曲がって、曲がって、また折れて。
危険なカーブの積み重ね。
けれどその度に、高みに登って。






九十九折り






今日も部活で腹減った。


『っしたぁ!』


さんが差し出してくれたタオルを受け取って水道に向かい、頭から水をかぶる。

「あー、腹減ったな、越前。マック寄ってかねえ?」
がいるんで」

隣にいた越前に誘いをかけたら、にべもなく断られた。
ああ、そうか。さんがいるんじゃまっすぐ帰るしかねえよな。

「そうだったな、悪りぃ」
「私は別にいいけど?」
妙に納得してたらいきなり背後から声がかかって、思わず変な声が出た。

「ぅおっ!?   あ、さん」
「やほ。リョーマ、タオル忘れてる」

受け取らないで行っちゃうんだもんと笑って、さんは越前の水びたしの頭をタオルで拭く。

「駄目でしょ、風邪引いちゃう」

大人しく髪を拭かれている越前の表情は、どこか嬉しげだ。


……こいつ、わざと忘れたんじゃねぇのか?


「で、桃ちゃん。私はいいから、2人でマック寄ってきなよ」
「駄目っスよ。さん、1人にしとくと危ないっスから」

この間の行方不明、忘れちゃいけねえなあ、いけねえよ。

「平気なのに……」
「どこが?」
「見ればわかるでしょ?」
「全然」

不満そうにさんが言うが、あっさりと越前にやりこめられてがっくりしてる。

「リョーマの意地悪……。じゃあいいよ、私もマック行くから」
「え?でも俺達、すっげえ食いますよ?」
「うん。横でポテトつまみながら見てる」

いや、見てる方が胸やけおこすって、よく言われるんスけど……。

「それならいいよ。   ね、桃先輩」
「あ?お、おう」

いいのかよ、越前……。どうなっても俺は知らねえからな!




俺は自転車を押して、越前とさんと並んで歩く。
途中で爆音をたてながら走っていった車を目で追って、さんがぽつりと呟いた。

「走り屋……FCか、かっこいいなあ」
「走り屋?」

何だそりゃ。

「あれ、桃ちゃんも知らないか。夜中に峠で車の速さを競ってる人達。ヒルクライムよりダウンヒルの方が素敵なんだ、個人的にはね」
「何で?」

ヒルクライム……ダウンヒル……ああ、山登りと下山か!!
俺がカタカナを解読している間に、越前が首を傾げて訊いた。

「だって、ダウンヒルは放っておいてもどんどん加速するんだよ?それをあえてギリギリ限界までアクセル踏み込んで、鮮やかなドリフト!連続ヘアピンやポイントで技量が問われる、一瞬の勝負!」
「……見たことあるんスか?」

妙に力説するその姿は、まるで見たことがあるかのようだ。

「ううん。でも、話してくれた人がいたんだ」


誰だよ、この人にこんなこと吹き込んだ奴!
これじゃ観に行きたいなんて言い出すだろ!!


ただでさえ向こう見ずで怖いもの知らずなんだから、マジで言いかねない。

「あー……赤城行きたい」
「やめてください」

何で赤城なんだよ、しかも。てか、どこにあんだよそれ。

「行きたいー!」
「危ないっスよ、そんな遅くに」
「何考えてんのさ」

言い返した俺に、越前も乗ってくる。
そうだよな、それが普通の反応だよな、越前。

「けち……。でも、2人はヒルクライムの方が好きそうだよね」
「へ?」

何でそんなことになるんだ?

「だって、2人とも上を目指すのが好きでしょ?」


……ああ。


「なるほどね」

そう意味かと、自然と口の端がつり上がる。
言ってくれんじゃねえの、さん。





「2人とも食べすぎ」
「だって、腹減ってんスよ」
「お夕飯食べられなくならないの?」

俺たちの食べる量を見て、さんはやっぱり呆れたように声を上げた。

「余裕っス」
「呆れた……」

どういう胃袋してんのよ、と呟くのが聞こえて、俺は小さく苦笑する。
だから胸やけしないかって思ったんだけどな……仕方ねえか。