「明けましておめでとう」
「おめでとう」


きっちりと挨拶をしあって、4人同時に頭を上げる。
いつも通りの格好だが、何故かの横には杵と臼があった。
初めて見る不可思議な物体に興味津々なザックスに、は内心にんまりとほくそ笑む。


「さて」


ぺちりと臼に手を乗せて、輝かんばかりの表情で一言。




「餅つき、しよっか」




何が何やらよくわかっていないが、この2つで何をするのか、ザックスはすでに興味津々だ。
そんな彼に臼を持たせて庭へと誘導し、同じく杵を担いだセフィロスに笑いかける。


「もち米炊いておいたから、これでぺったんぺったんついてお餅作ってね」
「餅?」
「うん。焼くとふくれておいしいよ」


餅自体を知らないソルジャーズには全くわからない説明だが、とりあえず食べ物を作るらしいというのはわかったようだ。
簡単な説明の後にやる気満々のザックスをセフィロスに任せ、はクラウドを連れて家の中へと引き返す。


?俺はやらなくてい   
「クラウドはこっちを手伝ってもらうから、大丈夫だよ」


数日前からこっそりと仕込んでおいた松前漬けとなますをかき混ぜつつ、が準備万端のキッチンを示した。
目を瞬かせるクラウドの肩を叩き、やっぱりお正月はこれがなくてはとが腕まくりをする。


「お雑煮とおしるこ、ちゃっちゃと作るよ!」


にんじんと大根は千切りに。
三つ葉は適度な大きさに。
鳥の胸肉ともも肉は小さく切って、丁寧にあくを取って。


「里芋とかじゃがいもを入れる家も結構あるみたいなんだけどねー。私はどろっとするのが嫌だから、いつもこれなの」
「……これ、の家の習慣なのか?」
「というより、私が元々いた国の習慣だね。お正月はおせちを食べて、年神様をお迎えするの」


おせちはさすがに作る気力がないから、お雑煮だけでもとなったわけだ。


「おしるこは絶対こしあん!つぶあんは皮がざらざらして嫌!」
「……あの食感がいいって人もいるんじゃないか?」
「私は駄目なんだ。でも、ザックスはつぶあん派っぽいよね」


この日のために丁寧に漉しておいた餡をお湯に溶きながら、がひょいと肩をすくめる。
もう一つの鍋に鳥肉を投下しつつ、はふと嫌な予感にかられて庭を見やった。

常識外れのソルジャーズ、もしやお餅がものすごいことになってはいるまいか。


「……ごめんクラウド、鍋の番頼んだ。あんこが焦げないように、気をつけて見ててね。もうちょっとしたらにんじんも入れちゃって」
「わかった」


彼女がいない間のおさんどさんをしていただけあって、クラウドも慣れた様子でうなずく。
そんな彼に感謝しながら庭に出て。


「はいはいはいはいストップー!!もう充分!それ以上やったらお餅がまずくなる!」


この短時間でできたとは思えないほど、つやつやと綺麗な光沢を放つ餅を見て、全力で杵を振り下ろしているセフィロスを慌てて止めた。
餅はつきすぎてもよくない。

目にも止まらぬ速さでつかれた餅は、(目の錯覚だとわかっていても)心なしか疲労困憊しているように見えた。
……餅つきは手早くと言うけれど、これは早すぎだろう。


「……どうもありがとう、セフィロス、ザックス。後はそれを中に運んでくれるかな?小さくちぎって、お雑煮に使ったり焼いたりするから」
「おう!これ、結構楽しいのな」


にこにこと笑顔でうなずいたザックスは、意外にもこの力仕事が気に入ったようだ。
お湯の入ったボウルをが持ち上げると、ザックスも臼を持ち上げた。
かなり重いはずの臼も、ソルジャーにかかれば餅入りでも1人で軽々運べる。


「はーいクラウド、一旦火を止めてこっちを手伝ってー」


ソルジャーズ総出で餅をちぎっている間に、が手早く雑煮を仕上げて行く。
あっという間に終わったそれをソルジャーズの前に置けば、全員目を輝かせた。


「みんな、お疲れ様。私の国のお正月料理だよ」


松前漬けに大根とにんじんのなます、そして黒豆の煮物。
本当に小物しか作れなかったが、としてはお雑煮が作れたことでもう大満足だ。


「うわっ、この餅ってのすげえな!こんなに伸びんのか」
「そうそう。喉につまらせないようにねー。毎年お餅が原因で死亡する人が結構いるから」


大はしゃぎで餅を食べるザックスにさらりととんでもないことを言いつつ、も幸せそうにお雑煮(あんこ)を食べる。


「うまいな、これ」
「でっしょー?これを食べないと、何だかお正月って感じがしないんだよね」
の故郷の味か……」


感慨深げに呟いたセフィロスが、なますを食べて小さく眉を寄せた。
どうやら、あまり好みではないようだ。

柚子の皮を削ったそれは、確かにあまり多く食べるものではないのだが……。


「セフィロス、無理に食べなくてもいいよ。形だけでも食べれば、おせちとしてはもう充分だから」
「だが   
「残ったのはザックスが食べるから。ね?」
「え!?俺!?」


いきなり話を振られたザックスがかまぼこを取り落としそうになるが、そこはソルジャー。
何とか持ち堪えて、とりあえず口の中に放りこむ。
そんな危機一髪なザックスに、がきょとりと小首を傾げた。


「え?だってザックス、それ好きでしょ?一番先になくなってたし」
「あー……そりゃそうだけどよ、残飯処理班みたいな……」
「いいじゃない、家族のものを食べるだけなんだから」


さらりと言われた言葉に誰もが一瞬動きを止める。


彼女にとって、自分達はもう家族なのだ。
帰るべき場所。
それがここだと、たとえここがその一つにすぎなかったとしても、そう言ってくれたことが嬉しい。


   だな!」
「あ、じゃあ、俺のこれもよろしく」
「えええクラウド、松前漬け嫌い?」
「いや、昆布のどろっとした感じが……」
「こりこりしておいしいのになあ……」


たまには和風のお正月もいいもので。
簡単すぎるおせち料理をつまみながら、セフィロスはそっと目を細めた。











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というわけで、歳末アンケートで2位だったMCのお正月番外編でした!
きっとあの世界にはおせち料理なんて浸透していないと思います。
お餅ももちろん、浸透してないはず!


ソルジャーズはヒロインがまたどこかに行ってしまうんじゃないかと心のどこかで怯えてるので、「家族」というくくりに入れてもらったことがとても嬉しい。
ヒロインも「家族」というものをとても大切にしているので、無意識にでも彼女がそう言えてとても嬉しいです(私が)
大切なものが少しずつ増えていくって、とても幸せなことですね。


1月7日までお持ち帰り自由とさせて頂きます。
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