世にも珍しい三界首脳会談(語弊あり)。
そんなものが何故地上で行われているかというと。


「さあ、では   決めようじゃありませんか。誰が一番、さんを知っているか」


油断ない笑みを浮かべた沙織の一言によって、戦いの火蓋が切って落とされた。

無言のハーデス、微笑を浮かべるペルセフォネー。
何を考えているのか全く読めないポセイドン。

何故自分がここにいるのかと、サガは本気で胃が痛くなった。


「何故お前は平然としていられるんだ……」
について話すだけだろう?報告会も兼ねているんだ、そう気負うこともあるまい」


涼しい顔のアフロディーテは、のんびりとティーカップを傾けた。
己の役目を割り切っているのだろう、本人の言葉通り気負っている様子は全くない。
そんな二人に構うことなく、沙織が先制攻撃を仕掛けた。


「ではまず、私達から」


実に気軽に言い放って、の聖域での暮らしぶりを暴露していく。


「日中のほとんどを、このアフロディーテのところで過ごしています。お花が大好きで、喜んで世話をしてらっしゃいますね。紅茶の腕前も素敵なものですよ」
「そういえば、私が来たときも、あの子のお茶はおいしかったわ」


ペルセフォネーがゆったりと呼応し、ハーデスがぎしりと固まった。
どうやら、一緒にお菓子作りはしても、お茶を淹れてもらったことはなかったらしい。
無表情を貫いてはいるが、そこはかとなく哀愁が漂っていた。


「あらあら、ハーデス様はまだいただいていないの?でしたら、今度3人でお茶をしましょう」


朗らかに提案された瞬間、ハーデスが復活した。
さすがは奥方、夫の扱いには慣れているらしい。

そしてそのまま、ペルセフォネーの攻撃が始まった。


は冥界でも人気ですのよ。よくお菓子を作っては配っているので、配下たちの間ではアイドルのようになっているようですよ?」


アイドル、の部分を微妙に強調しつつ、彼女の話はまだ続く。


「朝はちょっとお寝坊さんで、寝ぼけている顔がまた可愛くて。おはようのキスをすると、こっちまでとろけてしまいそうな笑顔を見せてくれるの」


今度は沙織がぴしりと固まった。
気のせいか、こめかみに青筋が浮いているような気もする。


「親ならではの特権ね。うふふ、親になるのがこんなに素敵なことだったなんて、想像もしなかったわ」


心底幸せそうなペルセフォネーには、悪気はないのだろう。
ないのだが、対抗心が見え隠れしている。

父であり、母であるはずの自分達よりも、沙織達の方が何倍もと過ごしている。
おそらくそれが原因だろうと思われるのだが、サガはますます胃痛が激しくなってきた。


「ポセイドン、あなたは?」


沙織に水を向けられたポセイドンは、しばらく考えた後、おもむろに口を開く。


「柔らかかった」
「何だそれは!」
は、抱きしめると柔らかい」


荒々しく椅子を蹴倒しながら立ち上がったハーデスに、ポセイドンは淡々と答えた。
どうしてこう、誰も彼も自由な神ばかりなのだろうか。


「娘はやらん」
「許可はいらない、勝手にもらう」
「駄目だ」
「嫌だ」


そんな馬鹿二人の口論をBGMに遠い目をするサガそっちのけで、女性陣は気楽なものだ。


「あらあら、ポセイドンはさんをお嫁にしたいのね」
「いいんじゃないかしら?ポセイドンならゼウスも手出しができないだろうし、安全よ?」
「まあ、そうだったわ。あの色ボケクソ親父のことを忘れていたわ!」
「私、個人的には、貴女のところの聖闘士でも構わないと思ってるの。あの子もここが好きだし、皆大切にしてくれているでしょう?」
「信頼してくれて嬉しいわ、ペルセフォネー」


にっこりと微笑んだ沙織の表情は、満更でもなさそうだ。
むしろ、誰とくっつけようか企んでいそうな気がする。

確かには、初対面で乱暴に扱い、最後まで疑っていたサガに対しても礼儀正しく好意を向けてくる。
聖域という特殊な場所を理解して、控えめに生活していた。
そんな彼女だから、きっと誰にも好かれるのだろう。

サガがそんなことを考えている間にも、女神達の想像はエスカレートしていった。 「あの子の花嫁衣装は綺麗でしょうねぇ」 「ええ、もちろん。私が全力で作らせます」 「そうね、織物の神である貴女になら任せられるわ。デザインはアフロディーテに頼もうかしら」 「彼女はセンスがいいものですしね。私の方で大まかなデザインを作りますから、後は彼女に」


いつの間に結婚の話になった。
そして何故、誰も止めようとしない。
げっそりとして辺りを見回すと、そこはもうカオスだった。

いまだに喧嘩を続けているハーデスとポセイドン。
きゃっきゃうふふと楽しそうに話しているアテナとペルセフォネー。
我関せずといった様子で優雅にティータイムを楽しんでいるアフロディーテ。
止めろ、アフロディーテ。

眉間に深い皺を刻んでため息をついたサガに、アフロディーテが小さく笑った。


「言っただろう?の様子について話すだけだと」


つまり、こういうカオスになるのはわかっていたわけで。


「娘はやらん」
「お前同様攫ってやる」
「許すと思うか」
「ドレスはどういうデザインがいいかしら」
「ふわりとしたものがいいと思うわ。きっとさんに似合いますもの」
「そうね。色とりどりの花で飾って……ああ、なんて可愛いのかしら!」


とりあえず、早く終わってくれないだろうか。
そして、一刻でも早く解放してほしい。
サガのそんな願いはむなしく、会議は星が瞬くまで続いたのだった。











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お二人からのリクエスト、一つにまとめさせていただきました…。すみませんすみません、分けて書こうとしたんですけど、私の実力では無理でした(ぱたり)


双子とアフロを!とのリクエストだったので頑張ってねじ込みましたが、実質サガ視点なだけで、アフロも一瞬しか出てきていないという罠。
ドンマイ自分、今度はもっと精進だ。

お持ち帰りは鹿野さんと更夜さんのみとなります。
リクエストありがとうございました!遅くなってすみません!