あの騒動から一月あまり芳桂先輩の補佐に(不本意ながら)就いてみて、しみじみ実感した。


この先輩、ものすごく仕事ができる。


というか、この人がいなければ、生徒会は崩壊しているんじゃないだろうか。

脱走しまくる会長(それでも前よりは減ったらしい)(私が構われるけど!)、その度に落ち込んで泣きそうになる副会長、実は同じクラスだったおっちょこちょいの会計。
……うん、改めて思い返してみると、とんでもない生徒会だ。


「芳桂先輩、すごいです……!」
「あなたも充分すごいですよ。……まさか、三ヶ月で周坊より使えるようになるとは」


興奮しながら力説すると、何故か苦笑を返されたけれど……先輩は本当にすごい。
あの会長に仕事をさせ、泣きつく椿先輩をなだめ、周坊君のちょっとしたミスも見逃さずに指摘する。
もちろん、全部自分の仕事をこなしながら。

こんな人を尊敬せずしてどうする!
リディ、こっちにもまともな人がいたよ!

心の中で遠い親友に呼びかけつつ、自分にできる範囲のお手伝いをする。
書類の仕分けに、プリンターでの印刷。
走り書きの議事録を、できるだけ丁寧に清書して。
そんなことをせっせとしていると、ティーカップが目の前にことりと置かれた。


「……芳桂先輩?」


こてりと首を傾げて見上げると、先輩はその先で苦笑する。


「あの馬鹿会長は仕事をしなさすぎですが、あなたはしすぎです。少し休憩なさい」
「え、でも、この資料のホチ止め、あと5部   
「そんなもの、後でもいいでしょう。私も少し疲れました」


少し乱暴に近くの椅子を引き寄せて座った先輩は、確かに会長の分まで仕事をこなしているだけあって、とても疲れているようだ。
目頭を押さえてため息をつくその姿に、思わず鞄の中に入れていたチョコを差し出してしまった。


「疲れたときには、甘いものが一番です!」
   ありがとうございます」


一瞬拍子を抜かれたように瞬いて、それから綺麗に微笑んだ芳桂先輩に   
胸の奥でことりと音がした。