ルクレツィアの祠の周りは、モンスターも少なくどことなく神聖な雰囲気に包まれている。
精霊達の気配も抑えられ気味だと眉を顰めるは、ふと夜闇に紛れる銀色を見つけた。

パーティーから一人離れた場所に佇むその背中はどこか切羽詰まった気配をたたえていて、思わず静かに歩み寄る。


「どうしたの?」
   ああ、


ゆっくりと振り向いたセフィロスは、やはりどこか張り詰めたような表情をしていた。
それを見て何かを感じたは、そっと彼の手を取る。
ひんやりと冷たいそれは、どれほど長い間セフィロスがそこにいたのかを示していた。


「あっちに行こう」


が示したのは、パーティーからさらに離れる森の奥。
それを確かめて、セフィロスもこくりとうなずいた。

手を引かれるままに歩くこと数分、ようやく立ち止まったそこは小さく開けた野原。

どちらからともなく座りこんだ二人は、しばらくの間沈黙を保っていた。
やがて、セフィロスがそれを破る。




   俺は、ここにいていい存在なんだろうか」




ぽつりともらされた呟きに、が勢いよく彼を仰ぎ見る。
セフィロスの顔はやはり固いままで、彼が本心からそう言っていることがよくわかった。


「何を   言ってるの?」


柄にもなく語尾が震えたにそっと目を伏せ、セフィロスはそのまま遠くを見る。


「物心ついた時から、俺には両親という存在がいなかった。ただ毎日のように訓練だけが繰り返されて、時々宝条の研究室に呼び出されてデータを取られて   その繰り返しだった」


風がそよぐ。
セフィロスの長い銀糸が、の黒髪が、それに揺れる。


「俺は、両親というものを知らずに成長した。ソルジャーであれと、ただそれだけを言われて育った」


幼いセフィロスに、周囲のその言葉は絶対だった。
両親の不在に疑問を抱くこともなく、情緒を発達させることもなく、ただ人形のように。
彼の中に、「両親」という存在の定義はなかったのだ。


「だが   あのルクレツィアは、俺を自分の子だと言う。ジェノバプロジェクトのために生んだと言う。実験道具として生まれた俺に   存在価値はあるのか?」
「ある」


たまらなくなって、は即答した。

彼女がもっとも恐れていたこと、それはセフィロスが自我をなくしてジェノバにすがろうとすることだったから。
そして何より   彼はもう、彼女の息子だったから。


「ねえ、セフィロス。ずっとずっと前に、私言ったよね」


どこにいても、何をしていても、君が私の息子であることに変わりはない。
私は君を愛しているよ。


それは彼女が消える前、別れの時が近いと知った時に言われた言葉。
それを繰り返して、はセフィロスを抱き締める。


「私は、セフィロスに会えてよかった。セフィロスがいないこの世界なんて、想像できない。お願いだから、自分をそんな風に言わないで」
   
「セフィロス。出自が何であれ、今まで君が経験してきたことは、全部意味がなかった?   私にも、出会わなかった方がよかった?」
「そんなはずはない!」


不安げに尋ねたの最後の言葉に、セフィロスが弾かれたように振り向いた。
瞳はまだ揺れているものの、そこには確固たる意思が見える。

痛い程の力でを抱きしめ、セフィロスは絞り出すような声をあげた。


は俺に、家族をくれた。に会って初めて、俺は家族の温かさを知った。のいない世界なんて   !」
「じゃあ、もうあんな悲しいこと言わないで」


痛さなどおくびにも出さず、も優しく抱きしめ返す。
セフィロスが落ち着くように、何度も背中をさすりながら。


「私は、セフィロスが生まれてきてくれて、すごく嬉しい。こうやって触れ合えることも、言葉を交わすことも、セフィロスが生まれてくれなければできなかったでしょう?」


君が生まれてきたことに、言祝ぎを。
出会えたことに、感謝を。
触れ合えることに、幸せを。


祈りをこめて、は微笑む。


「大好きだよ、セフィロス。私の可愛い、世界一自慢の息子」
   俺も、を愛してる。俺に存在意義をくれた、親愛なる母」


静かに会話を交わした後も、2人はしばらくそのままの体勢で抱き合っていた。
互いのぬくもりがどうしようもなく愛しくて、離れ難くて。


「星、綺麗だね」
「メテオがなければ、もっと綺麗なんだろうな」
「うん。だから、セフィロス   一緒に、行こう」
   ああ」


それは、彼らの間だけで交わされた、小さくてもとても大きな約束。











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夜凪まりこさんのリクエストで、「MCのセフィロスでシリアス→甘」というお話でした。
甘さが8割方足りない気がものすごくしますが、一応最後だけ甘く。


このペアでシリアス→甘ってどんな場面だ?と悩んだあげく、一足先にルクレツィアのところまでタイムトリップしてもらいました(笑)
きっと本編ではそこまで深くセフィロスの心情を描かないだろうし、けれど彼は確かに悩むだろうし。
そこをヒロインの愛で!カバー!!
甘いといっても親子愛の甘さですが、こんなんでよろしいでしょうか…(ガクブル)

お持ち帰りは夜凪まりこさんのみとなります。
リクエストありがとうございました!