それは、私の素朴な疑問から始まった。


「皆さん、金ぴかの鎧着るんですよね?」
「そうだよ、それがどうかしたかい?」


アフロディーテさんとムウさんとのお茶会の時にふと訊いたら、アフロディーテさんがうっとりするほど優しい笑顔で首を傾げる。


ああ、その仕草も優雅で素敵です……!
この100分の1でも、私にも優雅さがあれば!

とか考えても仕方がないので、疑問の続きを投げてみる。


「やっぱり皆さん、戦ったりするんですか?」


こんなに優しい2人が戦うところなんて、想像もできない。
一体どんな感じなんだろうと考えてみても、穏やかに笑う2人しか思い浮かばなかった。
戦うアフロディーテさんとムウさん…と考えていると、おもむろにムウさんが笑う。


「どうやらは、私達が戦うと信じられないようですね。   では、私達の技を見せましょうか」


そうして、ムウさんの小宇宙通信(と言ったらカノンさんに笑われた)によって皆さんが集合し、普段聖闘士候補生や聖闘士の皆さんが訓練する場所とは違うところに連れてこられた。

何でもここは、黄金の皆さんしか使えない場所なんだとか。
老師は相変わらず中国にいるらしくて、まだ会えていないのが残念だ。
この機会に、ご挨拶できたらと思ったのに。


「んじゃ   まず、俺からいくか?」
「馬鹿かお前は。初めて巨蟹宮に行った時のの怯え様を忘れたのか」
「だからこそ、ショック療法って言うじゃねえか   いくぜ、積尸気冥界波!」


誰が止める間もなく蟹さんが叫ぶと同時に、空間がぐにゃりと歪む。
その次に見えた光景に、思わず隣にいたシュラさんにしがみついてしまった。


「お、おおおおばけー!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖いー!!」


おどろおどろしい光景に、何だか黒い幽霊みたいな人達。
一瞬見ただけでもうお腹いっぱいです、勘弁してください。


ぶるぶると震えながら必死にしがみついていると、呆れたようなシュラさんの声が頭上から聞こえた。


「……もう充分だろう。やめてやれ」
「ちっ、つまんねえな」


本気でつまらなさそうな蟹さんの声と共に、またぐにゃりと空間が歪む気配がする。
ぽんぽんと背中を叩かれてそろりと顔を上げると、いつも通りの景色が広がっていた。


「す、すみません、シュラさん……」
「デスマスクが悪い。気にするな」
「そうだよ、が謝ることはないからね。この蟹が全部悪いんだから」
「おいこらアフロ!!どさくさにまぎれて何言いやがってるんだ!!」


蟹さんが怒鳴るけれど、アフロディーテさんはどこ吹く風。
いつもこんな感じだから、きっと仲は悪くないんだろう。うん。
何だかんだ言って、蟹さんもよく遊びにくるし。

続いて技を見せてくれたのは、意外にもムウさんだった。


、ちょっと手を伸ばしてごらんなさい」
「え?   あれ?ええ?」


伸ばした手は、途中でかつりと何かに当たる。
慌てて掌全体を押しつけるように伸ばしたら、べたりと何かに阻止された。


「ええええ、何ですかこれ!閉じ込められてる!!」
「私の技、クリスタルウォールですよ。味方を守ることも、敵を阻むこともできます」


貴鬼にも時々、これでおしおきをしていますと言うムウさんは、ものすごくいい笑顔だ。
……貴鬼君、可哀相に……。

これは怖い。
地味に怖い。
何にも触れないのって、地味に怖い。


「もももういいですー!!助けてください!!」


半泣きになりながらお願いしたら、ムウさんがおかしそうに笑うのと同時にいきなり壁がなくなった。
思わずつんのめる私を、アフロディーテさんが優しく受け止めてくれる。


「大丈夫かい?」
「怖かったです……!」
「じゃあ、次は俺だな!!」


ちょっとアイオロス様、空気読んでください!!
ちょっと落ち着く時間をください!



思いっきり武装して、喜々として矢をつがえるアイオロス様に心の中で盛大に突っ込んで、ぶるぶると震えながらアフロディーテさんにしがみつく。
だってあれ、絶対に直接攻撃用だ……!


そんな私の頭をなでながら、アフロディーテさんが「まあまあ」ととりなしてくれた。


「何も実践して見せる必要はないんだ、説明すればいいだろう?」
「それもそうだな……」


今更ながらに気がついたというように、サガさんが呟く。
できれば、もっと早く気がついてほしかった。


「あ、じゃあ俺の!俺の教えてやるよ!!」


喜々として手をあげたミロさんが、「俺のはすごいぞー」と無邪気にはしゃいでいる。
これなら大丈夫そうだと胸をなで下ろした   私は甘かった。


「俺のはな、スカーレットニードルっつってな、蠍座の15星にあたる相手の急所に順番に攻撃してくんだよ。こう、小宇宙でドスッ!!って、針で突くみたいに!」


一撃でもかなり効くけど、15個目を打ったら確実に仕留められるんだぜ!
そういやカノン、あれくらったよなー、どうだった?


はしゃぎながら言うような内容じゃありません!
そしてカノンさん、どうしてそんなのくらって無事なんですか!?



突っ込みどころ満載のセリフに、思わずくらりと立ちくらみ。
も、もう絶対、皆さんに技のことなんか聞かない……!!
涙目になりながらひっそりとそう誓った、とある午後。











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朔良さんのリクエストで、「黄金の皆の必殺技を主人公が見たがる話」でした。
見たがるのはいいんですが、ちょっと刺激が強すぎたみたいですね!(爽笑)


この後結局すぐに、ヒロインはギブアップ。
なので、アフロのある意味残酷な薔薇の使い方は知らないままです。
ついでに、実は地味に童虎にも出会ってません。
本編でも1回も登場してないのは、そんな理由からです(笑)

お持ち帰りは朔良さんのみとなります。
リクエストありがとうございました!