「お疲れ様!」


笑顔で出迎えたに、誰もが小さく微笑みかける。


閉会式も終わった今、ひとまず誰もライバルではなくなった。
ようやくみんなで遊べるねと、が無邪気に笑う。


「ああ。とりあえず、俺の別荘に行くか」
「跡部の?跡部の家の、じゃなくて?」
「はっ、俺様が別荘の一つも持ってないなんて、それこそ冗談だろう?」


訝しげに眉を顰めた不二を鼻で笑い、跡部が自信たっぷりに言った。
普通の中学生は別荘なぞ持っていないのだが……どうやら跡部には通用しないようだ。


「所詮軽井沢だが、まあましだろう。来週の3連休で行こうぜ」
「ちょ」
「うん!」


リョーマが止めようとするよりも早く、が大喜びでうなずいてしまう。
そうなれば誰も反対などできるはずもなく、そこここで顔を見合わせて苦笑しあった。


「しっかし……もうしばらくは試合もないと思うと、何や変な感じやなあ」
「ですね。この3年間、我々の交流はすべてテニス絡みでしたから」


顔を合わせるのは、練習試合か大会か。

それ以外で関わる事など、ほとんどなかった3年間。
という接点があったにもかかわらず、彼らの関係はあまりにも希薄だった。


「みんなで遊ぶの、初めてだね」


嬉しそうに笑うの言葉が、だから余計に胸に刺さる。


自分達は一体、彼女の何を知っていたのだろうか。
彼女の何を見ていたのだろうか。
支えられるだけ支えられて、自分達からは一体何を返せたというのか。


打ちのめされそうになった彼らを浮上させたのは、しかしやはりだった。


「枕投げとか、花火とか、やりたいことがいっぱいあるの!やっぱり、人数が多い方が盛り上がるよね」


合宿の定番ともいえるそれらを挙げて、やってもいいかとが小首を傾げる。
他愛ない願いを拒否するわけもなく、誰もが笑顔でうなずいた。

彼らもまだまだ中学生、身体を動かすのはただでさえ楽しい時期だ。


「よーし、マムシ!ぎったぎたにのしてやるぜ!!」
「おもしれえ……できるもんならやってみな」
「おいおい、2人とも!やめろって」
「ふむ、楽しそうですね……」
「うちじゃ枕投げなんてできませんでしたしね!真田副部長が厳しすぎて」
「何だと!?」
ヒィ!冗談っス!!」


あちらこちらでてんで勝手に喋り出す彼らを、が目を細めて見つめていた。


おおっぴらにできなかった交遊関係を、もう隠さなくてもいい。
隠していたのは自分の判断だけれど、きっとそれはそれで間違っていなかったのだと思う。
けれど、それが不意に重荷になっていたことも確かで。


高校に入ればまた、ライバル同士として切磋琢磨しあうのだろう。
もしかしたら、リョーマはアメリカへ行ってしまうのかもしれない。


   けれどせめて、今だけは。


   ?どうしたの、ぼーっとして」
「……ああ、うん、何でもないよ」


いつの間にかぼんやりとしていたらしい。
眉を寄せたリョーマに覗きこまれて、はゆるりとかぶりを振った。
それでもまだ訝しそうなリョーマは、彼女の腕をぐいと引いて顔を寄せる。


「あのさ、。お祝い、してもらってないんだけど」
「お祝い……?帰ったら、おじさまもおばさまも菜々子さんも待ってるじゃない」


家族揃って、ささやかなパーティーの準備をしているはず。
もちろんその前に、青学陣はかわむら寿司での打ち上げが待っているが。

首を傾げたに焦れたような息を吐き、リョーマは細い首に腕を回してさらに引き寄せた。




「あ」
「え?」
「……あー!!」




運悪く目撃してしまった一部が、思わず声をあげる。


当のはいい加減に慣れてきたらしく、おとなしくリョーマの頬にキスをしていた。
初めて人前でさせられたのって、確か地区大会だっけ……などと遠い目をする程度だ。


「リョーマ……いきなり引っ張られるの、やっぱり怖いよ」
「ごめん」
それだけ!?なあ、それだけなのかよ!?」


思わず力一杯突っ込んだ向日に、はどこか諦めたような顔で笑う。


「慣れちゃったよ。それに、もうしばらくはないでしょ?」
「……っ、ずるい……!!」
「駄目だからね、がキスしていいのは俺だけなんだから」
「ちょっとリョーマ、それどういう意味?」
「じゃあ、は誰彼構わずキスするってこと?」
「う   それ、は、ちょっと……」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ部員達を見ながら、部長3人は並んで苦笑しあう。


「やれやれ……去年の今頃は、俺達がこうやってふざけあうなんて、お互い想像もしなかったね?」
「まったくだ。何が起こるかわからないな」
「まあ……いい変化じゃねえか?が来たってのは」


騒ぎの中央にいるのは、いつも同じ少女。
彼女自身は騒ぎたてるようなタイプではないが、自然と周りには彼らが集まっていた。


どの部長もそのことを思い出し、小さく目を細める。


「最初は何だこいつとも思ったが   なかなかおもしろい奴だな、は」


跡部の一言が、全てを表していた。


「どうする?そろそろを助けに行くかい?」
「いや……もう、大会も全て終わったんだ。もう少し羽目を外させても構わないだろう」
「お前にしては珍しいな、手塚」
「そうか?」


穏やかに見守る先には、弾けんばかりの彼女の笑顔。
何の陰りもないそれを、もう少し見ていたかった。











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刹那さんのリクエスト、「全国大会終了後の少しシリアスな雰囲気」のお話。
実は原作を途中から読んでなかったり、キャラの人数が多すぎて消化不良になってたりしてます。
そしてやっぱり、リョーマがいいとこどり(笑)


全国が終わった後、みんなはどうするんだろうと思いながら書いてました。
や、あの、原作まだ読んでないので…(言い訳)
リョーマはせめて中学卒業するまで、日本で勉強しててくれればいいなあ。
将来のことを考えると、中学は出ておいた方がいいと思います(妙に現実的)


お持ち帰りは刹那さんのみとさせていただきます。
リクエストありがとうございました!