ドアを鳴らすチャイムの音に、セフィロスは思わず首を傾げた。

今日は休暇のはず、何か火急の用事でもあっただろうか。
それとも、またザックスあたりが乱入してきたのだろうか。

そろそろの部屋にでも出向こうかと思っていた矢先の来訪者に、ちょっぴりこっそり機嫌が悪くなるセフィロス。
誰だお前はと気配を探って、しかしその不機嫌さは一気に吹き飛んだ。


   
「セフィロス、ピクニックに行こう!」


大きなバスケットをぶら下げて、満面の笑顔でが誘う。
ちょうど休暇が重なったからと言う彼女に、セフィロスももちろんうなずいた。

無機質な印象を与えるミッドガル周辺を抜けて、チョコボファームの近くまで。


「セフィロス、前に乗せてくれる?」
「ああ、もちろん」


彼女がチョコボを乗りこなせないのはもう当たり前で、セフィロスも当然のように手を差し伸べる。
身軽な動きでチョコボに飛び乗ったは、大事そうにバスケットを抱えて笑った。


「行こう!」
「ああ」


彼女が酔わないように、セフィロスは手綱を慎重に操る。
その胸にもたれかかって、は楽しそうに目を細めた。


「ああ   いい風が吹いてる。大地も活気にあふれてるね」
「そうか?」
「うん。精霊達が元気に動き回ってるよ」


セフィロスには見えないその光景は、しかしを喜ばせるには充分だったようだ。
以前、この世界の精霊はあまり活気がないと嘆いていたから、きっといいことなのだろう。

宙に手を伸ばして何かと戯れるような仕草を見せるを見ながら、セフィロスもそっと笑みをこぼした。
身を乗り出しすぎて落ちないよう、彼女の腰を支えることも忘れずに。


「平原まででいいか?」
「そうだねー。あそこらへんなら、敵よけのマテリアつけてれば、まず平気だろうし」


カームを過ぎたあたりから、景色は一気に開けていく。
一面に光が差し、伸びやかにしなる草々。


「このあたりにしよっか。日当たりもいいし、景色もいいし」


遠くにチョコボファームを臨みながら、がうきうきとブルーシートを広げた。
こういう時は靴を脱ぐものだと教育されたセフィロスは、その間にブーツの紐を解く。
アルコール消毒用の布を渡されて手を拭くと、満面の笑顔でがバスケットの中身を広げた。


「セフィロスの好きなもの、いっぱい作ってきたんだよ。いつもザックスとかクラウドとか、みんなの好みに合わせてくれるでしょう?」


言われて覗きこむと、いつか控え目に主張したことのある料理ばかり。
思わず瞬くセフィロスの頭をなでて、は優しく目を細めた。


「我慢ばっかり覚えなくていいの。たまにはわがまま言って、みんなをびっくりさせるぐらいじゃなきゃ」
「だが、俺が止めなければ誰が止める?」
「私が止めるよ。だからセフィロスは、たまにはわがまま言ってもいいの!   というわけで、これは日頃我慢してるセフィロスへのご褒美」


豚肉のアスパラ巻きに、鳥足のチューリップ。
炊き込みごはんはグリーンピースで、おにぎりの中身は銀しゃりと焼きたらこ。

その他にもセフィロスの好物ばかり詰めこまれたバスケットは、の気持ちが一杯にこめられたものだった。


「これを、全部……?」
「セフィロスのものだよ。これくらいは食べられるよね?」


おそるおそる尋ねたセフィロスに、が小首を傾げる。
もしや、気合いを入れて作りすぎたかと考えていると、大きくて繊細な手がそっとフォークに伸びた。




「……嬉しい」




噛みしめるように呟いたセフィロスは、料理に手を伸ばす。
おいしそうに咀嚼するその姿にほっとしつつ、もおにぎりに手を伸ばした。


「いい天気だねー」
「そうだな」
「ね、今までピクニックとかしたことあった?」
「いや……なかった、な」
「そっか。じゃあ、今日が初体験だね。どう?こういうの」
   と一緒なら、悪くない」


しばらく考えた後にはにかむように答えたセフィロスに、は思わず抱きつきたくなった。


もう大人になろうかという姿なのに、この可愛さは何なのか。
反則だ。
思いっきり反則だ。



必死になでくりまわしたい衝動を抑えつつ、はにっこりと笑う。


「じゃあ、今度はみんなで来ようね。きっともっと、いろんなことがあって楽しいよ」
「……そうだな」


目を細めて答えたセフィロスは、きっとここにはいない仲間達を思っているのだろう。

ザックスが馬鹿をやって、ザックスが騒いで、それにクラウドが巻きこまれて。
あまりにも目に余るようだったら、セフィロスがさりげなくストップをかけて。
そんな、絵に描いたような平和な光景。




   いつかさ、いつかでいいんだけどさ」




ぽつりと呟いたに、セフィロスが首を傾げる。


「神羅とか、ソルジャーとか、そういうの全部なくなってさ、平和な世界になったらいいね」


争いのない、平和な世界に。
ずっとずっと先にそれが叶うのを彼女は知っているけれど、それでもそこにセフィロスもいてほしい。


「……そうなったら、今度はみんなで来ればいい。そうだろう?」
   そうだね」


穏やかに微笑んだセフィロスに泣きたくなるのをこらえてうなずき、はその広い胸にもたれる。
すっぽりとおさまるそこは温かくて、はそっと目を閉じた。











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紅さんのリクエストで、「セフィロスと一緒にお出かけ」するお話。
たまにはピクニックもいいよね!ということで、外に出てもらいました。


この2人には、なんとなく穏やかな風に吹かれて、気持ちよく過ごしてほしいです。
親子水入らずじゃありませんが、いつも仲間達と一緒なので…。
未来を知るヒロインと、少しずつ変わっていくセフィロス。
こんな関係が、いつまでも続きますように。

お持ち帰りは紅さんのみとなります。
リクエストありがとうございました!