ほんまは可愛えなあ。自分では気づいてないとこが、また可愛えわ。
ころころ笑うし気も利くし、格好と行動のギャップも大きいわな。ノリもええ。
跡部も珍しく気にいっとるみたいやし、ほんま貴重な人材や。
どっかのテニスやっとる奴のとこに居候しとるらしいけど、自分はできんて笑っとった。

けど……笑いすぎなんよなあ……。






坂道






珍しくが一人で俺んちに遊びに来た。
初めてや、こんなこと。

「どないしたん?」
「暇。遊んで☆」
にっこり笑って立っとるを、とりあえず家にあげる。

「久しぶりだね、侑士の家に来るの」
「せやな。ジローの誕生日以来やもんなあ」
懐かしそうに部屋を見回しとったは、ソファーにごろんと横になった。
……腹見えとんでー。

俺やからええけど、他の男に見せたら即行襲われるで自分。

「疲れたー!昨日はずっと買い物に行っててさ、超可愛い服を見つけたの。欲しいなーって思ったんだけど、2万もしててね、買えるわけないでしょ?でも菜々子さんがそれをすっごく気に入ってね、『買ってあげる!』とかってぽーんと買ってくれたの!何かもう申し訳なくてさ……」

……」

「ああでも侑士んちのソファーってふかふかで気持ちいい!この間来た時から、絶対1回やってみたかったんだよねえ」

、風邪引くで」
「平気。風邪引いたって、半日寝れば治るもん。   多分」
「多分かい!」

人の話聞かんと思っとったら、何の根拠もないことを平気で言いよる。
「うーん、それが微妙なんだよね。昔はどんな熱でも半日で完全復活してたんだけど、2年ぐらい前に40度近い熱を出して寝込みつつも、DVDゲットのために英検の2次を受けに行ってから、どうも免疫落ちちゃったんだよねえ……。2ヵ月半微熱が続いてたこともあるし」
いやあ、困った困った。

明るく笑っとる場合かい!
「今は何ともないんか?気持ち悪うなったり、頭痛かったり、どっか悪かったりせえへんか?」
は意外に精神弱いしなあ、せやのに無茶するし。目ぇ離せんわ。

「平気だって!今は具合悪いとは言ってないでしょ。ほんとにもう、侑士ったら心配性」
「心配性やないわ、ごくまっとうな反応やないか」
「どこがやねん!」

おお、裏手突っ込みや。
関東人のくせに、なかなかいいキレやなあ。

「もっとこう、しーさんみたいに大きく優しく包みこむような心配の仕方をしてよ」
「誰やねん、しーさんて」
「んーとね、私の主治医
「は!?」

主治医!?

「あははは、嘘うそ。前にいたところでの友達。内科医の娘さんでね、すごく大好きなの。うちらの中では1番立場が強かったなあ」
びびったやんか、驚かすなや。
その年でもう主治医がおるのかと思ったわ。

「力が強かったんか?」
「ううん、力も1番強かったけど。でもそれよりしーさんはみんなに優しいから、みんなしーさんが大好きなんだ。私もあんな風になりたいと思ってるんだよ」
無理だけどネ!

「無理なんかい!」
「あたぼうよ!」
いや、親指立てて元気よく笑うとこやないやろ!

……ん?そういえば。

「あかん、外行くで」
「遊ぶの!?」

おー、ふさふさの尻尾が見えそうや。よっぽど暇やってんなあ。
せやけどすまんな、遊ぶんやないんや。

「夕飯の材料、何もあらへんわ」
「あら。んじゃ、行こっか」




2人で歩いとったら、が急に俺の手を握ってきた。
「どないしたん?」
「うー?えへへへ」

照れたように笑うて、は手に力を入れる。
ちっこくて柔らかいのは、さすがに女の子やな。

「坂道、でしょ?だから」

   それはつまり、あれか?

「引っ張ってほしいんか?」
「……ちょっとだけ」

ああああ、せやからそないに可愛らしゅう笑うなって。
人攫いに攫われてまうで?

あかん、の身の安全は俺が守ってやらな!

「仕方あらへんな」


   の手を引いて坂道を登りながら、ふと思った。
もしかしたらは、坂の途中にいるようなもんかもしれん。

どこまで行っても終わりが見えん坂を、は1人でひたすら登っとる。
どこまで行けば頂上に着くのか見当もつかんから、時々へこたれて泣く。
そん時に、俺んとこに来る。

それでもこいつは強いから、ひとしきり泣くとまた1人で登り始める。

「侑士?どしたの?」
   何でもないわ」
何や考えこんどる用にでも見えたんやろか、がきょとんと首を傾げとる。
その頭をくしゃりとなでてやると、は嬉しそうに笑うた。可愛え。

「自分、もうちょい甘え上手になろうな」
「え?私結構甘えまくってるけど。特に侑士」

あかん、全然わかっとらん。もっと根本的なところで甘え言うとんのに。

「……ま、ええわ」

聞こえんように呟いて、の手を引く力を少し強くする。
「昼メシ食ってくか?」
「いいの!?食べる!!」

おーおー、無邪気やなあ。

「よっしゃ。ほんじゃ、腕をふるうで!」