夏もいよいよ本番、暑い日が続いている。


「あーつーいー……」
「クーラー入れりゃいいじゃねえか」
「まだ!今入れたら、何か夏本番になった時に負けた気がする……!」


棒アイスをかじりながらだらりと伸びていたが、ザックスの呆れた指摘にぐぐっと拳を握る。

確かに、まだ気温の上がる余地はある。
しかし、こうまでして我慢するべきものだろうか。


「粘るなあ、も」
「まあねー。でも、セフィロスには悪いことしてるかも。髪結ってあげたけど、あの長さじゃ暑いよね……」


そういう彼女も、充分ロングの域に達しているのだが。


「なんかこう、イベントないかなあ。夏っぽいの!そうしたら気も紛れるのに……」


すっかり食べきってしまった棒アイスの残骸を歯でくわえながら、がぼんやりと呟いた。
それが騒動の発端になるとも知らずに。












ー!!」
「ああ、エアリス……どうしたの?」
「今度ね、花火大会があるんだって!ね、見に行かない?」
「行く!!」


先程までのぐったり具合はどこにいったのか、飛び起きたが元気よく答える。
そういえば、この夏の風物詩にもずいぶんご無沙汰だった。
こちらの花火はどんなものだろうと胸を踊らせるに、エアリスがにっこりと笑いかける。


「ウータイまで行くことになるけど、いいよね?」
「もちろん!シドが飛空挺出してくれるんでしょう?」
「うん」
「じゃあ、問題ないじゃない」


こともなげに言い放ったの一言が、決定打だった。




   というわけで、みんな、行くよー!!」




その声に答えるように、どこから出没したのやら、ソルジャーズが顔を出す。
唯一ザックスにヘッドロックされたクラウドだけが事態をつかめていないようだが、セフィロスとザックスは旅の準備まで万端だ。


「今日の夜、出るからね。も準備、お願いね?」
いやいやいやいや、それはちょっと急じゃないかっていうか、なんでいきなり?」
「だって、ウータイの花火大会、明日なんだもん」


早く言えよ!!と全力で突っ込みたいだったが、エアリスが怖すぎてやめておいた。
エアリスはいつだって最強なのだから。

そのままいつものバッグ1つを手に持ったは(彼女の頭の中に長距離の旅仕度などない)、夜にはシドの飛空挺の上の人となっていた。
寝る場所をしっかりと確保したが、久しぶりにしっかりときいた冷房に喜んでいると、ドアが軽くノックされる。


、今いい?」
「うん、大丈夫だよ」


ベッドから立ち上がりながらエアリスを迎え入れようとして   彼女の手にあるものに一瞬動きが止まった。
それをエアリスが嬉しそうに見ている。


「ユフィに、用意してもらったの。気に入った?」
   もちろん!また浴衣が着れるなんて!!」


大人びた彼女を引き立てるような、灰色の模様の中にぱっと散る橙色。
一枚の絵のようなそれは、遠目からならば白地に見えるだろう。


「やっぱり、浴衣、知ってたんだ?」
「私の故郷の伝統文化だからねえ。まさか、日中混合のウータイにあるとは……」
「ニッチュウコンゴウ?」
「ああ、うん、要するに他の国の文化と混じりあったようなところだってこと。ありがとう、エアリス!!」


飛びつくように彼女にお礼を言ったは、エアリスの真の目的をまだ知らない。




ウータイに着くと、町中がお祭り気分で気もそぞろだった。
なんでも、年に一度の花火大会なんだとか。

エアリスと2人できゃあきゃあ言いながら気付けをしあったが外に出ると、やはり和服に着替えた男性陣が出迎えた。


「おっ、エアリスもも綺麗じゃん!」
「ああ……綺麗だな、


口々に褒めるセフィロスとザックスの横で、クラウドは呆けたようにを見つめる。
いつもは流しっ放しにしていることが多い髪は、すっきりとまとまっていくつかの簪でとめられている。
そのうちの一つが動く度にしゃらりと鳴り、うなじの白さと細さを引き立てていた。


   クラウド?もうみんな、行っちゃったけど……」


に至近距離で覗きこまれて、ようやく我に返るクラウド。
彼女の言う通り、他のメンバーは夜の街に繰り出してしまっていて、もうしか残っていなかった。


「あ   
「んー、もうどこにいるのかもわからないね。セフィロスの銀髪、結構夜でも目立つのになあ」


伸び上がって先方を見ていただが、くるりと振り返って小さく笑う。


「しょうがないから2人で行こっか、クラウド」
「あ   ああ……」


いつもよりも数割増しで色っぽく見える彼女の手を取り、街をそぞろ歩く。
屋台をひやかし、時には食べ物を買って2人でつまみ。

そんなことをしている間に、どうやら花火のあがる時間になっていたようだ。
どん、と大きな音につられて顔を上げると、空いっぱいに広がる懐かしい光景。


「うわあ……」


目を大きく見開いて、輝かせて。
無邪気にも見えるその姿がまぶしくて、クラウドは思わず目を細めた。


「綺麗だねー……」
「……ああ、綺麗だ」


花火なんかよりも、あんたの方がずっとずっと。


口に出しては言えないけれど、心の底からそう答える。

きっと届かない内心での追伸は、もう少し自分に自信が持ててから彼女の目を見て言おう。
ひっそりと決心して、せめてもの勇気を振り絞って、彼女の手を握る力を強くした。











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道仮獅さんのリクエストで、「浴衣を着たヒロインがクラウドとデートをする話」でした。
まだ、クラウドだけが一方的に意識しているデート。


エアリス達が先に行ってしまったのは、もちろんエアリスの画策です。
文句たらたらの英雄を引っ張って、「ほら、行くよ!」なんて小声で言っちゃってたり。
ザックスもクラウドを応援しているので、一緒になって英雄を引っ張ってたり。
そんな、ささやかな舞台裏。

お持ち帰りは道仮獅さんのみとなります。
リクエストありがとうございました!