いけ好かない子供だった。


愛する兄上一家に取り入ろうと、日々野菜を届ける子供。
兄上に頭をなでられて、くすぐったそうに笑う子供。
一体どこの馬の骨だと調べさせたのは、そう最近のことではない。


何の変哲もない商家の娘。
生まれにはどこにも怪しいところなどない。


だがしかし、あまりにも不自然なその生き方。


言葉を覚えるよりも先に土を触り始め、家の庭を懸命に耕していたという。
そして、親の愛情を欲しがるらしい年頃には、すでにあの山での生活を始めていた。
まるで、そう遠くない未来   あの混乱の時期を知っていたかのように。


あれの行動のおかげで、兄上一家が飢えをしのぐことができたのは確かだ。
その点に関しては、特別に感謝してやらないこともない。


しかし   あまりにも、不自然すぎた。


天つ才と言う者もいうだろう。
あの子供は、見えてしまった未来を憂いて糧を作っていたのだと。
大抵の者は、それで納得するだろう。


だが、自分にはわかる。
天つ才の私にはわかる。




あれは、天つ才などではない。




あれのもつ空気は、そんなものではない。
もっと異質で、歪んだもの。


そう   「不自然」なのだ。


ここに在ること自体が間違っているような、生まれてくる場所を間違えたような、そんな不自然さ。
そんな不穏分子を、おめおめと見逃すわけにはいかない。


何が起きるか判断がつかない。
危険因子になる可能性が高い。
そんな子供に、あのまま兄上達への接触を許すわけにはいかなかった。


兄上の弟として。
紅家当主として。




「飢饉は終わった。もう   あれにも、用はない」




今まで役に立った礼を兼ねて、命は助けてやろう。
貴陽から追い出すだけという、紅家にとってはこれ以上ない寛大な処置。


兄上は怒るだろうか、きっと怒るに違いない。
それでも当主として、判断を誤ったとは思わなかった。