「どぅえええええええええええええ!?」




「……何でしょう、今の変な声」
「さあ?星矢の声のようだけれど……」


上の方から響いてきた奇声(しかも大音量)に、アフロディーテさんと2人で首を傾げる。
言われてみれば、あれは星矢君の声だった気もした。
何にそんなに驚いたんだろうか。


そんなことを思いながら、空になったアフロディーテさんのティーカップを見て、ポットを持ち上げる。


「いかがですか?」
「いただくよ、ありがとう」
「アフロディーテっ!!」


ほのぼのとしたティータイムは、またもや聞こえた大音量でぶち壊された。
もう、うるさいなあ!


多分入口で叫んだんだろう星矢君は、そのまま返事も聞かずにこちらに向かっているようだ。
アフロディーテさんが「4人だな」と呟いたことからいって、どうやら瞬君や他の子も一緒らしい。


「アフロディーテ!   あ、さんも!!」


どばったん!と派手な音をたててドアを開けた星矢君は、何故か一目散に私に向かって走ってきた。


「え、どうし」
さん、神様って本当かよ!?しかもハーデスの娘って!!」
「え、ちょ、あ、ひゃ   
「どうして冥界の奴がここにいるんだよ!」


がっくんがっくんがっくんがっくん。
脳みそがシェイクされそうな勢いで前後に揺さぶられて、返事がしたくてもできない状態だ。


ポ、ポットを落としちゃう……!!
っていうか、気持ち悪い……!(吐きそう……)


星矢君の言い方から悪い感情が入っていないのはわかったから、ちょっと落ち着いてくれないか な !


「せ、星矢!!さんが真っ青だよ!!」


瞬君が慌てて引きはがしてくれなかったら、多分そのまま三途の川が見えちゃいそうな感じでした。
ぐるぐるする胃と頭を懸命にこらえていたら、アフロディーテさんがそっと背中をなでてくれる。


「……大丈夫かい?」
「……なんとか……」


涙目になりながらうなずいたら、アフロディーテさんがきっと星矢君を睨んだ。


「星矢!!何をするんだ」
「だ……だってさ、びっくりしちゃって……」
「していいことと悪いことがあるだろう!は聖闘士ではないんだ、もう少し加減をしろ!」


たじたじとなっている様子の星矢君に、追い討ちのように瞬君の責めるような声が続く。


「星矢、沙織さんも言ってたじゃないか。さんは普通の女の人だって」
「何も考えずに突っ走るのは、お前のよくない癖だぞ」
「まあ、それで助けられたこともあるがな」


最後の2つは……誰の声だろう?
聞いたことがない声だ。
顔を上げたいけれど、今不用意に身体を動かしたら胃の中身が逆流しそう……。


さん……大丈夫ですか?」
「…………ごめん、さん」


心配そうに覗きこんでくれた瞬君の横で、カエル座りをした星矢君がしょんぼりと落ちこんでいる。
その様子がまるっきり悪ガキのそれで、思わず小さく笑ってしまった。

中学生ってこれくらいやんちゃだったなあ、そういえば。


「大丈夫。もうちょっとしたら、多分落ち着くから」


ぐたりとしたままひらひらと手を振って答えたら、背中に温かい手が触れた。
ゆっくりと上下にさすってくれるそれが、じんわりと優しくて気持ちいい。


「ベッドに行くかい?
「うーん……多分、平気だと思います」
「君の平気は、平気じゃないことが多いだろう」


何とかなると思って答えたのに、全然信用されなかった。
咎めるように言われるのと同時に、ゆっくりと身体が宙に浮く。


「へ、きゃあ!」
「具合が悪くなったら、すぐに言うんだよ」
「ははははは恥ずかしいです!!」


「すげえ……俺も沙織さんにやったことあるけど、こんなにナチュラルに横抱きするの、初めて見た」
「大事にされてるんだね、さん……」
「な。アフロディーテがこんなことするなんて、想像もしなかったぜ」
「圧観だな……」


後ろでひそひそと話されているのが、またたまらなく恥ずかしい。
抵抗しても無駄なのはわかっているので、どうにもできなくてアフロディーテさんの胸に顔を押しつける。
ふわりと香る薔薇の匂いだけが、ちょっぴり気持ちを癒してくれた。












   で。さん、ハーデスの娘ってどういうことなんだ?」
「そんな神、いなかった気がするんだけど……」


ベッドに寝かされて上半身だけ起こしてもらい、まるで病人のような状態で瞬君達の質問を聞く。
後ろの2人は寡黙な方らしく、それでも興味津々な目でじっとこちらを見ていた。


あのどちらかが、紫龍君なんだろう。
もう一人は、ええと……もしかして、氷河君、かな?

髪が長くてアジアンテイストな方が紫龍君だろうかと思いつつ、星矢君に微笑みかける。


「ちょっと、迷子になっちゃったんだ。ハーデス様とペルセファネー様が家族になろうって言ってくださったから、お言葉に甘えてるの」
「じゃ、じゃあ、何か特別な力を持ってるとか?」
「持ってな……くも、ないのかな?何か、変なことはできた気がするよ」
「何だよ、変なことって……」


呆れたように星矢君が言うけれど、変なこと以外に表現のしようがない。
困ってしまってアフロディーテさんを見上げると、大丈夫だというようにうなずいてくれた。


「ユリティースだろう?」
「……はい……」


もうあれは、私にもどうなっていたのかわからない。


眉を下げてうなずくと、大きな手が頭をなでてくれる。
温もりにちょっとだけ顔をほころばせると、アフロディーテさんもそれはそれは綺麗に微笑んだ。


……ま、負けた……!(元からだけど!)(そしてそんなアフロディーテさんが大好きだけど!)












(ようやく沙織がカミングアウトしたようです。気がついたら星矢の扱いが酷すぎる)