何だかんだで海界への1泊旅行も楽しめたし、ムウさんがおいしいケーキを買ってきてくれたし、最近はいいことが多い。
ほくほくしながらお父様からのプレゼント(海界に行っている間にタナトスさんが持ってきてくれていた)を整理していると、何だか外がにぎやかになってきた。


「……何だろう?」


いつも静まり返っているとまではいかないけれど、聖域には珍しいことだ。
私の部屋は石段から見てちょうど反対側にあるから、余計にそう思う。

出て行っていいのかな、でもやたらと顔出すのもよくないって言われてるしな。

しばらく葛藤して、結局様子は見に行かないことにしようと決めた。


何かあったのなら、後でアフロディーテさんが教えてくれるだろう。
それよりも、このもっふもふのパンダのぬいぐるみは、どこに置くのが一番可愛いだろうか。


親子のような大きさで2体作ってくれたぬいぐるみを抱きしめながら、やっぱりサイドテーブルの上にコアラ抱っこさせるのが一番だろうかと考える。
さっそく乗せてみると、思った通りに可愛い。
可愛いけれど……これじゃあ、サイドテーブルが使えないか……。


どうしようと悩みに悩んでいたら、アフロディーテさんがノックと共に顔を出した。


?お茶にしよう」
「あ、はーい!」


いそいそと後ろについてお庭に出ると、すでにお茶うけと薔薇茶が用意されている状態だ。
今日のお茶うけは、シンプルにフルーツだけ。
でも全部、カットの仕方がものすごく凝ってる……!


「すごいですね……」
「久しぶりにやってみたら、少し失敗したけどね」
「え!?このカット、アフロディーテさんがやったんですか!?」


てっきり女官さんがやったんだと思っていたから、思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
それをどう思ったのか、アフロディーテさんが苦笑して肩をすくめる。


「やっぱり、慣れないことをするものじゃないな。不揃いで美しくない」
「いやいやいや、充分素敵ですよ!!私なんか、これやろうとしたら、多分果物10個ぐらい無駄にしちゃいますよ!」


こんなことができるなんてすごいと力説していたら、今度は小さく目を細めたアフロディーテさんに頭をなでられた。

優しい手つきがくすぐったくて、とても嬉しい。
だらしなく顔がゆるんでる自信があります、私。


   さあ、お茶が冷めてしまうよ」
「そうですね。いただきます!」


ガラスのポットから薔薇茶を注いで一口含むと、柔らかいハーブティーのような味が広がる。
ううん、おいしい!!


しばらくポットの中の赤い花びらを楽しんで、けれどずっとそのままでは渋くなってしまうから、温めておいた別のポットにお茶だけ移す。
くたりと底に張りついてしまった花びらを見ていると、可哀相な気持ちになってしまった。
あんなに綺麗に咲いていたのに、こんな姿になってしまうなんて   





アフロディーテさんに呼ばれて顔を上げると、優しく頬を包まれた。


「そんな、泣きそうな顔をしないでおくれよ。一番綺麗に咲いた薔薇を摘んで、丹精こめて紅茶にしてあるんだ」
「でも……」
「だから、ね。切り花を愛でてもいずれは枯れるように、悲しまないであの姿を愛でてあげればいいんだよ」


切り花にすれば今よりもずっとずっと前に朽ちていた命なのだと、アフロディーテさんは言う。
確かにそれはそうかもしれなくて、でもこういう風に無残な姿を見るのはやっぱら少し悲しかった。

何も言えずにじっと見返していると、苦笑したアフロディーテさんが花びらの入ったポットを片づけてくれた。
戻ってきたアフロディーテさんは、フルーツをつまんで私の口の前に差し出す。


「お食べ」
「……?」
「さあ」


おそるおそるぱくりと食べると、水分と甘みがたっぷりでとてもおいしい。
思わず頬がゆるむ私を見て、こちらはまぶしいくらいに微笑んだアフロディーテさんが残りの半分を再び差し出してきた。


何だか、餌づけされている雛の気分になるのは何故だろう……。


にこにこと上機嫌のアフロディーテさんにそのまま何枚か食べさせてもらったところで、不意に整った唇が動いた。


「おいしいかい?」
「はい!」
「それはよかった。   つまりは、そういうことだと思うよ」
「……え?」


アフロディーテさんが何を伝えたいのか、よくわからない。
首を傾げて見上げると、優しく頭をなでられた。


「口にして、おいしいと思う。命を自分の糧にして、嬉しいと思う。君ならきっと、自然にそうしてるんじゃないのかい?」


   あ。


そうか、そういうことか。
無意味にもてあそんでいるわけじゃないから、素直に飲んでおいしいと思えればそれでいいのか。


ようやくそこに思い至って笑顔になると、アフロディーテさんも微笑んでうなずいてくれた。
まったりとお茶の時間を再会しながら、ふと思い出したようにアフロディーテさんが口を開く。


「そういえば、。これからしばらく騒がしくなるだろうけれど、あまり気にしなくていいからね」
「はい……?」


やっぱり、さっきのにぎやかさは気のせいではなかったようだ。
(一応うなずきながら)何だろうと考えていると、子供がきているのだと教えてくれた。


「やんちゃ盛りの子供だからね、色々と問題を起こすかもしれないけれど……に危害は加えさせないから安心しておくれ」
「はい、もちろん!」


黄金の皆さんが、そんなへまをするわけがない!
一応は私だって聖域でお世話になっている身、聖域を守る皆さんが危険を野放しにするはずがないのだ。

にっこり笑ってうなずくと、「いい子だ」となでてもらえた。


子供って、いくつぐらいの子なんだろうか。
人見知りする子じゃなさそうだから、会えたら遊べればいいな。












(まんまと餌付けされるヒロイン。アフロの薔薇茶は絶品です)