ティファとの買い出しも、2日目になれば量の多さに驚くこともなくなる。
この細腕のどこに、こんなに大量の荷物を持つ力があったのかとは思うが。


「あら、が来てくれたから、2回に分けて買いに行く必要がなくなっただけよ」


あっさりと言ってティファは笑うが、正直の力でもかなり重い。
確かに鍛えてはいるが、自身は怪力でも何でもないのだ。


「ティファ、毎日こんな量を買ってたの?」
「ええ。おかげさまで店も結構繁盛してるし、バレット達の食事も用意しなきゃいけないしね」
「大変だね……」


主婦の苦労がしのばれる言葉に、がしみじみと呟く。


彼女自身もソルジャーズのおさんどさんをしていたことがあったが、買い出しはほとんど男性陣に行ってもらっていた。
ある意味とても楽だったと、今更ながらに思う。


「そうでもないわよ、慣れると楽しいし   クラウド!」


前方に金色を見つけて、ティファが弾んだ声をあげた。
呼ばれたクラウドもこちらに気づいたようで、軽く手を上げて合図をすると近寄ってくる。


、ティファ。買い出しか?」
「ええ。クラウドは?」
「ただの散歩。   、重いだろ。持つよ」


ティファよりも多めの荷物を持っていたに、クラウドが手を差し出した。
断る間もなく半分以上を持っていかれてしまったが、仕方なくティファからまた少し受け取る。
重いものを全てクラウドが引き受けたので、2人ともさほど大変ではなくなった。


「ありがと、クラウド」
「いや、別に」
「……ずいぶん力持ちになったんだね」


小さくかぶりを振ったクラウドに、がまぶしそうに呟く。
それを聞いたティファが、そういえばと2人を見た。


「そういえば、2人はどうやって師弟になったの?」


5年前に13歳だったは、それ以前からだとしたら、明らかに幼すぎる。
いくらなんでも、まさか10歳前後のソルジャーなどいないだろう。


首を傾げながら2人を見ると、クラウドが懐かしそうに目を細めながらの方を向いた。


「強かったよな、。あのサー・マズラディと互角にやりあってたっけ」
「……ああ、そういえばあの時だっけ。クラウドが教えてくれって来たの」


クッキーに夢中になってたよね、と言われ、クラウドの耳が赤くなる。
そんな彼にくすくすと笑いながら、がしみじみと呟いた。


「本当に、できた弟子だったよ。あんなにつらい鍛錬にもついてきてくれたし」
「あれは本当にきつかった……」
「まあ、鬼畜だった自覚はあるよ」


昔話に花を咲かせながら、2人はさりげなくティファの問いをはぐらかしていく。

答えようがない問いに、答えることはできないのだ。

ひっそりと目で合図をしあいながら、が謝るように苦笑した。
気にするなと視線を送り、クラウドも苦笑する。


には悪いが、共犯者のような感覚が心地よかった。
   2人だけの秘密のようなそれに、くらくらする。


そんなクラウドの表情に何を思ったのか、ティファが不意に身を乗り出した。


「ねえ、クラウド」
「ん?」
「覚えてる?昔、給水塔で約束したこと」




   約束してね。
   約束だ。




昔はよく知っていたはずのクラウドが、別人のような表情でに笑いかけるのが、ひどく不安だった。


もしかして、クラウドはが好きなんだろうか。
自分の知らない間に何があったのか知りたくても、多分誰も教えてはくれないだろう。


だからせめて、昔のクラウドは自分と思い出を共有しているのだと確かめたかった。


「ああ……覚えてる」
「そういえば、助けに行くって約束したって言ってたね。その相手、もしかしてティファ?」
「な   、覚えてたのか!?」


何気なくうなずいたクラウドだったが、が口を挟むと一気に真っ赤になる。
ひどく慌てたように彼女を見下ろしたクラウドは、まさか覚えているとは思わなかった当時の何気ない一言を死ぬほど後悔していた。
あれはまるで、その相手のことが好きだと言っているようなものではないか。


いや、当時は確かにティファのことが好きだったし、村の中でも一番の人気を誇っていた彼女と交わした約束は特別なものだった。
けれど、よりにもよってにばっちり覚えられているなんて……!


そんなクラウドの内心も知らず、ティファは嬉しそうに微笑んだ。


「あれ、本当に嬉しかったの。だってあの時、約束を守ってくれたんだもの!」
「ああ……5年前か」
「ソルジャー1stになってるし、すごく強いし!絶対忘れられない」


燃えさかる炎の中で、自分達を誘導してくれたクラウド達。
神羅を裏切ってまでそうしてくれた。


嬉しそうに笑うティファに曖昧な表情を向け、クラウドはちらりとをうかがう。

結局はあの惨事を止められなかった自分達を、はどう思っているのだろうか。
不安をちらつらせた目のクラウドに気づき、は苦く笑う。


   あの時も言ったけどね、クラウド。私は助かった人がいただけで充分なの。神羅のやり方はよくわかってるよ   守ってくれて、ありがとう」


遠慮呵責なく重火器を投入して、全てを焼き払う神羅。
圧倒的な兵力を持って、赤子まで殲滅する神羅。

そんな攻撃の中で、非戦闘員をかばいながら、一体どれだけのことができるだろう。


彼らだからできたのだと、はクラウドにうなずく。
それにほっと息を吐いて、クラウドはティファに視線を戻す。


何やら複雑な表情をしていたティファは、それからも昔の話題を持ち出してはクラウドに話しかけていた。












「もう、微笑ましいったらありゃしないよね。ティファったら、何かふくらみそうな話題がないかって、本当に一生懸命なの」
「おー!もてるじゃん、クラウド!」
「でっしょー!?さすがクラウド!でもクラウド、何でか私に話を振るんだよねえ」


ティファともっとお話してあげればいいのにと首を傾げたに、ザックスが生温い笑みを浮かべる。


「ああ、そりゃなあ……」
「微妙に焦ったみたいな顔もしてたし、何なんだろうね?」


そりゃあ焦ってたんじゃなくて、ティファとかいう嬢ちゃんの勢いにたじろいでたんだろうよ。


心の中だけで呟いて、いい加減鈍い友人に苦笑したくなる。
惚れた女と幼馴染みに挟まれて弱り切っているクラウドの姿がありありと想像できて、ザックスはひっそりと同情した。


「ま、クラウドはヘタレだからな!」
「えええ、ヘタレはザックスでしょ!」
「何だよそれー!女に押されてヒィ!って言うなんて、ヘタレだろ?」


ふざけながら言い合いをしていたら、帰ってきたクラウドに真っ赤な顔で怒られたのは……まあ、お約束ということで。











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柑人さんのリクエストで、「初恋のディファと今好きなヒロインの間に挟まれてしどろもどろなクラウド」の話。
しどろもどろというよりは、何だか単にティファが可哀相なだけの話になった気が…。
リクエストの最後は、ヒロインがそのことをおもしろおかしくザックスに話してるところだけ(笑)


クラウドは絶対にティファの気持ちに気づくような勘の鋭い子じゃないので、ティファの押せ押せ攻撃もさらりとかわしてしまう派です。
ヒロインも恋愛感情とかをすっ飛ばしたところで生きているので、基本的にそういう感情には死ぬほど疎い子。
…さて、2人をどうやってくっつけようかな!(一応その気はあるらしい)


お持ち帰りは柑人さんのみとさせていただきます。
リクエストありがとうございました!