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新しい年が始まる。 新しい気持ちで、また新しい関係を始めよう。 今年も1年、よろしくね? 神酒 「リョーマ、起きて。今日は初詣に行くって言ったじゃない」 控えがちに揺さぶる手と一緒に、聞き慣れた声が届く。 「あと少し……」 「駄目。おじさまだってもう起きてるんだよ?みんなリョーマを待ってるんだから」 揺さぶる手が少し強くなった。 ……だって昨日は遅かったじゃん。もう少し寝たっていいだろ? 「リョーマー」 ……ああ、もう。 「わかったよ……起きるよ」 あんまりしつこいから渋々起きあがると、両頬に1回ずつ軽く触れる、柔らかい感触。 「Good mornin'」 「……Good mornin'」 ……ま、いっか。 朝からの笑顔が間近で見れたし。 「顔洗って着替えして。初詣行ったらおせち食べよ」 時計はまだ6時前。毎年のこととはいえ、やっぱり少しつらい。 でも、は絶対にもっと早く起きてるだろ。振り袖ばっちり着てるし。 ……社殿で正座してる間につらくなっても知らないからな。 うちは毎年社殿にあがって祈祷をしてもらうから、慣れないにはさぞ大変だろうと思ってたら。 「あ、全然平気。こういうの慣れてるから」 あっさり言われて、なんだか拍子抜け。 バスに揺られて神社に着いたら、受付を済ませて長い時間待つ。 寒そうにしてたから俺のコートを貸してやったら、すごく驚いてた。 「リョーマも寒いでしょ。いつもみたいに厚着してるわけじゃないんだから」 「とは鍛え方が違うし。いいから着てなよ」 山吹色の振り袖が、俺の黒いコートで隠れる。 和服だといつもみたいに厚着ができないからそりゃ俺だってちょっとは寒いけど、我慢できないわけじゃない。 「……ありがと」 なんかムカつくけど、は俺のコートを肩にかけただけだった。 軽く睨むと、だって肩幅が足りないでしょと笑われた。 事実だから余計ムカつく……。 「ね、リョーマ」 「ん?」 手招きされて素直に近くに寄ったら、膝に薄くて暖かいものがかけられた。 「少しでも、ね」 が振り袖に羽織ってきたショール。多分、カシミヤ。 「あったかい?」 「……まあね」 熱くなった顔を隠すためにそっぽをむいても、はくすくす笑ったままだ。 気づけば親父はにやにや笑ってるし、母さんも菜々子さんも微笑ましいものを見るような顔で笑ってる。 「リョーマさん」 菜々子さんが笑いながら耳打ちをしてきた。 も聞きたそうな顔をしてたけど、母さんが笑顔で押しとどめる。 「おじさま、今年は心願成就も申し込みしたのよ。 予想外の内容にびっくりして思わず親父を見ると、本人は格好いいと思ってるんだろう笑顔でウィンクをした。 キショいだけだけど。 「へえ……」 親父もやるじゃん。 、びっくりするだろうな。 祈祷で自分の名前が言われたとき、やっぱりは弾かれたように顔を上げた。 俺と目が合うと泣きそうな顔になったから、ぎゅっと手を握る。 「神様にお願いするんだから、きっと叶うでしょ」 「……ありがと……」 「よきお参りでございました」 その言葉と共に注がれる御神酒を、何故か未成年なはずのも並んで飲んでいた。 「ちゃんとした神社でくれる御神酒っておいしいよね」 嬉しそうに言ったは今、俺の隣で甘酒を飲んでいる。 熱いから気をつけろって言ったからか、しきりに紙コップの中に息を吹きかけて冷ましている。 「熱っ!」 「だから言ったじゃん」 舌を火傷したのか、涙目のから紙コップを取り上げて、代わりに俺のを渡す。 「こっち飲みなよ。少なくなってるから、それなりに冷めてるし」 「ありがと……」 「仲がいいのねえ」 「ほんと。姉弟みたいですね」 母さんと菜々子さんが何か言ってるけど、とりあえず聞こえない振り。 だって、精神年齢で言ったら、絶対俺の方が上だろ? 「ねえ、リョーマ?」 「何?」 「今ね、そこに が指さした方を見ても、特に何もない。 「……やっぱいいや、何でもない」 言いかけた言葉を苦笑してやめて、ひょいと俺の顔を覗き込む。 「今年もよろしく」 今年も。 ってことは、まだここからいなくなったりはしないってことだよね? 「今年はあんまり騒ぎを起こさないでよ」 「ひっど!私は全然起こしてないじゃん!」 起こしたじゃん、色々。 本人無自覚だけど。 「……まあ、別にいいけどね」 俺達と一緒にいてくれれば、ただそれだけで。 が見つけたのは、自分の父と公言するあの人達。 どうか、どうか、いい年でありますように。 |