鍛錬場の片隅で、とても鍛錬とは思えないような激しい応酬が繰り広げられる。



「そこっ!何やってるの、気を緩めるなって言ってるでしょ!?」
「……っ!すいません、師匠!」


刃を潰した剣で手首を強打され、クラウドの顔が苦痛に歪む。
それでも声を張り上げて、厳しいに返事をした。


「スピードを落とさないように!私達みたいな体格の人間は、パワーだけで押し切ろうとしても勝てないんだから」
「はい!」


大きな声で返事をするクラウドだが、実はもう3時間も鍛錬を続けている。
これだけ動けていれば十分だろう。


肩で大きく息をしているクラウドに対し、は僅かに息を切らせているだけ。
そんな2人の迫力に、一般兵も遠巻きに見るだけだ。


「きなさい、クラウド」
「は   、い」


先程から防御しかできていないクラウドに眉根を寄せ、が厳しく言い放つ。
素人の状態から育てられたとは違い、クラウドはまがりなりにも訓練を受けていた兵士だ。
それをわかっているからこそも厳しくするし、クラウドもめったに弱音を吐かない。


「……いつ見ても、あいつらの訓練って半端ないよな」
「無理だろ、あんな訓練」


遠巻きに見ていた兵士達が、その様子を見て背筋を寒くさせる。
そんなことになっているとも露知らず、は散々クラウドをしごいた後で不満そうにうなずいた。


「じゃあ、今日はここまで。仕上げに腕たて100回ね」
「はい」


素直にうなずいたクラウドの手から剣を受けとり、も黙々と素振りを始める。
クラウドがようよう100回を終わらせるまでに、自身も素振り150本を終わらせた。


「じゃ、帰ろっか」
「はい」


クラウドの剣よりもやや重いそれをごとりと置いて、がぺしゃりとつぶれている弟子に笑いかける。
途端に元気になるのだから、クラウドも現金なものだ。




「なあ、さっきやってた技、どうやるんだ?」
「あれはまだクラウドには早いよ。私もできるようになるまでに(全部合わせて)4年かかったからね」




素人でない分クラウドにアドバンテージがあるが、それでも4年は大きい。
残念そうにするクラウドの頭をくしゃりとなでて、ちょうど到着したシャワールームに入ろうとうながした。


「よく洗うんだよ」
「わかってるよ」


子供扱いするなと怒る仕草がまた可愛いと、この少年ははたして気づいているのだろうか。
微笑ましい気分になりながらが髪を洗っていると、更衣室に置いてあった携帯が2回鳴った。


「やっば、クラウドもう終わっちゃったか」


慌てて身体を洗って出たを、髪を拭ききれていないクラウドが出迎える。
髪から水をしたたらせたままのを見て、クラウドは慌てて壁から身を起こした。


「ごめん、急がせた?」
「いいよ。私もぼーっとしてたし」
「でも、髪   

「私はあんたの方が心配。ちゃんと拭かないと風邪ひくでしょ?」
「そんなの、も一緒じゃないか」


むくれるクラウドが可愛いと思うのも、また師匠心。

が正しいのかどうかはわからないが、少なくともは内心でかいぐりかいぐりしたいと思うほど可愛いと思っているようだ。
タオルを簡単に頭に巻きつけたは、クラウドのタオルを取って丁寧に吹いていく。


「自分でできるってば!」
「拭けてないくせに何言うの。いいからおとなしくしてなさい」


こんな恥ずかしい格好、誰かに見られたらどうするんだよ!


そんな彼の心の叫びなど、に通じるはずもない。
暴れようとするクラウドをうまくおさえてあらかた拭き終えると、は実に満足そうにうなずいた。


「さて、帰ろうか」
「……うん……」


自分の髪もタオル越しに叩いて水気を飛ばしつつ、今日の鍛練の反省点を振り返る。


「スタミナはそれなりについてきたから、後は必死さかなあ。ハングリー精神っていうか、何がなんでものし上がってやるっていう意気込みがないような」
「そうかなあ」
「うん。それに、誰かを傷つけることをためらいすぎ。私達は所詮人殺しのための人材なんだから、命を奪う時にためらっちゃいけないんだよ」


ためらえば剣が鈍る。
剣が鈍ればそれだけ、対象を長く苦しめることになる。


「どうせ同じく奪うなら、せめて苦しまないようにするのが情けだよ」


どんな存在も命を持っている。
モンスターだって、元は静かに暮らしていただけかもしれない。


「野生の動物はね、狩りをする時にためらいはないんだよ」


ただ一つの例外、それは子育ての時。
子供に狩りを教えるその時だけは、なぶるようにして子供自身に方法を教えていく。


「だけど私は、あんたにそういう風にして戦いを教えようとは思わない」


だって、私達は人間だから。
なぶってなぶってあげくに殺すのは、快楽犯だけで十分だ。


「スラムのモンスターとか、後はシミュレーションルームで慣れるしかないけど。命を奪うその行為を、軽々しく考えないで」
「……わかった」


神妙な顔でこっくりとうなずいたクラウドの髪をくしゃりとなでて、は続いてフォームの注意に移った。


「防御から攻撃に移る時に、脇が開きがちだよ。その分初動が遅くなってるから、今度から意識して脇を締めるようにしてみて」
「うん」

「それから、足の運びもまだぎこちない。後ろに下がる時には地形に注意しろとは言ったけど、敵に対する注意を大幅に裂いてどうするの」
「……すいません……」


まったくもってその通りのクラウドは、返す言葉もなくうなだれる。


「戦闘が始まったら、あらかじめある程度の範囲の地形は把握しておくこと。実際に攻防が始まってからじゃ、なかなかそんなことはできないからね」
「はい」


素直な返事、まっすぐな瞳。
自分の悪い点を受け入れて直そうとするその姿勢は、とても好ましくて大切なものだ。


可愛い弟子の将来を思って、は小さく口元をゆるめた。




   龍に化けるか、虎に化けるか。




どちらにしても楽しいことになりそうだと、成長を目の当たりにした時のザックスの慌てた表情を想像が目に浮かんだ。











-----------------------------------

瞬様からのリクエスト、「MCヒロインでクラウド、日常の訓練風景」でした。
あんまり訓練しているところがないけれど、一応訓練風景。


一生懸命強くなろうとしているクラウドって可愛いなあと、自分でもしみじみ感じちゃいました!
本編ではジェノバの影響でクールキャラになっちゃってますけど、やっぱりちょっといっぱいいっぱいな感じのクラウドも可愛い。
ザックスとかセフィロスとかにも教えてもらってる時期ですが、彼にとっての「師匠」はやっぱりヒロインだけ。
だから一層、恥ずかしいところは見せられないと思っています。

多分この後一緒に部屋に戻って、お夕飯は何を作ろうと相談をして。
そしたらセフィロスとザックスが(いつもの通りに)乱入してくると思われます。
何だかんだでいつも4人一緒にいるといいよ。
仲良しなソルジャーズが大好きです!!

瞬様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!