談話室の隅のソファーは、いつの頃からか彼らの専用席のようになっている。


「あ、リーマス。そのクッキー、こっちもらえる?」
「これ?こっち?」
「上にナッツが乗ってる方」


もぐもぐとマフィンを頬張っていたが、リーマスの食べているクッキーの皿を指した。


「まだ食べるのかよ」


隣のシリウスが呆れたように言うが、はどこ吹く風だ。


「その分頭と運動で消費するもの」


燃費がよすぎるのか本当に運動や頭を使いすぎているのか、やリーマスは糖分の摂取量の割にいいスタイルを保ちすぎている。


「リーマスがうらやましいわよ、まったく。そんなに砂糖漬けの生活送ってて、どうしてそんなに細いの?」
「そんなにお菓子食べすぎかなあ?普通のつもりなんだけど……」


苦笑するリーマスに笑って、は食べすぎよと繰り返す。


「今はよくても将来困るわよ、リーマス」
「リーマスなら平気だろ、こいつもう超人の域に入ってるし」


諭すに、シリウスが軽く肩をすくめる。

いくら大量のお菓子を食べても一向に糖尿病の兆しが見えないリーマスは、確かに超人と言えるかもしれない。
小さく吹き出したジェームズの足をぎりりと踏んで、リーマスが何食わぬ顔で首を傾げた。


「何のこと?」
「いたたたたたたたたっ!!」
「リーマス、ジェームズの悶え方が気持ち悪いからやめてあげて」


何気に酷いことを言う
そんな彼女の肩を引き寄せて、シリウスがくつくつと笑った。


「ジェームズもこりねえな」
「そういうあんたの方が、リーマスにやられてる回数は多いけどね」


さりげなくシリウスに突っ込んだは、その手をぺいとはたき落とす。


「おい」
「人前でべたべたしないでって言ってるでしょ」
「お前、それでも俺の彼女かよ」
「残念ながら、ね」


丁々発止のやり取りに、横で聞いていたジェームズとリーマスがこっそりと笑いをもらした。


「…んだよ」
「いや?相変わらず微笑ましいなあと思ってね」


文句を言うの頬が実はこっそり赤いのも、言い返すシリウスの顔が実はちょっぴりゆるんでいるのも、目ざとく鋭い友人達は見逃しはしない。


「いいよねえ、仲がよくて」
「ジェームズ、それ鏡を見て言いなさい」


散々ねばってようやく手に入れた彼女にべったりなのは、もはやホグワーツ中で知られている事実だ。
が指摘した途端にでれでれとしまりのない顔になったジェームズは、訊いてもいないのにリリーについてあれこれと話し始めた。




「いやあ、やっぱりもそう思うかい!?リリーは本当に照れ屋だからね、誰かが見てるとあんまりいちゃついてくれないんだよね!それでも僕と2人きりの時の可愛さって言ったら   




、クッキーついてるぞ」
「あ、ありがと」
「君達もナチュラルにいちゃついてるよね」


悦に入ったジェームズを放置して、3人は勝手に他の話を進める。

の口元についたクッキーのかけらを、何の迷いもなくシリウスが取る。
それに照れる様子もなくお礼を言うの様子に、リーマスが冷静に突っ込んだ。


「え?どこが?」


心底不思議そうに首を傾げる
全くもって無意識だったらしい。


このバカップルめがと、リーマスは大きくため息をついた。


「やれやれ、やってられないよ」
「リーマスも早く彼女ぐらい作れよ」
「作ろうと思ったからって、すぐできるようなものでもないでしょ」


なぜかそこはかとなく満足そうにそう言ったシリウスに、が呆れたように言い返す。
リーマスが特にそういう方面に関して消極的だと知っているから、あまり無理強いはしたくなかった。


「そりゃそうだけど   
「そういえば、シリウスもそうだったね。彼女にしたくても、なかなかなってもらえなくて」


いつの間にかリリー語りから抜け出したジェームズが思い出したように口を挟むと、シリウスの顔がたちまち真っ赤になった。


「うるせえ!!」
「本当のことじゃないか!何を恥ずかしがることがあるんだい?」


実は密かに結構頑張ったシリウス、当時を思い出して赤面。
熱意に押されて付き合い始めた感のある、同じ過程で苦笑。


「シリウスってプレイボーイな感じだったし、冷たそうで苦手だったんだけどね」
「な!!」
「だよねえ。女は所詮皆同じ、みたいな考え方だったもんね」


あれこれと言われ放題で、シリウスの顔がみるまにふてくされていく。
それに気づきながらも、友人達の昔話は止まらない。

やがて見るに見かねたが、ついとシリウスの袖を引っ張った。


?」
「行こう。今なら抜けても、2人とも気づかないよ」


シリウスの恥の記憶を次々と披露しあって笑い転げている仲間は思わず殴ってやりたいほどだが、確かに注意は完全にそれている。




「……そうだな」




しばらく迷った挙句に、シリウスもあっさりとの提案にうなずいた。
こっそりと談話室を抜けて中庭まで避難した2人は、ようやっと一息ついたように顔を見合わせて笑う。


「お疲れ、シリウス」
「本当にな」


それ以上は何も言わずに、お互い並んでベンチに座った。
ぼんやりと辺りを眺めていたが、不意に頬をほころばせる。


「……やっぱり、シリウスの隣って落ち着くなあ」
「そりゃ光栄だな」
「どうせあんたもそうなんでしょ」
「……ま、な」


みんなで騒ぐのも楽しいけれど、こうやって沈黙が苦ではない関係が心地いい。
もう一度小さく笑いあって、どちらからともなく肩を寄せあった。











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玉葉様からのリクエスト、「シリウス、悪戯仕掛人も一緒に、ほんのり甘く」でした。
甘く…甘くって、どうすれば甘いんだろう…!とか思いながら頭を抱えていたのは秘密です。秘密です(リピート)
あ、甘く、なった…かな…!!


シリウスは意地っ張りだけど、実は結構一生懸命なんじゃないかと思います。
照れが先にきてうまく言葉にできないけど、お前にベタボレだぜ!みたいな。
あれこれ苦悩しつつ、ジェームズとリーマスに引っ掻き回されつつ、助言もされてこのヒロインとくっついてればいい。
15かそこらの子供が、何でもそつなくこなしてる方が怖いですって(笑)

ぐちゃぐちゃ考えて喧嘩もいっぱいして、それでも仲良くいられるカップルってうらやましいなあ。
シリウスでそうなるには、多分彼女の方がよっぽどできた人間じゃないと駄目な気もしますがネ!

玉葉様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!