「こんにちは、また遊びに来ちゃいました!あ、これ、おもたせです」
様……!そんな、私達に手土産など!」
「お父様がお世話になってるんですもの!お土産持ってくるのは当然ですよ」




ジー。




「……おい、ラダマンティス。お前一体、何してるんだ?」
「……聞いてくれるな……」


物陰に隠れて、片手にしっかりとビデオカメラ(ブルーレイ)。

あまりにも不審なその姿に耐えきれず、アイアコスが突っ込んだ。
答えるラダマンティス自身も、哀愁を背負っている。


「あれ?他のお二人はどうなさったんですか?」
「え?先程までここにいたのですが……」


彼らの大切な姫君が、残念そうに辺りを見回している。
飛び出したい!近くに行きたい!と思っていることが丸わかりなラダマンティスに哀れんだ視線を向けて、アイアコスはすたこらさっさと柱の影から歩き出した。


「アイアコス!」
「お前はちゃんとそれをやってろ」


ひらひらと手を振るその声は、明らかにおもしろがっている。




様、お久し振りです」
「アイアコスさん!ラダマンティスさんはどこかご存知ですか?」
「あいつなら、忙しいと言って奥に引っ込んでいますよ。そのうち来るでしょう」
「そうですか……」




残念そうに曇る顔をディスプレイ越しに見ながら、ラダマンティスはぎりぎりと歯噛みをした。


叶うならば、自分とて今すぐ近寄りたい。
しかしそれでは、この任務を果たすことができない。

とてつもないジレンマだ。




「ラダマンティス。これで姫君のご様子を撮影しろ」
「は   




ぽんとヒュプノスにビデオカメラを渡された時、疑問系にするのをこらえたのは、我ながらよく耐えたと褒めてやりたい。


「姫君はあまりこちらにいらっしゃることができない。エリュシオンでは私が写真を残せるが、やはり動画も合った方がいいだろう」


そこで、こちらはお前に任せる。
信頼しているぞ。

ありがた迷惑だ、と言わなかった自分は、今考えても偉いと思う。


数メートル離れた場所では、がミーノスに勧められて紅茶を飲んでいるところだった。
どうやら今回はカモミールらしい。




「ハーブティーって落ち着きますよね。私、こういうの好きなんです」
「それでは、次までにご用意いたします」
「え!?そんな、いいですよ!!」




慌てふためく様子も、ぱたぱたと手が振れる様が愛らしい。
同じことを考えたらしいアイアコスの表情がだらしなくゆるんで、チョコレートを差し出した。


ナッツの入ったあのチョコレートは、どうやらのお気に入りらしい。
ぱっと顔が輝いて、いそいそと手を伸ばしていた。

小さな子供のように素直な反応に、ディスプレイを確認する顔がゆるむ。




「おいしい!」
「それはよかった。ピスタチオもいかがですか?」
「はい!」




グリークコーヒーを飲むアイアコスが、自分の前にあったピスタチオをに勧める。
わざわざ殻をむいてやるまめまめしさだ。
その横ではミーノスが紅茶を注ぎ直している。


甲斐甲斐しく世話をやかれるは、申し訳なさそうに眉を下げながらも幸せそうにチョコレートを食べていた。


「……」


駄目だ。
もう限界だ。


ビデオカメラを素早くしまって、ラダマンティスは足早に3人の下に向かう。


「お久しぶりです、様」
「ラダマンティスさん!」


自分の姿を認めた途端に、が嬉しそうな表情になった。


それだけで笑顔になれる自分を自覚しているが、それがどうした文句があるか。
どいつもこいつも同じような状態だ、誰も気にするまい。


「お仕事、大変なんですか?」
「ええ、まあ」


ビデオ撮影が仕事ですだなんて、そんなもの口が裂けても言えない。
曖昧に笑ってごまかしながら、ラダマンティス自身も席に着いた。


結局、彼女が帰るまでに録りためたディスクは延べ60枚。
それからしばらく、事あるごとにの写真やビデオを眺める冥界勢の姿があったという。











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秋沙さんのリクエスト、「冥界ツアー後にみんなで記念撮影とか、ツアー中のビデオ撮影とか」でした。
何だかかなりリクエストを外した気もしますが、ま、まあ、これはこれで!!(こら)


誰が撮影係かと考えたところ、やっぱり貧乏くじはラダマンティスしか思いつきませんでした。
だって、アイアコスはヘタレなんだもの!
苦労人とは違うんだもの!

そんなわけで、でっかい身体を柱の影に押し込めて、ラダマンティスさんは今日もカメラを回すのでした。
ツアー中ヒロインが来る度に、こんなことを繰り返してます。
その後、このVTRや写真は、ハーデス様が執務をしようとしない時に、絶大な効果を発揮したとか。


お持ち帰りは秋沙さんのみとさせていただきます。
リクエストありがとうございました!