お夕飯を食べ終わってまったりする頃、珍しく裕介が家に来た。
ちょっと緊張しているような顔が気になったけれど、話したことは至って普通。


「珍しいね。何?」
「別に。、怪しい奴にはついてかないようにね」
「今更じゃん。大丈夫だって」
「………………そうだね。じゃ」


ぱたんとドアが閉まってから、少しだけ考える。
自分の部屋に入って、しっかりドアを閉めて。


「ひめちゃん」
「何?」
「行こっか」


伊達に幼馴染をやっているわけじゃない、裕介が変だったことぐらいわかった。
最近ごそごそしていたし、多分「妙なこと」をするのが今夜なんだろう。
あの様子からしても、多分裕介達には手の負えない事だと思う。


「しょうがないわねえ、の手を煩わせるなんて最低」
「まあまあ、いいじゃん。ひめちゃんがいてくれるから平気だよ」
「後で祟ってやる」
「それは勘弁して。私も被害を被りそう」
「……がそう言うなら」


すっごい乗り気で怖いことを言ったひめちゃんを、多分私も巻き込まれそうだと止めておいた。
渋々納得してくれたひめちゃんにぎゅっと抱きついて、ひめちゃん大好き!と言っておく。

美人で過激で私を大事にしてくれるひめちゃん、もちろん大好きだ。
ひめちゃんの力を借りるようなことにならなきゃいいけど、そういうわけにもいかないんだろう。
……今から気が重い。








ひめちゃんのナビで裕介の後をつけていくと、意外にも行先は学校だった。
こんなところで何をするのかと思っていたら、校庭を見て目を細くしたひめちゃんがぽつりと呟く。


「あの男   術士だったのね」


ひめちゃんの視線をたどった先には、いつぞやの電波系イケメン。
サバトみたいな魔法陣を校庭にでかでかと書いて、そのあちこちに裕介達が立っていた。
真ん中に身体が弱い同級生がいるけれど、あの子が生贄なんだろうか。


「電波系、やっぱり不思議系だったの?」
「ええ。神下ろしをするみたい」


……黒魔術じゃなかったのか。
神下ろしならなんとなくわかる、ただし実践したことはない。


「何でまた急に?」


神様を呼ぶなんてよっぽどのことだろうし、少なくとも裕介達は願い事を叶えてほしいからとか、それなんて○龍的なことをするような人間じゃなかったはずだ。
むしろ7つの光る玉を集める方に熱中しそうだ。
何があったのだろうと様子を見ていると、漫画に出てきそうなフードを被ったドクロが出現した。


何故か真ん中に。


あれを呼びたかったのだとすると、裕介達の正気を疑わなきゃいけないようだ。
あれはちょっと、いただけない。
趣味が悪すぎる。

どうやって正気に戻そうかとあれこれ考えていた私の横で、ひめちゃんが何かに納得したように薄く笑った。


「なるほどね」
「何が?」
「あの子供達、死神に喧嘩を売ったみたいよ。この術式はおびき寄せて閉じこめるための結界ね」
「……へー」


なんかよくわからないけど、そうか、死神か。
それならひめちゃんがどうにかしてくれそうだ。


「ひめちゃーん、あのキモいドクロ消してくれる?」
「もちろんよ!」


ぱちりとウインク、それだけでドクロは跡形もなく消え去った。
どこかに飛ばしただけなのかと思ったけれど、ひめちゃん曰く存在そのものを消したらしい。
よかったよかった。

向こうで裕介達が騒いでいるのはまあいいとして、早く帰らないとお母さん達に外にいることがばれてしまう。


「さ、帰りましょ」
「うん。ありがとね、ひめちゃん」
「いいのよ、小指一本動かすよりも簡単だったもの」


ころころと笑うひめちゃんは、神様の中でも一番偉いらしい。
最初に会ったときにナンタラオオミカミみたいなことを言われたけど、正直よくわからないからずっと聞き直していない。
ひめちゃんも気にしてないし。

あ、でも、夜よりは昼の方が力が強いらしいのは覚えている。
夜担当の神様とはあんまり仲が良くないんだとか。


「お母さん達、気がついちゃってるかな?」
「大丈夫じゃないかしら、目くらましかけておいたし」
「え、いつの間に」
「ふふふ、私がの負になるようなことを見逃すわけがないじゃない」


ぱちりとウインクするひめちゃんは、やっぱり最高に可愛い。

後日裕介がうちに来て、「……………………何かした?」とか訊いてきたけれど、何が?とすっとぼけておいたから問題ないだろう。
それから、やたらとあの電波系イケメンを見かけるようになったりもしたけれど、こちらは裕介のアドバイス通り見かけた瞬間に全力で回れ右しておいた。

そして今日も、教室では裕介を見て女子達がきゃあきゃあ騒いでいる。
平和が一番だよね、平和が。
だからそこの女子、裕介とガキ大将の仲間その2であらぬ妄想をするのはやめなさい。
























-----------------------------------

これで完結!お付き合いありがとうございました。
ひめちゃんの正体については、察していただける方だけにやりとしていただければ(笑)ヒント:太陽神
蒼龍は謎の高位存在を探そうと、この後かなり長い間町内をうろうろしてます。不審者。
オヤジは出番がなくなってしょんぼりしています(笑)
裕介だけは何か勘づいたようですが、そもそもひめちゃんの存在を知らないので確信には至らず。
最終話に吉井のお姉さんを出せなかったことだけが心残りです。