珍しく遊びにきたアイオロス様とお話をしていると、やっぱりいろんなことを知ってるんだとためになる。
黄金の皆さんは任務だなんだって外を飛び回っているから、色々な国の話を聞けるのが楽しい。


は日本以外の国に行ったことはあるのか?」
「うーん……韓国とかバリとか、近場で安いところには行きましたよ。ヨーロッパに行くの、夢だったんです」


図らずもある意味叶っているこの状況は、喜んでいいのか悪いのかよくわからないけれど。
貴重な経験をしていることだけは確かだろう。

微妙な気持ちで曖昧に笑うと、大きな手のひらでぐしゃぐしゃとなでられた。


「そういえば、星矢達が来ているのは知っているか?数日前からここにいるけど……」
「星矢?瞬君と一緒に来た子ですか?」
「お、瞬は知ってるのか。いい奴らだ、きっととも仲良くできると思うよ」


機会があったら話してみるといいと言われて、笑顔でうなずく。
瞬君があんなにいい子なんだ、きっと他の子もいい子に違いない!


ここから動かない私がみんなに会える確率は低そうだけれど、きっと会えると思って楽しみにしていよう。


「瞬君、時々会いに来てくれるんですよ。聖域の外にも出られるらしくって、お菓子とか小物とかくれるんです」
「へえ。瞬らしいな」


細かい気遣いが得意な奴だからと言われ、繊細そうな顔を思い出してみた。


確かに気配りがうまそうだ。
みんなから好かれそうな、とてもいい子。


……見習わなければ……!


「他の子達とも、ここにいる間にお話しできますか?」
「あいつら次第だなあ。普通はここまで奥には来ないだろうし……」


難しい顔でそう返されて、やっぱり無理なのかとヘコむ。
瞬君のお友達とも仲良くなりたかったんだけれど……。


「仕方ないですよね。その子達のお話、いっぱい聞かせてください!」
「ようし!じゃあ、星矢のことからだ!」


家族自慢のような話を要約すると、星矢君はまっすぐで熱くてとても才能あふれる子らしい。
沙織さんを心から大切に思っていて、聖闘士だからとかそういうものはあまり関係なく、身体を張って守ったんだとか。


アイオロス様曰く、「アテナも星矢のことが気になるみたいだし、そのうちくっつけばおもしろいんだけどな」らしい。
それでもってこの星矢君、アイオロス様の後継者なんだとか。



この人、弟のアイオリアさんよりも星矢君の方が大好きなんじゃないかとか思ったのは秘密だ。
顔が輝きすぎです、アイオロス様。




「近い将来、あいつに射手座を譲ろうかと思ってるんだ。ほら、サガ一人じゃ教皇補佐も大変だろう?そろそろそっちに専念してもいいかと思って」
「サガさん、毎日遅くまでお仕事なさってますもんね……」


聖闘士の皆さんは、教皇庁から帰る時には必ずここを通る。
少なくともサガさんは、私が起きている間にここを通ったことは一度もなかった。
上を見上げればいつも必ず同じ場所に明かりが灯っているし、アフロディーテさんがそちらを見上げて「まだやっているのか」と呆れたように息を吐いたこともある。


   つまりは、そういうことで。


「2時くらいに目が覚めてお月見してたら、サガさんとばったり会ったことがあるんです」


少しだけふらふらとしながら、くたびれた様子で石段を降りてきたサガさん。
目が合った瞬間しまったと言いたげな顔になって、早く寝ろと苦笑された。


「ああ……多分、いつもそれくらいなんだろうな」


どうしてお月見なんかしているんだと言わんばかりの目で見られたけれど、たまにはいいじゃないか。
口を尖らせて視線で訴えると、はいはいと言いながら頭をなでられる。
アイオロス様もすぐに表情を元に戻して、困ったものだと苦笑した。


「仕事中毒みたいになってるもんな、サガ」
「本当ですよ!どうにかならないんですか?あれ」


見ているこちらが胃を悪くしそうだと眉を寄せて、アイオロス様を見上げる。
その先でアイオロス様も難しい表情をしていて、努力してみると呟いた。


「とりあえず、星矢が射手座を継承しても大丈夫になってからだな。それまでは二足の草鞋を履くさ」
「……アイオロス様も、無理しないでくださいね」
「大丈夫だよ。ありがとう」


いい子だ、と微笑まれたけれど、あのサガさんの仕事を(多分)半分受け持つなら、かなりの重労働になるはずだ。
サガさんも今現在二束の草鞋状態だし、どちらにしろ大変なんじゃないだろうか。


「サガさんは、黄金の方をカノンさんにゆずったりしないんですか?」
「さあ……俺はあいつらじゃないからなあ。今はまだ、カノンは海将軍でもあるわけだし、あいつらも色々考えてるんじゃないか?」


サガのことだから、考えなしに今の状態を続けてるわけじゃないだろう。


サガさんと付き合いの長い(らしい)アイオロス様が言うんだから、きっとそれは間違いないんだろう。
2人ともしっかりしているから大丈夫だろうと思いつつ、それでも私にも何かできないだろうかと頭を回転させる。


夜食   は、無理。
私、勝手に教皇庁には行けない。
書類の分類などの雑用も同様に却下。
黄金の皆さんへのメッセンジャー   いやいや、小宇宙でテレパシーを使った方がずっと早いだろう。


それなら   そうだ!


「じゃあ私、毎日お出迎えします!お疲れさまでしたって言えるように待ってますね!」
、それは   
「約束ですよ。待ってますから!」


断ろうとしたに違いないアイオロス様の言葉を無視して、にっこりと笑って宣言する。

これならば、少なくともアイオロス様は、私を早く寝かせるために超残業はしないだろう。
そしてきっと、サガさんも引っ張ってきてくれる。

2人が少しでも無理をしませんようにと、こっそり祈った。












(お帰りなさい!ただ、その一言が言いたくて。ヒロインの予測通り、ロス兄さんはサガ様を引っ張って帰りそう)