと顔がゆるむのを感じながら、ついでに思いついたことを提案してみる。


「アレン、誕生日だけどさ」
「はい?」
「24日にしよう?12月24日。アレンは私の「救い主」だからさ」


かなりやさぐれていた自覚がある私も、アレンと暮らし初めてからずいぶん丸くなったと思う。
バイトの後輩もよく話しかけるようになったし、お客さんにも「可愛くなったねぇ!」なんて言われることがある。

「可愛いさんっ、お通しおまけしてくれるかなー?」なんて余計なおまけまでついてきたから、予想を裏切って「嫌だともー!!」と一蹴しておいた。
だれが乗るか、いいともー!なんて言ってやらない。


めんどくさいお客さんを脳内から追い払いつつ、にっこり笑ってアレンを見たら、綺麗な丸い目にみるみる涙がたまっていった。


「あーはいはい、泣かないの」
「ぼ、く……っ、だいじ……?」
「うん、大事。24日の本家よりも大事」


さらさらふかふかの頭をなでくり回して、ぎゅっと抱きしめる。
泣き虫わんこ、これからは寂しいなんて言わせないんだから!


クリスマス当日に、ケーキを誕生日用とクリスマス用の2つ買って帰ったら、飛び上がって大喜びしてたアレン超可愛い。
生クリームをほっぺたにつけながらケーキを頬張るアレン超可愛い。
翌日に案の定お腹を壊したので、消化にいいうどんを煮て食べさせた。
涙目のアレンも超可愛いね、うん。











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ひゃ、ひゃくまんだ……!!
やっとできあがりました、百万打記念!!

すでに夏になりかかっていますが(笑)われんが毎年幸せなクリスマスを迎えられますように!
大喜びでケーキはぐはぐしちゃえばいいよ。
顔についたクリームをとってもらって照れちゃえばいいよ。

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