世の中では、初音ミクとかその類似品が人気を集めているらしい。

この間某謙信様の声を使ったものが発売されて、興味本位で聞いてみたデモ曲の出来に驚いた。
ここまで人間っぽい声が出せるのか、ボーカロイドとやらは。


「時代は進んだねえ……」


いつの間に、そんなに技術が進歩したやら。


ため息をつきながら、大雨警報を流すテレビを消す。

この分じゃ、明日の授業は全部休講だな。
明日の夕方までこんな調子だというから、まあ間違いないだろう。


それよりも、さっきからひっきりなしに鳴っている雷の方が怖い。


どうして雷は注意報なんだ、これは間違いなく警報だろう。
光っては間を置かずに轟音をたてる雷に、さすがの私も思わず震えてしまう。


   あ、パソコン消さなきゃ」


つきっ放しのパソコンを思い出して歩き出した時、一際大きな雷が落ちた。


「ひゃ   !!」


同時にぶつり、と停電。
突然の暗さに目がついていかず、何度か瞬きをする。

ようやく慣れたと思った時、近くで大きな物音がした。




「……え?」




物音?


おかしい。
おかしいおかしいおかしい。


この部屋には、私以外に音をたてるものなんてないはずなのに。
息を潜めて、一体何が起きたのかを慎重にうかがう。
派手な音を出したそれはもぞりと動いて、小さくうめいた。


「いたたた……酷いよ、メイコ!」
「……は?」


何とも場にそぐわないのんきな声(ただし涙声)に、思わず間抜けな声が出る。
途端にびしりと硬直したそれは、おそるおそるといったように動き出した。


何度も光る雷に照らされた姿は、どうやら男のようだ。
見えては消えるその表情は、ひどく驚いたように硬直していた。


「……あれ?」


(見えているのかいないのか)私の顔をまじまじと見つめたままぽつりともらし、男は泣きそうな声で呟く。


「……メイコ?」
「…………違いますけど」


仕方がないので答えると、また男の身体が盛大に跳ねる。
そわそわと周囲を見回して、自分の身体を見下ろして、途方に暮れたようにこちらを向いた。


「あの……」


へちゃりと下がった眉が、雷に照らされる。




「ここ   どこですか?」




…………とりあえず。


「誰だアンタ」


不審者全開の男に問いかけた言葉は、妙に静かな室内にびんと響いた。