|
「ただいま 「どうした?クラウド」 「いや、が……」 帰宅の声に反応を返さないに、大量の食料を抱えたクラウドが首を傾げた。 同じく大量の食料を抱えたまま、ザックスはずんずんと奥に入っていく。 「おーい、ー?」 最後に追いついたセフィロスと共にリビングに向かったクラウドは、手の中の物を見つめながらぼんやりとしているの姿を見つけた。 「?」 セフィロスが肩を叩くと、夢から覚めたような表情で顔を上げる。 しばらく3人の顔を見渡した後、はああ、と呟いた。 「お帰り……セフィロス、クラウド、ザックス」 「ただいま。それ、何だ?」 いまだに半分意識がどこかに向かっている。 それはおそらく、彼女の手の中の物にも関係があるのだろう。 小さな石のついた指輪を覗きこんだクラウドに、が小さく目を細める。 「うん。これはね 百万世界の彼方、ひねくれた風の子が。 危なっかしくて見てられないよと毒づきながら、放り投げるように渡されたそれ。 歳月と共に傷や錆でずいぶんと古びてしまったけれど、その効力はしっかりと保たれたままだ。 「意地っ張りで、素直に仲間を心配だって言えない奴だったけど。でも、人一倍心根の優しい人だったよ」 元気にしているだろうか。 またひねくれて、大きな騒動でも起こしていないだろうか。 師匠の酷使にキレて、家出などしていないだろうか。 実は苦労性の仲間を思い出して、自然と笑みがこぼれる。 「私の相棒も、そりゃあひねくれてたけどね。あっちはつつけば怒る分、まだ可愛かったかな」 遠いどこかの記憶に思いをはせるは、3人がどうあがいても届くことのない思い出をたくさん抱えている。 寂しさを感じながらその様子を見ていたクラウドが、の足下に座りこんだ。 「クラウド?」 「……俺達、のこと、知らないのばっかだな」 ぽつりと呟かれたそれに、が小さく目を見開く。 彼女が何かを言う前に、ザックスもつまらなそうにうなずいた。 「って、自分の事はあんまし話してくれないもんな」 「……昔の話だし、聞いても多分わからないよ」 苦笑したは、それでもいいならとソファーに身体を預ける。 どうする、と問うように視線を向けられた3人の答えは、もちろん決まっていた。 即座に大きくうなずいた3人にため息をつき、本当におもしろくないよと眉を下げる。 それでも話し出したの隣と正面に、残る2人もそれぞれ腰かけた。 「ずいぶん昔の話になるけどね そうして話された彼女の『仲間』の物語は、正に戦場そのものだった。 日に日にやつれ、それでも微笑みを絶やさなかった軍主。 どうしようもなく見守る事しかできなかった仲間達。 夫を喪った妻に殴られ、発狂せんばかりに叫ぶ彼女を、それでも抱きしめ続けた。 死にたくないと、帰りたいと、うわごとのように最期まで呟き続けた敵兵。 それを静かに看取った青雷の戦士。 血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血。 赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫。 骨すら残らない焦土と化した戦場。 それは神羅にいた頃の彼らの日常と少しだけ重なって、けれどその戦争に参加したのは、ことごとくが何の訓練も受けていなかった市民なのだ。 戦場独特の臭いと雰囲気にかかるまでにずいぶんとかかった記憶のあるクラウドは、知らず息を飲んだ。 この話が、本当に1年もかからなかった戦争の話だというのか。 「……おもしろくも何ともないでしょ?」 苦笑して話を締めくくったに、セフィロスが目を伏せた。 「……すまない」 「どうして?」 深い悔恨のにじむその言葉に、は苦笑を優しいそれに変える。 謝る事など何もないと言うように。 「つらい事もいっぱいあったけど、それよりも大事な仲間をたくさん手に入れたの。あの戦争がなければ、きっと私は無二の仲間を見つけられなかった」 不老の呪いをその身に受ける、真の紋章の継承者は、巡り合える確率が異常に低い。 永劫の時を独りで過ごす彼らは、出会える事自体が奇跡なのだ。 「だから、後悔なんかしてないんだよ」 恥じる事など何もないのだと、そう胸を張る彼女が、ひどくまぶしい。 しなやかに生きるその姿は、こんな経験の積み重ねだったのだろう。 「大事な思い出なんだな」 「うん」 嬉しそうにうなずいたに、ザックスも目を細めてうなずく。 そか、ともう一度うなずいて、ザックスは大きく伸びをした。 「腹減ったなー、おやつにするか!、パンケーキ作ってくれねえ?」 「はいはい」 よっこらせと立ち上がったが、大切そうに指輪を中指にはめる。 「それで料理して平気なのか?」 「さあ?あんた達丈夫だから、お腹は壊さないでしょ」 「何だよそれ!!」 ひでぇ!と笑いながら悲鳴を上げたザックスにひらりと手を振って、はキッチンに姿を消した。 いつもと変わらない軽快な料理の音が響いて、できあがったパンケーキもいつもと同じおいしさ。 豪快にそれらを頬張りながら、クラウドの視線は彼女の指にくぎ付けだ。 誰からもらった物なのか、どうしてそんなに大切にしているのか、何も聞いていない。 聞いていない分、余計に気になる。 「 とうとう我慢できずに声をあげたクラウドに、セフィロスがちらりと視線をよこした。 そうだ、訊けと目が言っていたのは、クラウドの気のせいではないだろう。 「それ、何かのお守りなのか?」 特別な誰かからの贈り物なのかとは訊けなかった男心、察してほしい。 訊かれたはぱちりと瞬いて、悪戯っぽく笑った。 そして一言。 「痴漢撃退」 「…………は?」 「痴漢とか変態とかに言い寄られた時に、ちょっくらかまいたちを喰らわせられるの」 「…………へえ…………」 にこにこしながら答えられて、脱力しつつそれだけを呟く。 よかった、好きな男からの云々とか言われなくて。 それだけが救いだと、大きくため息をついた。 ----------------------------------- リオナさんからのリクエスト、「過去のトリップ先を思い出しているヒロインに寂しさを覚えるソルジャーズ」でした。 ルックはあまりにもヒロインに言い寄るシーナが目障りなため、自分の紋章の力をこれでもかと詰め込んで指輪にしたりしています。 遠慮いらないから、思いっきりぶっ放しなよ、とのお言葉(笑) 魔力が空っぽになったら、またつめてあげるから、とか。 ヒロインに好きな男がいるんじゃないかと不安になったクラウド。 大事な母親に悪い虫が付いたんじゃなかろうかと殺気だったセフィロス。 そんな2人を見ながら、めんどくせえことにならないといいなあとのんびり思うザックス。 ザックスだけは、俺も何かエアリスにやろうかなあとか思ってそうです。 お持ち帰りはリオナさんのみとさせていただきます。 リクエストありがとうございました! |