遊びにきてくれたムウさんと、様子を見にきてくれたシュラさん。
2人にレース編みを見せて、どうしたらもっと素敵なものになるかをコメントしてもらう。


「ここは3つ立ち上げの方がすっきりして見えると思いますよ」
「なるほど……!」
「それから、丸く縁取るなら、もうちょっと目を多くすくった方がいいかもしれませんね。流線形と円形の中間のようになってしまっていますから」
「はい。シュラさんはどうですか?」

「……俺に訊くな。よくわからん」
「えええ、彼女さんにこういうの贈ったりしないんですか?」
「するか!そんなもの、いたこともない」
「嘘!?」


そりゃ、シュラさんはマフィアも真っ青な顔だけれど、すごく優しい人だ。
女の人なら、絶対にこんないい人ほっとかないのに!

信じられずにシュラさんを見上げると、呆れたような表情で見返された。


「俺は聖闘士だぞ、。アテナを差し置いて女なぞ作るか」
「デスマスクさん、いつも女の人との約束が大変そうですよ」
「……あいつは例外だ」


苦々しい顔で答えたシュラさんは、「後で絞める」とか何とか呟いている。
顔がものっそい凶悪だ。


あれ?
もしかして私、デスマスクさんを命の危機にさらしちゃった?


……まあいいか!(デスマスクさんだし!)


「シュラさんかっこいいし、絶対もてそうなのになあ」
「……、あまり言ってはシュラが気の毒ですよ」


本当にもったいない。


しみじみと呟いたら、ぽんと肩に手を置かれた。
笑いをこらえるような声でムウさんに言われて顔を上げると、シュラさんが何とも言えないような表情をしている。


「シュラは真面目でしたからね、アテナ以外の女性には見向きもしてこなかったんですよ」
「でも、沙織さんは星矢君が好きなんでしょう?」


アテナ自身が恋愛真っ最中で桃色ならば、別に聖闘士が桃色になっても問題はないように思えるんだけれど……。
どうして見向きもしないということになるのだろうかとムウさんを見上げたら、「聖闘士とはそういうものです」と苦笑された。


「私達はアテナに唯一の忠誠を誓う者。それがアテナ以外の女性にうつつを抜かしていたら、他の者に示しがつかないでしょう」
「うーん……でもほら、キリスト教の神父様だって、奥さんいますよ?」


唯一神に仕えているのに結婚できるなら、アテナもそうしてもいいんじゃないだろうか。
あ、でも、キリスト教も修道女は生涯独身だっけ。
それならやっぱり聖闘士も   とぐるぐるしていたら、ムウさんに頭をなでられた。


「正確には、神父は妻帯を許されてはいませんよ。あの方々はカトリックですから」
「あ、牧師様!牧師様ってプロテスタント!」
「そうです。私達の場合には、妻帯にはアテナ、または教皇の許可が必要です」


聖域にはアテナがいない時期の方がずっと多い。
その時のために、アテナが教皇に権限を与えたのだとか。


本当に大切な人とならちゃんと結婚も許されると聞いて、ほっとしてしまった。


「じゃあ、沙織さんと星矢君、ちゃんと付き合えるんですね」


むしろ沙織さんがアテナだから、許可も出し放題か。
いやいや、この場合は許可を出すのが教皇になるのか?


「……でもそれだと、シュラさんが女の人に興味がなかった理由にはなりませんよね」


ちゃんとお付き合いが認められているのなら、別に問題はないはずだ。
それなのに、シュラさんに限らず、黄金の皆さん(一部例外あり)は女性関係の噂が全くといっていいほど聞こえてこない。
鍛えてばっかりで出会いがないのだろうか。


「ムウさんは彼女さん、いらしたことないんですか?」
「私はジャミールの奥地にいましたからね。女性はおろか、人自体がほとんど来ませんよ」
「……寂しくなかったんですか?」


お弟子さんがいたらしいとはいえ、何年もそんなところにいるなんて、私なら耐えられない。
どうしてそんなところにいなければならなかったのかと見上げた私に、ムウさんが泣きたくなるほど優しい笑顔を浮かべた。




   本当に、貴女はいい子ですね」




どこをどうとればそうなるのかがよくわからなかったけれど、「寂しくはありませんでしたよ」とムウさんが言ってくれたから、それでよしとしよう。
きっと皆さん、よく聖衣を壊しては修理に駆け込んだりしていたんだろう。


アイオリアさんとかミロさんとか、しょっちゅう壊していそうだ。
聖衣が可哀相……。


「それに、妻帯はあくまでも例外ですからね。基本的にはアテナに生涯お仕えします」
「え!」
「もっとも、聖闘士同士の恋愛もないことはないようですが   


笑いをこらえるようにそう言ったムウさんに、シュラさんも小さく笑う。


「奴か」
「ええ。連敗中どころか、気づいてももらえていないようですよ」


だ、誰のことだろう。
まさか、デスマスクさん!?


期待いっぱいに見上げると、手招きをされてこっそりささやかれた。


   アイオリアですよ。ずっと前から白銀聖闘士に恋をしているんですが、残念ながらお相手には気づいてもらえていないようで」
「……アイオリアさん……!!」


切ない!切なすぎる!
アイオリアさんならそういうオチもありえそうだから、冗談だと笑い飛ばせないところがさらに切ない!


お相手はどんな人なんだろうか。
女性の聖闘士って会ったことがないけれど、格闘家みたいに男性ホルモンが優位です!って感じなんだろうか。
いやいや、下手したらそれじゃ済まないかもしれない。


…………うん。


想像したら、やっぱりアイオリアさんの恋は実らない方がいいんじゃないかと思い始めた。
ごめんなさいアイオリアさん、たおやかな女官さんか清楚な一般人のお嬢さんと素敵な恋愛をしてください。












(実は貴鬼にも魔鈴にもまだ会っていないヒロイン。意外に交流範囲は超狭いままなんです。聖闘士の結婚云々は超捏造)