私には、とても綺麗な友達がいる。
誰にも秘密だけれど、他の誰よりも大切な友達が。
会えるのが楽しみで、いつからか早く寝るようになった。




!!」




ほら、今日も会えた。


勢いよく抱きついてくるジーンに笑うと、両頬に軽いキスが降ってくる。
くすぐったくて身をよじると、ジーンもすぐに顔を離して目を細めた。


「よかった、今日も元気そうだね」
「3日ぶり?」
「うん。大丈夫?」
「うん!」


いつも力のことを心配してくれるジーンに笑ってうなずくと、もう一度軽くハグされる。


「あのね、。今度家族で旅行することになったんだ!」
「そうなの?いいなあ……こんな時期に旅行なんて、お父さん頑張ったんだね」


私のうちは家族旅行も滅多にしないから、ジーンがちょっとうらやましい。

ジーンのお父さんも色々と忙しそうだけれど、ジーンはいつも幸せそうだ。
家族の話をする時、ジーンはいつもすごく嬉しそうに笑うから。
よく家族の話題が出てくるのも、そうだと思う。


「まあ、研究のついでなんだけどね。久しぶりにみんなで出かけるから、両親がすごく楽しみにしてるんだ」
「研究かあ……大変だね」
「そうでもないよ、楽しいし!」


実験室で色々つけて、動いたりするんだよ。
ナルも一緒だから、退屈もしないしね。


ジーンの話には、よく弟君の話題が出てくる。
表情を見ているだけでこっちまで嬉しくなれるような、弟君が大好きなんだなとわかる顔。


「そういえば弟君、この間体調崩したみたいだったけど……大丈夫?」
「うん。僕が傍にいればよかったんだけどね……あの時はひやひやしたけど」


少し前に、弟君は倒れて病院に担ぎこまれたらしい。
その日のジーンはずいぶん固い表情で、心配したものだ。


「ほんとに、大丈夫なの?」


無理をしていないかと覗きこむと、その眼が少し曇っている。
やっぱり具合が悪いんじゃないのだろうかと眉を下げた私に、ジーンが苦笑して抱き寄せた。


「ナルは平気だよ、本当に。ただ、僕が傍にいれば、あんなことにはならなかったのに……って」


本当に悔しかったんだとわかる表情。
どうしてそんなにジーンが責任を感じるのかはわからなかったけれど、それだけ弟君を大切に思っているんだろう。


「ねえ、ジーン」


それでも、そんな顔をしてほしくなくて、背中を軽くさする。
そのまま肩に顎を預けると、甘えるように前体重も預けた。


「弟君、ジーンを責めた?」
「まさか!ナルはそんなことしないよ」
「だったらもう、いいんじゃないかな?これ以上ジーンがくよくよしてたら、かえって弟君が怒っちゃいそうだよ」


私の想像通りの人なら、多分散々ジーンを馬鹿にしたあげくに怒りそうだ。
僕をみくびるなって。


だからきっと、ジーンがそんなに自己嫌悪するのは、かえって失礼なんじゃないかと思う。


身体を全部預けてもびくともしないジーンはやっぱり男の子で、そんな男の子がしょんぼりしているのはちょっと可愛いんだけれど。
やっぱりジーンには、元気でいてほしい。


もう一度軽く力をこめて抱きつくと、ジーンの身体から力が抜けた。


「そう……だね、そんなに過保護にすることもないかな?」
「多分ね」
「そっか」


くすくすと小さな笑い声が聞こえて、もう大丈夫なんだと安心する。
それと同時に、ほんの少しだけの寂しさ。


「……やっぱり、兄弟っていいね」
「あれ?、一人っ子だっけ?」
「うん。別に嫌なわけじゃないけど、お母さん達以外で心配してくれる人がいるの、ちょっとうらやましい」


両親が心配してくれるだけで充分幸せだって、もちろん知っている。
でも、ジーンみたいに、本気で怒ったり心配してくれる兄弟がいてくれたらと、時々そう思うのだ。


今更弟や妹はいらないけれど、一人は少しだけ寂しい。
ないものねだりだと苦笑すると、何やら考えていたジーンにぐいと手を引かれた。


、あっちに座ろう!」


真っ白で曖昧な世界の中、ただ一つ存在を主張している大きな樹。
桜か梅か、はたまた意表を突いてケヤキとかだろうか。
花が咲いているところを見たことがないから、実際は何なのかよくわからない。

その樹の根元に並んで腰を下ろしたところで、ジーンはとても楽しそうにこちらを向いた。


、兄弟がほしいんだよね?」
「え?あ、うん」


どうしたんだろうと思いながらうなずくと、ジーンがますます笑顔になる。




「それじゃあ今日から、僕がのお兄さんになるよ!」
   え?」




思いがけない言葉に目を丸くすると、素早く頬にキスされた。


「ナルは弟らしくないんだよねえ。ちっとも頼ってくれないし、むしろ僕に冷たいし」


その点、ならばっちりだよ!
可愛いし素直だし甘えさせてくれるしと、もうべた褒めだ。


褒めてもらえるのは嬉しいけれど、これはちょっと恥ずかしい……。


「ジ……ジーンがお兄ちゃんかあ……」


あんまり『頼れるお兄ちゃん』という印象はないんだけれど……。
それでも、兄弟になってくれるというのは嬉しい。
期待いっぱいの目でじっと見つめてくるジーンに笑いかけて、その肩にもたれかかった。


「ありがと。じゃあ、これから私達、兄弟だね」
「もちろん!」


大喜びで抱き締められて、やっぱりお兄ちゃんって言うよりは弟だと苦笑する。


こんな風に感情表現がストレートになれたら、私も少し変わっていたんだろうか。
ちらりとそんな考えが浮かんだけれど、どう頑張ってもそんな自分が想像できなかったから、何回戻ってやり直しても私はあのままなんだろう。


私までストレートになってしまったら、本当に収拾がつかなくなるし。
ジーンとのやりとりは、やっぱりこういうテンポがちょうどいい。


こっそりと笑いを噛み殺しながら抱きついた身体は、夢の中でも現実と変わらず温かかった。











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150000hitはタスクさんでした!


時間軸ははっきりとは決めていませんが、だいたい中学生くらい。思春期!
この時ジーンはまだ、ヒロインのことを可愛いなあ可愛いなあ妹みたいだなあとしか思っていません。
完全に親愛のハグとキス。
それをさらりとできちゃうのが、ジーンクオリティ。
ヒロインはちょっと悶々としている時期なので、ジーンの明るさに救われてたりします。

この子、根本的にはナルに似ているのかもしれません。
そんな発見ができたことが嬉しい!


タスクさんに捧げます、ありがとうございました!