ぎしりとザックスのソファーが音を立てて、重いぞと悲鳴をあげる。
それに顔をしかめたが、丸めた書類で彼の頭をぱこんと叩いた。


「こら!無駄に体重かけないの」
「いいじゃねえかよ、別に平気だろ?」
「平気じゃない!あんたが乱暴に扱うから、最近スプリングがおかしいの!」


がうと噛みついたに首をすくめ、ザックスもそろそろと座り直す。


「……なあクラウド、何だかぴりぴりしてねえか?」
「最近、ずっとこうなんだ……」
「これはあれか、女に必須のせい   




「それ以上クラウドに妙なこと吹きこんだら、細切れにしてチャーハンの具にしてやるわよ」




くひひと笑って言いかけたザックスの喉元に剣先をつきつけ、が地の底を這うような声を出した。

かなり目がマジな彼女の表情を見て、セフィロスがザックスに目配せをする。
これ以上刺激するなとはっきりきっぱり合図されて、ザックスも目線だけで勢いよくうなずいた。


本気で怒ったは、半端なく恐ろしい。
逆らえる者など皆無なのだ。


「で、でもさ、今度新しいの買うんだろ!?俺も一緒に行っていい?」


話を逸らそうと慌てたクラウドが、上目遣いにを見上げた。

男のプライドとしては使いたくない手だが、他の2人が無言で訴えてくるのだから仕方がない。
思った通り、弟子に甘いはころりとほだされた。


「いいよ、クラウドも同じもの使うんだもんね」


あっさりとうなずいたが、いそいそと部屋の隅からカタログの束を持ってくる。


「一応、いくつかはピックアップしてあるんだけど……どれがいいと思う?」


どさりと重そうな音をたてて置かれたそれは、結構な重量だ。


「ず……ずいぶん集めたな、カタログ……」
「元々見るのが好きだからねえ。いつの間にか、候補が半端なくなっちゃった」


気になってるのは付箋貼ってあるからと言われても、その付箋自体もなかなかの量だ。
焦りながら目を通すクラウドの横で、見るともなしにカタログをめくっていたセフィロスが、不意に顔を上げた。


「……俺も、一緒に行っていいか?」
「セフィロスも?」


予想外の申し出に、はきょとりと目を瞬かせる。
そんな彼女に便乗し、ついでにとばかりにザックスも手をあげた。


「あ、俺も俺も!!」


何だか楽しそうだとはしゃいで言うザックスに、もとうとう苦笑する。


「……ザックス、あんたちょっとは負担しなさいよ」
「……ちょびっとじゃ、駄目?」
「もう乱暴に扱わないなら?」


にっこりと凄みのある笑顔で脅しをかけたにかくかくとうなずき、ザックスが誓う!誓う!!と必死に手をあげた。
どうせ居着く時間も長いこの部屋のこと、多少の出費があっても構わない。


満足そうにうなずいたは、どっこらせと腰を上げた。


「それじゃ、みんなで一緒に行こうか」












ミッドガルでも有数の大規模インテリアショップに、クラウドは圧倒されて辺りを見回した。
そんな彼にころころと笑うと、が小さく手招きをする。


「こっちだよ」
「あ、うん」
、最初はどこを見るんだ?」


フロアガイドをちらりと見たセフィロスに促され、彼女も一緒に覗きこんで一角を示した。


「ここ。値が張るけど、その分シンプルでいいものを揃えてるみたい」
にカジュアルは似合わねえもんな」


ポップな色彩に囲まれたなど想像もできないと笑うザックスに、全員が小さく笑う。


可愛らしいものを好むだが、身の回りのものはシンプルなものが多かった。
彼女曰く、「ずっとピンクだのキャラクターだのに囲まれたら、かえって疲れちゃわない?」らしいが、それを聞いたクラウドもさもありなんと納得したものだ。


が少女趣味ではなくてよかった。
それはもう、真剣に。


ファンシーな雑貨に囲まれて生活する自分達を想像した瞬間、身の毛がよだった。


「どう?これ」
「座り心地は?」
「あ、勝手に座っていいと思うよ。ここはサンプル展示も兼ねてるから」


試さないとわからないじゃないと手を振ったの言葉を聞いて、ザックスとクラウドが顔を輝かせる。
我先にとソファーに腰かける2人を見ながら、はぐるりと辺りを見回した。


「ここって、いろんなメーカが集まってるからいいよね。いちいち歩き回らなくていいし」
「見比べるのも簡単だしな」


デパートのようで使いやすいと、セフィロスもに同意する。
そんな彼に笑いかけ、は真剣にソファーを見比べているクラウド達に声をかけた。


「ほーらー、見るのはこのメーカーだけじゃないんだからね?次行くよ、次」












フロア全体を巡るようにして候補を見ていった4人は、結局最初に見た黒いソファーを買うことにした。




「う、うおおおお……!俺、こんなに負担すんのかよ……!!」
「何言ってんの、セフィロスが7割近く負担してくれてるんだからね?あんたは1割」
「こ、これで1割……!」




値段を知らなかったらしいザックスが、ぺらりと見せられた請求書に頭を抱えてのたうち回る。
腐るほど貯金があるからと、気前よく金を出したセフィロスとは大違いだ。
以前その通帳を見ていて、申し訳なく思いながらもちゃっかり受け取るだが。


「ザックス、どれくら   
「クラウドは知らなくていいんだよ?私が好きで買ったんだから。横になってお昼寝できるくらい、大きくて座り心地のいいソファーだね!」


ザックスの手元を覗きこもうとしたクラウドを引っ張って阻止し、が無邪気(に見えるよう)に笑う。
ついついそれに丸め込まれて、クラウドも嬉しそうにうなずいた。


、即日宅配もできるが   
「あ、じゃあそれで。引き取りサービスはある?」
「訊いてみる」


どうやって支払おうかと苦悩しているザックスを華麗にスルーして、とセフィロスはさくさくと話を進めていく。
その横で新しいソファーを心待ちにしているクラウドの、その輝かんばかりの表情をじとりと見て、ザックスは重苦しいため息をついた。


「……やべえ、しばらくデートできねえじゃん……」


に負けないほど完璧な笑顔で怒る少女を思い浮かべて、また頭を抱えるのだった。











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玉葉様からのリクエスト、「MCヒロインで、ソルジャーズとほのぼの日常の話」でした。
ヒロインが子守歌でも歌うところにしようかなあと思ったのですが、「眠れない子守歌」とちょっとかぶるので断念。
休憩つながりでソファー話にしました!


ヒロインもセフィロスも、必要最低限のものにしかお金を使わないので、たっぷり余っている派。
ザックスはあれこれこまごましたものを買ってしまうので、貯蓄がない派。
クラウドは薄給なので、元から除外(笑)
セフィロスは本当は、全額負担してもいいみたいなことを言っていたのですが、例によってヒロインに止められています。
お金は大事に使わなきゃ駄目でしょ!みたいな。
躾はきちんと!が、うちのヒロインのモットーです。

クラウドはいつまでも純真でいてほしいんですが、うちのフェアリーはいつまで純真でいてくれるのかしら…。
ザックスが余計なことを吹き込みそうで心配(笑)
そんな時こそ、長男セフィロスの出番のはずなんですが!
うちのヒデオはちょっと天然なので、放置しそうな気がババンバン。

玉葉様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!