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「料理でも作ってやるよ。そろそろ昼だし、腹減ったろ?」 神殿に行く前にと、アイザックさんが住むのに使っている一角に連れていってくれた。 確かに鳴ってしまいそうなほどお腹が空いていたので、ありがたく後についていく。 意外なほど小ぢんまりとした部屋の中を見回していると、2つだけある椅子のうち1つを勧められた。 残りの1つにはごく自然にカノンさんが座って、ここのリーダーだったというのを実感させられる。 「ちょっと待ってろよ」 「はい」 「セイレーン、椅子がなくて悪いな」 「元々俺が勝手についてきたんだ。気にするな」 そんな会話を交わしながらも、アイザックさんは手際よく食事を作っていく。 ほどなくできあがった料理は、野菜を煮込んだスープとポテトサラダ。 少し塩気の強いそれは、けれどとてもおいしかった。 アイザックさん、私よりも料理がうまいんじゃないだろうか……。 「料理、お上手なんですね」 「そうか?カミュが作ってるのを見て、自然に覚えたんだが……」 照れたように笑ったアイザックさんは、しばらくためらった後にぽつりと呟いた。 「カミュは……元気にしてるか?」 その一言で、やっぱり離れていてもカミュさんが好きなのだとわかる。 うらやましいと思いながら、笑顔でうなずいた。 「もちろん!時々お話ししに来てくれるんですよ」 「へえ……そういやお前、聖域にいるのに仮面つけてないよな」 「あははは、居候ですから。アフロディーテさんのところでお世話になってるんです」 ああ、そういえば薔薇は元気だろうか。 確か今日明日はアフロディーテさんがいるはずだけれど、急な任務でも入ったらどうしよう。 やっぱり誰かにちゃんとお願いしてくるべきだったと後悔していたら、心配そうな表情をしたセイレーンさんに覗きこまれた。 「 「あ、いえ、お世話してる花が心配だなって」 とりあえず正直に言ってみたら、アイザックさんの顔が微妙に引きつる。 「花……ってまさか、魚座の薔薇か?」 ピスケス。 確か、アフロディーテさんの呼び名だったはずだ。 ちなみにカノンさんはジェミニだったはず。 「はい。綺麗ですよね、あの薔薇!!」 同意してくれると思って言ったのに、何故かアイザックさんはカノンさんの腕を引っ張って内緒話を始めてしまった。 「おい、あいつ何なんだよ!?魚座の薔薇を世話してぴんぴんして、しかも毒に気づいてないなんて!」 「アフロディーテが過保護に守ってるからだろ。あいつはを溺愛してるからな」 「何だよそれ……!」 何やら頭を抱えてしまったアイザックさんを首を傾げながら見ていたら、セイレーンさんが砂糖菓子を手渡してくれる。 アイザックさんの部屋には似つかわしくないそれは、薄いピンク色をしていてとても可愛い。 どこから持ってきたのだろうとじっと見つめると、セイレーンさんが悪戯っぽくウインクした。 「ほら」 ポケットから取り出された袋を覗きこんで、なるほどと納得する。 色とりどりの同じ砂糖菓子が、中にたくさん入っていた。 「可愛いですね。いつも持ってるんですか?」 「いや、たまたまだよ。ちょうど甘い物が食べたくなってね」 「ふうん……私、この味好きです」 外国の物にしてはしつこくなくて、舌の上でさらりと溶ける。 どちらかというと和三盆に近いそれは、やみつきになりそうなおいしさだ。 お抹茶飲みたいなあとぼんやり思いながら笑うと、袋ごとすいと差し出された。 「全部あげるよ」 「え!?そんな、いいですよ!!」 「いいから。俺があげたくなったんだ」 持っておいでと優しく言われて、それ以上断れなくなってしまう。 「 「甘さ控え目の物かな」 「わかりました!」 何か和菓子と、ついでにお抹茶も持ってこようと決意して、ぐぐっと拳を握りしめた。 そんな私の頭をぽんぽんと数回叩いて、セイレーンさんがカノンさん達に向き直る。 「そろそろ神殿に行かないか?カノンが来ると聞いて、テティスがずいぶんとそわそわしていたぞ」 「テティスが……?」 訝しげな顔をしながらも、カノンさんがさっさと入口に足を向ける。 あまりの反応の早さに、思わず数瞬動きが止まってしまった。 「あ、ま、待ってください!」 慌てて立ち上がりながら、テティスさんってどんな人なんだろうかと首を傾げる。 あの反応からすると、カノンさんの彼女だったりするんだろうか。 カノンさんは元々海界にいたというし、そうでもちっとも不思議ではない。 想像していたら、どんどんわくわくしてきた。 ほとんど駆け足でカノンさんの後を追っていたら、いきなり止まったカノンさんの背中にぶつかってしまう。 鼻、鼻打った……! 「わ 「シードラゴン!!あまり遅いから、一体どうしたのかと思ったわ」 「テティス、何があった?」 「何があったも何も 噛みつかんばかりの勢いでカノンさんにくってかかっていたテティスさんが、鼻をおさえている私に気づいて言葉を止めた。 慌ててお辞儀をすると、何故かまじまじと見つめられる。 あまりにも長い沈黙に居心地が悪くなって身動ぎをした瞬間、目の前が一瞬金色に染まった。 「 「え?」 ええと、あの、これは一体どういう状況でしょうか。 (やっぱり海界でも猫可愛がりされるヒロイン。セイレーンがヒロインに対してだけ柔らかい口調なのは仕様です) |