珍しく日吉からメールで呼び出され、どうしたのだろうと向かったを待っていたのは、こんな一言だった。


「あの……申し訳ないのですが、母の誕生日プレゼントを選ぶのに付き合っていただきたくて……」
「おば様の?」
「毎年、どうにも選びにくくて。さんなら同じ女性ですし、俺よりもいいアドバイスをいただけるんじゃないかと   


恥ずかしそうに眉をしかめながらぼそぼそとしゃべる日吉に、もちろんは笑顔でうなずく。


「女の人のプレゼント、選ぶの好きなんだ!色んな好みがあるから、そこはヒヨ君にカバーしてもらわないといけないけど……」
「どうもありがとうございます」


元々女友達にプレゼントをするのが大好きだったが、この申し出を断るわけがない。
喜々として歩き出した彼女の後を追いながら、日吉はこっそりと頬をゆるめた。

理由はともあれ、二人きりで出かけることができたのだ。
いつも何かしら邪魔が入っている身としては、喜ばしいことこの上ない。


「ヒヨ君、おば様はどんな物が好き?」
「そうですね……特にこれと言って特徴はない気がします。年相応の格好に、年相応のインテリアを好みますから」


母は全体的に落ち着いたインテリアを選ぶが、自宅の家業を考えたらそれも特徴とは言えないだろう。
正直に答えると、は困ったように首を傾げた。


「うーん……そうだなあ、おば様の雰囲気はどんな感じ?落ち着いてるとか、優しそうとか、存在感があるとか」
「……優しくて、厳しい人……でしょうか」


礼儀作法に関しては、とても厳しく言われた。
それ以外では基本的に、自分達のやりたいようにやらせてくれる。


普段の様子を思い出しながらそう言うと、はしばらく考えた後に数度うなずいた。
何やら小さく呟きながら、指を折って確認している。


「無難だけど……化粧品類が一番いいかなあ」


化粧品といっても、洗顔石鹸やハンドクリームなどの美顔用品に近い。
LUSHのように香りの強いものでなければ、まず万人受けするだろう。

そうと決まればと、は一番近いターミナル駅へと日吉を連れて行った。




同日、同時刻。
うまいもん食いに行こうぜーと連れ立って出かけていた岳人と慈郎は、見覚えのあるツーショットに思わず声をあげた。


「日吉と……!?」
「ひよし、ちゃん独り占めずるいー」


死ぬほど驚いている岳人とは対照的に、慈郎は拗ねたような口調ながらどこか嬉しそうだ。


はみんなのもの。
それでも、可愛い後輩が彼女に恋をしているのを、慈郎はこっそり応援していたから。
彼女が一人のものになるのは寂しいけれど、それでも笑っていてくれれば充分だ。


それでも慌てて電話をかけ始める(相手は間違いなく忍足だ)岳人を止めないあたり、慈郎もまだまだを譲る気はなさそうだった。












「ちょ、がく、どうなっとんねん!!」
しー!しー!!達に聞こえるっての!俺にもわかんねえよ!!」


混乱しきった忍足が岳人をがっくんがっくんと揺さぶる横で、芋づる式に呼び出されたレギュラー陣がわいのわいのと騒いでいる。




「とうとう日吉がさんと……!」
「何か母親くせえぞ、お前」
「なっ、酷いですよ宍戸さん!」
「俺様に黙ってデートしようなんざ、いい度胸じゃねえか。なあ、樺地?」
「……ウス」


「っていうか、なんでみんないるのさー」




つまらなさそうに口を尖らせた慈郎に、忍足が血走った目で詰め寄った。


「阿呆、お前!の一大事やぞ!?」
「単に日吉とおでかけしてるだけじゃん」
「そのままが日吉にコロリとだまされたらどうすんねん!」


被害妄想もはなはだしいと、横で岳人が呆れている。
そんなことにすら気づけないあたり、忍足は本当にパニック状態のようだ。


「なあ、跡部……俺、時々侑士とのコンビ、ものっすげえ解散したくなるんだけど……」
「却下だ。試合中は何の問題もねえだろ」
「普段のアレが嫌なんだよ……!!」


コンビ解散の危機にももちろん気づかず、忍足はへばりつくようにして達の様子を伺っている。


「あ!あ!!あかん、あかん!そんなにひっついたらあかん!」


「ねえ、跡部。とりあえず忍足、沈めていいかな?」
「やめとけ。荷物になるだけだ」
「それもそうだね」


爽やかな笑顔で話す滝と跡部に、鳳が青い顔で宍戸にすがりつく。
それをうざったそうに振り払いながら、宍戸も日吉との動向が気になるようだ。

彼もどちらかといえば日吉の恋を応援している側なので、できれば今日のデートもどきを平穏に終わらせたかった。
ここで忍足がでしゃばったりなどしたら、目もあてられない。


   あ、たい焼き食べてる」
「半分ずつ食べてるねえ、やるう」


   だから、そういうあおるようなコメントはやめてやれ!!


慈郎と滝に内心力一杯突っ込みつつ、宍戸は上を向いてアンニュイなため息をついた。
頑張れ日吉、俺にはもうどうにもできねえ。




離れたところのそんなすったもんだにも気づかず、2人は順調にプレゼント選びを進めていた。


「うーん……色々見たけど、やっぱりあのお店の美肌石鹸が一番よさそうだね。トワレもありだとは思うけど、やっぱり本人の微妙な好みはわからないから……」
「それでは、さっきのところに戻りましょうか」


のんびりと会話を交わしつつ、選んだプレゼントをラッピングしてもらう。
中学生のお財布にも優しいお値段で、ちょうどいいだろう。

会ったことのない日吉の母は、けれどきっと過剰なプレゼントは好まないだろう。
日吉を見ていれば自然とわかるその人柄に、はそっと笑みをこぼした。












「あ、あの、さん。この間、日吉と2人でいるのを見たんですけど   
「ああ、ヒヨ君のおば様の誕生日プレゼントを選んでたんだ。ちょた君も、気づいたなら来てくれればよかったのに」
「いえ、俺はちょっと別に用があって」
「そっかあ……ちょた君ならヒヨ君のおば様知ってるだろうから、参考になったのになあ」


残念そうに苦笑するに曖昧に笑いつつ、あのデートの真相を探ってこいという特命を(忍足から)受けた(と書いて押しつけられたと読む)鳳は、何てことのない真相に胸をなで下ろしたとか。











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「日吉とのデートを氷帝レギュラー陣が尾行するお話」でした。
思ったよりも忍足が変態すぎて、書いてて自分で引きました(笑)
siesta書くの自体が久しぶりだったのでノリについていけるか心配でしたが、彼らはどうやら健在だったようです。


いっぱいいっぱいな日吉も書きたかったのですが、氷帝コントを書いていたら収まりきらなくなったので省略しました!(こら)
この裏できっと、日吉は青春してると思います。
端から見たら普通の表情ですが。

お持ち帰りはリクエストしてくださった方のみとなります。
リクエストありがとうございました!