セフィロスという男は、実によく月光が似合う。
極秘に派遣された先で月下に佇む「英雄」を見て、こっそりしみじみとそう思った。


「あんたって本当に月が似合ういい男だよね」
「何をふざけたことを」
「本当のことじゃない。そんなに怒らないでよ、英雄殿」


ちらりと苦笑してみせれば、完璧に整った眉が顰められた。


、くだらない事を言っていないで任務にあたれ」


不機嫌そうにそう言ったセフィロスにそれ以上何も言わず、私も静かに剣を構える。




   行くぞ」
「承知」




それ以上、私達に会話はいらない。

2人同時に飛び出して、反神羅組織のアジトに突っ込んだ。


こちらがたった2人とはいえ、相手は正規の軍事訓練も受けていない素人。
打ち合わせなどしなくても、互いに補いあうだけで事足りた。


「なっ   !」
「甘い」


部屋に飛び込んで、慌てて武器を構えようとする男達に呟いて。
瞬く間もなくレイテルパラッシュで斬り裂く。


随分と知名度の低いこの剣だけれど、バスターソードよりも細身だから扱いやすい。
それでも、こんな大剣を振り回す女ソルジャーは、きっと私ぐらいだろう。


「神羅   !!」
「そう、私は神羅。たてつく以上、こうなることも予想には含めていたんでしょう?」


うっそりとささやいて、容赦なく斬り裂いて。


反神羅を名乗っておきながら、鎮圧される危険性を考えていなかったのだろうか。
本当に甘い   甘すぎて、その愚かさが愛しい。


遠くの方から派手な破壊音が響いてきた。
セフィロスがサンダラでも使ったんだろうか。




「派手にやるねえ」




小さく笑って呟くと、目の前の男達がびくりと引きつった。


「ど……どこで、俺たちの情報を   
「そういう部署があるのよ、神羅をなめないで?」


ハイエナのように嗅ぎつけて、邪魔者は情け容赦なく排除する組織だから。
そして私は、そのハイエナに従うただの駒。


知らずにもれた自嘲をそのままに、室内にいた標的を一撃で葬り去った。
痛みは与えない、それが駒である私のせめてもの情け。


さっさと片付けてもう1つの騒音の発生源まで向かうと、やはりセフィロスが派手に魔法をぶちかましていた。


「あんまり建物は壊さないでよ、セフィロス。こんなに保存状態がいい物件は珍しいんだから」
「……わかった」


久し振りに威力を気にせずに暴れられると思っていたのか、釘をさすとセフィロスは渋々とうなずく。


「乱れ打ちがしたいなら、向こうの荒野でやってきなさいな。少なくとも破壊するのはここよりずっと少なくて済むから」
「任務が終わったらな」
「私もつきあうよ。最近簡単なものばっかで、腕がなまりっぱなしだったんだ」


すぐに終わらせる。

暗黙のうちに告げられたその言葉に、思わずにやりと笑みがこぼれた。












「今回もあんまり手応えがない任務だったわね」


先程まで戦場だった古城を見上げながら、返り血の一つも浴びていないがセフィロスに笑いかける。


「それだけ平和だという証拠だろう」
「平和、ね」


皮肉げに笑ったセフィロス自身、そんなことは露とも思っていないだろうに。


「本当に平和だったら、神羅に兵士もソルジャーも必要ないでしょうに」
「道理だ」


くつりと笑うセフィロスが月の光にとけこみそうで、は思わず小さく息をのんだ。


銀の髪、魔晄の瞳。
月の元でこそ輝く、その美貌。


   どうした?」
「……いや、何でもないよ」


不思議そうに首を傾げたセフィロスに曖昧に笑ってごまかし、こっそりと自分の髪をつまんでみる。
ウータイ特有の黒髪黒眼は味気なくて、闇の中では溶けこむばかりで全く映えない。


「英雄」だからというだけではなく、この輝くような容姿だけであっても、充分うらやましいという感情を呼び起こした。


「ねえ、セフィロス。その髪の色は遺伝?」


今まで銀の髪の人間など見たことがない   この男以外は。
もしも母親譲りだったならば、セフィロスよりもさらに人の目を奪っただろう。

そんな気持ちで訊いただけだったのに、何故かセフィロスは一瞬動きを止めた。


「……いや、俺は親のことは知らんのでな。は遺伝か?」




……驚いた。




彼のデータがほぼunknownになっているのは、噂で聞いたことがあった。
けれどそこに、こんな事情があったとは、誰が思うだろう。


「……私の故郷はウータイでね。大抵がこんな色をしてるのよ」


親の遺伝というよりも、民族の遺伝と言った方が近いかもしれない。
そう言って肩をすくめると、セフィロスが珍しく淡い笑みを口の端にのぼらせた。

そうして紡がれた言葉に、私は絶句する。




「お前のその色は、闇にも陽にもよく映えるな」




   どうしてそう思うの?」


あなたの銀の髪の方が、私よりもよほど映えるのに。


「全てを受け入れる色彩だろう、漆黒は。この異端の証しとも言える銀などよりも、よほどいい」


善も悪も全て丸ごと受容して、それでもなお己を保つ唯一の色彩。

そういったセフィロスはどこか寂しげに見えて、無言で横に並び立った。
やはり無言で見下ろしてくる彼に小さく笑い、返り血一つ浴びていない整った指に触れる。


「あんたは1人じゃないでしょう、私もザックスもいる。血の繋がった家族は確かにいないのかもしれないけど、私達でもその穴は埋められない?」


天涯孤独である彼の苦しみは、きっと一生かかっても理解できない。
けれど、共に思い出を積んでいくことはできるから。

この冷たく近寄りがたい「英雄」が、いつか他のソルジャーとも笑いあえればいいと思う。


   今のところはそれで満足してやろう」
「素直じゃないこと」


小さく笑いあう頭上には、二十三夜月が鈍く光っていた。











-----------------------------------

玉葉様からのリクエスト、「ソルジャーヒロイン、極秘任務で月夜の会話」でした。
会話よりも任務の方がメインになった感じが否めません…すいません…!!(ヒィ!)


セフィロスはCCでオフィシャルに友達ができているようですが(笑)個人的に一番仲がいいのがザックスというのがおいしいので、こういう設定で。捏造万歳!!
クールなヒロインってどういうの?とか思いながら書いたのですが、これでクールになってるでしょうか…。
むしろちょっと甘くなっちゃった感があるんですが…(ヘコー)

本当にセフィロスが狂わないで、そのうちクラウドとも仲良くなってくれればよかったのになあ。
人間味を感じさせる彼を書くのが大好きです。

玉葉様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!