毎日のようにアポロン様がいらして、毎日のように沙織さんが連れていく。
実は最近、アポロン様がいらっしゃるのを楽しみにしているのだ。
だって、アポロン様がいらしてから、沙織さんとお話する機会が増えているんだもの!

基本的にここから動かない私は、呼ばれるか沙織さんが来るかしないと、直接話をすることがない。
それが密かに悲しかったから、こうやって頻繁に会えるのは、とても嬉しかった。

アポロン様はかなり変わった方だけれど、だから好き。


、何を笑っているんだい?」
「沙織さんとお話する機会が増えて嬉しいんです」


頭をなでてくれるアフロディーテさんにそう言ったら、ちょっぴり驚いた顔をされた。
そんなに変なことを言っただろうかと首を傾げれば、頭の上で止まっていた手が動き出す。


「今度、アテナにお伝えしておくよ。きっとあの方も喜ぶだろう」
「ありがとうございます!あ、あと、今度お菓子を作るので、食べに来てくださいってお願いしてもらえますか……?」
「もちろん」


とろけそうな笑顔を浮かべるアフロディーテさんの手が、ゆっくりと髪を梳いてくれた。
いつも優しくて頼りになるから、アフロディーテさんも大好き。
こんなに優しくしてもらっていいのかとも思うけれど、私はつくづく幸せだなあ。

……と、思うのだけれど。


お父様とお母様に会いたいと思うのは、わがままだなあ……。


こっそりついたはずのため息は、しっかり聞かれていたらしい。


「こら、。一人でためこんでは駄目だよ」
「…………はい」


そっと額を小突かれて、ばつが悪くなって首をすくめた。
優しく優しくくるまれて。

ここは、誰もが私に優しい。
けれど皆さんは、どこか苦しそうで。


「……アフロディーテさんも、愚痴とか言って下さいね?」
   ありがとう。は優しいね」


どこか悲しそうに笑ったアフロディーテさんにはこれ以上言えず、せめてもと抱きついた。
いつも皆さんに抱きしめてもらうように、少しでも安心してほしくて。
アフロディーテさんの身体がびくりと固くなったのには気づいたけれど、ここは気づかなかった振りで。

自分勝手に寂しいと思ってしまう私よりも、優しい皆さんに苦しくなくなってほしかった。


……」
「だ、だって、皆さん優しす、ぎて!私、すごくわがっまま、なのに!!」


ほら、わがまま。
泣きたいわけじゃないのに、勝手にあふれてくる。
アフロディーテさんが困ることなんてわかりきっているのに、泣きやめない自分が嫌だ。

何とか涙を止めようとしていたその時。


ー!!我が妻の悲しむ気配がしたが、どうかし貴様何をしているううう!!」
「ひゃぁぁぁ!?」


ドア、ドアが壊れた……!!
むしろ蝶番が吹き飛んで、壁までヒビが……!!


巻き込みついでに飛んできた大理石の破片は、アフロディーテさんがさっと盾になってくれたおかげで私には当たらなかった。

アポロン様……また壊したんですか……。
そろそろアフロディーテさんの堪忍袋が怖いです。


「何をしていると訊いているんだ!」
「あなたに怯えているを宥めているんですが」
「馬鹿者!!」
「馬鹿者は自分だと気づきなさい、アポロン」
「はぎゃあ!!」


今日もニケがうなりますね、沙織さん!
相変わらず来てくれるのが速いです!


「ああ、もう!修理は自分でなさい!」


もう一度ニケを振り下ろした沙織さんが、優しい笑顔でこちらを振り向いた。


「ごめんなさい、いつもいつも。さんには迷惑ばかりですね」
「いえ、そんな!」
「この馬鹿はいくら言っても理解しないようなので、後で別の手段を打っておきます」
「え、あ、ありがとうございます……?」


にこやかな沙織さんは美人さんだけれど、ニケについているどす黒い血が怖い。
別の手段とは何だろうと首を傾げると、可愛らしい笑い声が返ってきた。


「多分、さんは喜んでくれると思いますよ」
「え?」
「うふふ、明日になればわかります」
「はい……」


楽しみにしていてくださいねと微笑まれて、思わずうなずき返す。
なんだかよく分からないけれど、沙織さんが楽しそうだからよしとした。
笑ってくれているのが一番だものね、うん!


「コロッセオを開放なさい、サガ」
「は――しかし、何故」
「決まっているでしょう?公開処刑です」
「ほう、おもしろい事を考えておるな?アテナ」
「ええ。貴女も参加しますか?」
「うむ、久しぶりに妾も動くかの」
「ああアテナ、私もお願いね」
「もちろんです。3人できっちりと絞めましょう
(何となく獲物がわかったアポロン逃げて超逃げて!!!!)












(大理石が豊富なギリシャならではの破壊活動。女神達の歓談の場に居合わせてしまったミロが哀れすぎる。サガはロス兄さんから胃薬をもらっていました)