、と呼ぶ彼の声が好き。
優しくて温かくて、思わず顔がほころんでしまう。


「ねえ、セドリック」
「ん?」


柔らかい芝生の上に寝転がって、ベンチにきっちりと座っているセドリックを見上げる。
魔法薬学の分厚い本をめくる指は、長くて綺麗だ。


「今度ホグズミードに行ったら、行ってみたいところがあるの。いい?」
「いいよ。どこ?」
「ドッパーゲンの丘。お昼すぎになると、そこの花がきらきら光るんだって」
「へえ……」


が好きそうだね。


小さく笑ってそう言われ、子供みたいだと言われたようで口をとがらせる。


「すいませんねえ」
「違う違う、やっぱり綺麗なものが好きなんだと思ってさ」


可愛いねと笑ったセドリックがまぶしくて、ごまかすように横を向いた。
それを機嫌が悪くなったと思ったのか、セドリックの声が心配そうなものになる。


「ごめん、気に障った?」
「ううん」
「じゃあ   
「何でもないの!」


まずい、顔が熱い。
そんな優しい声を出さないで、恥ずかしくてどうしたらいいのかわからなくなっちゃう。

セドリックは優しいから、一緒にいるといつも私のことを考えてくれているのは知っている。
だけど優しすぎて、私は時々どうしたらいいのかわからなくなってしまうのだ。


大きな声を出してごまかすと、セドリックにも照れている事がばれたようだ。
くすくすと笑ったセドリックが、本から手を離す。



   何?」



少しむくれた返事になったのは、仕方がないだろう。
ちらと横目で睨んでみせれば、セドリックがまだ優しい笑顔をしていた。

しっかりとブックマーカーを挟んでから本を閉じたセドリックは、きちんとベンチに座り直す。
床に座っている私と視線を合わせてくれるけれど、やっぱりその高低差が気になるようだった。
地面に座ろうと立ち上がりかけた彼を、慌てて押しとどめる。


「いいよ、そんな!そのまま座ってて」
「でも」
「いいの。芝生がふかふかで暖かいし、私こうやって座るの、結構好きなの」


本当は、セドリックをこうして見上げるのが好きなんだけれど。
恥ずかしくて言えない乙女心、わかってほしい。


セドリックの足下に座って、本を読む彼を見て。
真剣な表情でページをめくるその様子を見るのが好きだ。
私を見てもらえなくても、それを見ているだけでどきどきできるの。


セドリックの横の肘かけにもたれかかって、精一杯の甘えを。
それにきちんと気づいてくれるセドリックが、やっぱり好き。
もう本を読んではいなくて、その代わりにまっすぐに注がれる視線がくすぐったい。


の髪、綺麗だよね。黒くてまっすぐで」
「え……セドリックの方が綺麗だよ。灰色っぽくて、光に反射すると透けて見えるの」
「そうかなあ?お爺さんみたいだけど」


自分の前髪をつまんで苦笑するセドリックは、その色があまり好きではないようだ。
今だって、こんなに綺麗に透けているのに。


「私は好きよ、セドリックの髪」


コンプレックスに思ってほしくなくて、だから力一杯懸命にそう伝える。
伝わらなくてもしれないけれど、それでも言わずにはいられかった。


立ち上がってセドリックの髪に触れると、さらさらと指の間をすり抜けていく。
その様子を見ていたら、不意に思い出した。


   私の友達の彼女さんもね、セドリックと一緒の色なんだって」
「……え?」
「髪の色。元は黒だったらしいんだけど、灰色になったんだって言ってた」


気がついたらいつの間にか本人も髪の色が変わっていた、一風変わったお友達。
偶然見つけた隠し部屋でだけ会える、多分違う世界の人。
いくら聞いても髪の色が変わった理由は教えてくれなかったけれど、あれ以来彼の雰囲気が何となく変わった気がする。


隠し部屋からさらに扉を開けたその向こう、窓の外に広がる景色はどこまでも青、青、青の空。
あんな景色、いくらホグワーツでもありえない。


異世界とつながっているなんて、ダンブルドアは知っているのかしらと心配になったこともあるけれど、あの人なら知っていて放置しているような気がした。


「ホグワーツの人?」
「ううん。彼自身は魔法使いだけど、彼女はマグルなんだって」
「そう……マグルでも髪の色が変わるなんてことがあるんだね」


本当に不思議そうに首を傾げたセドリックに微笑んで、さらにその髪を梳く。


自由気ままで子供みたいで、いつかどこかに飛んでいってしまいそうだったお友達。
そんな彼をしっかりとつかまえてくれた彼女さんは、一体どんな人なんだろう。


もしかしたら、セドリックと似ているのかしら。


「彼はね、セドリック」


考えるだけで笑顔になれる。


セドリックと共通点のある彼女さんに、いつか会ってみたい。
彼女ならきっと、自分の髪を厭いはしていないだろうから。




「その彼女さんの髪を、星の色だって言ったのよ」




セドリックの目が微かに見開かれた。
そんな彼の頭を引き寄せて、その髪に頬を寄せる。


「セドリックの髪もそうよ。お星様と一緒の色。光に透けてきらきらして、すごく綺麗」


だから、嫌いにならないで。
この色は、他の誰も出せない輝きだから。


顔を離して間近で視線を合わせて微笑むと、セドリックもとろけるような笑顔を返してくれた。
それだけでわかる、彼はもう自分の髪を嫌ってはいない。


「星の色……か」
「うん。私の髪より、ずっと綺麗」
の髪も、どこにいても変わらなくて綺麗だよ」


僕が星なら、は夜空だね。


他の誰かが言ったならクサすぎるセリフを、顔が熱くなりながらも甘受する。
セドリックの言葉なら、どんなに恥ずかしいものでも素直に受け止められた。


男女の違いこそあれ、私達と彼らは色の組み合わせが一緒だと気づいたのはそれからすぐ後。
夜空と星、同じ組み合わせ同士4人で会ってみたいと思った。




「ねえ、セドリック   




ひとまずは明後日あたりに、向こうの彼に打診してみよう。
了承がもらえたら日程を決めて、彼らの家で1日のんびり過ごして。


考えただけで胸が踊るような計画に、そっと顔をほころばせた。











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セラ様からのリクエスト、「セドリックで甘く」でした。
甘くしようとしたら、何故かちょっとシリアスに。
あ、あれ?おかしいぞ、私にしてはベッタベタな展開にしようと思ったのに…!!


セドリック先輩の髪の毛は灰色!というのは譲れないので、灰色=星屑のイメージで。
そこまで考えたところで、どうしてもハウルが頭から離れなくなって…(笑)
結局軽いクロスオーバーになってしまいました。
く、クロスオーバー、お嫌だったでしょうか…(ガタブル)
好評ならそのうちどこかで続きを書いてみようかなあ、とか考え中。

ハウルの設定は映画寄りですが、ハウルが元はこちらの世界の住人というところだけ原作設定です(ご都合主義)
ハウルの故郷は…ええと、アメリカだったかな?
それでも一応魔法使いの素質は持っていたので、マグル云々の知識はある感じで。

セラ様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!