静かな部屋にインターホンが響いて、モニターを確認したは頬をほころばせた。
電子ロックを外し、軽い足取りでドアを開けた瞬間、視界いっぱいに広がったものに、思わず目を瞑る。




「……セフィロス?」
「今日は母の日だと、レノから聞いた。だから……」




恥ずかしそうにはにかんで差し出された赤い花束に、が今度こそ満面の笑みになった。


「ありがとう!こんなにいっぱいのカーネーション、なかなか見つからなかったでしょ?」
「ルーファウスが懇意にしている花屋があっただろう」
「あ、なるほど」


副社長御用達の店なら、一抱えもある花束でも用意できるだろう。
すんなり納得できたは、セフィロスを促して室内に戻る。


花瓶がないので、ひとまず応急処置でバケツにつけて。
それを見たセフィロスが、己の失態を恥じるように目を伏せた。


「すまない、
「え、どうして?お花をくれたの、すごく嬉しいよ?」
「だが、花瓶も買ってくるべきだった」


から見たら)しょんぼりとうなだれて呟いたセフィロスに目を瞬かせ、ついで小さく吹き出す。


「そんなこと気にしてたの?別に大丈夫なのに」


いい子いい子と背伸びをして銀の頭をなでながら、は柔らかく微笑んだ。


「プレゼントしてくれただけで、私は充分幸せなの。そんなに気にするなら、後で一緒に買いに行こう?」
「……ああ」


ようやく笑ったセフィロスにほっとしつつ、がキッチンに立つ。
今日くらいはいいだろうと、紅茶にマシュマロを落としこむ。

ほんのり甘い、子供用の紅茶。
たまには子供扱いさせてくれという、なりのささやかなサインだった。


「はい、どうぞ」


ソファーに座ったセフィロスにカップを渡すと、一口含んだその表情が怪訝そうになる。
マシュマロ入りだよと笑うと、セフィロスが気恥ずかしそうにカップをソーサーに戻した。


「……
「たまには子供になりなさい。ちっともお母さんらしいこと、させてくれないじゃない」


わざとむくれてみせると、今度は端正な顔が困惑したように揺れる。
甘えていいのかと、迷っているように見えるセフィロスに、ソファーの逆端に座ったが自分の膝を叩いた。


「ほら、おいでおいで」
「……?」
「膝枕。頑張りっぱなしで、ちょっと疲れたでしょ?」


たしたしと膝を叩きながら言うに、セフィロスの頬がわずかに紅潮する。
しばらくためらった後におずおずと近寄る息子(仮)を見て、はこれ以上ないほど嬉しそうに笑った。


「足、伸ばせる?」
「大丈夫だ」


4人掛けのソファーは、長身のセフィロスが横たわってもやや余る。
膝の上の銀髪を何度もなでながら、肌がけでも持って来るべきだろうかと、そんなことをちらりと考えた。


「寒くない?」
「いや」


がいればそれでいいと、無意識にすり寄るセフィロス。
一歩間違えれば極上の口説き文句だが、お互いそんなつもりは全くないので、ただのほのぼのとした会話として片付けられた。


、重くないか……?」
「平気平気。重くて嫌なら、元から膝枕なんてしてないよ」


ふと気付いて頭を上げようとするセフィロスを押しとどめ、は小さく笑う。


細かいところに気がつく、よくできたいい子だ。
人への思いやりを忘れないその心を、いつまでも持っていてほしい。


「一休みしたら、一緒にお買い物に行こうね」
「ああ」
「あのカーネーションにぴったりの花瓶を探して、ケーキも買って」
はチョコレートケーキが好きだったな」
「よく覚えてるね」


小さく笑いながら言い当てられて、が僅かに目を見開く。


セフィロスと共にケーキを食べたのは、そう何度もない。
しかも、本人ですら言ったかどうかを覚えていないのに。


「……母親の、好きなものくらい知っている」
   っ、いい子!」


目をそらしながら呟かれて、の中で何かのゲージが振り切れた。
セフィロスの頭をきゅうきゅうと抱き締めて、いい子いい子と繰り返す。

目を見開いて固まるセフィロスに満面の笑みを向けると、魔晄色の瞳がゆるりと細まった。
から見れば)嬉しそうに表情をゆるませた(傍目にはほぼ無表情の)セフィロスの額に、が軽いキスを落とす。


「覚えててくれて、本当にありがとう」


いっそ本当に、戸籍もいじって宝条から奪ってやろうかなどと思いつつ、はセフィロスの髪をなで続けた。
そのうちにセフィロスがとろとろとまどろみ始めたのに気づき、が幼子にするように、鍛えられた背中をリズムよく叩く。


「寝ちゃっていいよ。いっぱい休んで、また頑張ろうね」
「……もっと、と話したい……」
「いつでも話せるよ。いくらでも話せる」


のその言葉で、セフィロスも睡魔に打ち勝とうとする努力を放棄したようだった。
素直にうなずいて、と向き合うように寝返りをうつ。


「おやすみ……かあさん」
「お休み、セフィロス」












「なあ、、これ喜んでくれるかな?」
「そりゃあ喜ぶだろ!あいつ料理好きだし」


2人で買ったエプロンを胸に、クラウドが頬を赤らめた。

誕生日がわからない
どうしても彼女にプレゼントをしたくて、母の日などというミスマッチな日に乗ってしまった。

は母ではないが、喜んでもらえればいい。


そう思いながら、浮き立つ気持ちをおさえて部屋に戻り。




「……おいおいおいおいおい、ククククク」
「ザザザザックス、あれ……!!」





最後のワンシーンだけを運悪く見てしまい、その場でぎしりと固まったとか。
ちなみに、解凍役が2人に気づいただったことは、言うまでもない。











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母の日ネタだけど、微妙に子供の日も入っているお話(笑)
20万打リクエストで「ヒロインに甘えるひでお」とか、「ひでおとヒロインの家族もの」というリクエストが多かったので、母の日でサルベージしてみました。


いや、単に、膝枕がさせたかっただけの話です。はい。
それ以上でもそれ以下でもないんですが、ちょっと『晴れときどき血の雨』へ続く伏線みたいなものを張ってみたりしています。
クラウドの母の日(笑)プレゼント! 中身は白のレースつきエプロンです。 ひーらひらを贈るがいいよ。

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フリー夢ですので、ご自由にお持ち帰りください。
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