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「こんにちはー」 ある日、冥界に遊びに行くと。 「隠れてください、様!!」 ものすごい勢いでアイアコスさんに止められた。 「どうしたんですか?」 あまりにも必死なものだから、ついつい本当に物陰に隠れてしまった。 そんな私をさらに隠すように立ちふさがったアイアコスさんは、青ざめた顔でぶんぶんとかぶりを振るばかりだ。 しばらく返事を待ってみたものの、全く変わらないアイアコスさんに、ちょっぴり途方に暮れてしまった。 どうしよう、らちが明かない。 「よくわからないけど……何かあったんですか?」 「ミ……ミ、ミ、ミーノスが……」 「ミーノスさんが?」 あ、やっとしゃべってくれた。 「新しい壊れ方をしました」 「………………はい?」 しゃべってくれたのはいいけれど、やっぱりどうにも要領を得ない。 どんな壊れ方にせよ、ミーノスさんに限って、まさか暴力を振るうことはないだろう。 そんな結論に達すると、よし、と拳を握ってアイアコスさんを見上げた。 「とりあえず、会ってみますね!」 お茶でも飲めば、また寝てくれるかもしれないし! 黒い冥衣の横をすり抜けてすたこらさっさと進む背中に、アイアコスさんの悲鳴が聞こえた気がした(でも気にしない!)(だってアイアコスさんだもん!) 「 「ミーノスさん、大丈夫ですか?」 「様!」 「様!?」 アイアコスさんの慌てようから、みんなジュデッカのどこかにいるだろうと当たりをつけていたら、本当に2人揃って同じ部屋にいた。 珍しいと思ったけれど、もしかしたらラダマンティスさんはミーノスさんの救護要員なのかもしれない。 嬉しそうな表情で声をあげたミーノスさんとは対照的に、ラダマンティスさんはしまったと言いたげに青くなった。 アイアコスさんといい、一体どうしたんだろうか。 「様、こちらへどうぞ」 「ありがとうございます」 にこやかなミーノスさんにエスコートされながら、部屋の隅に置かれたテーブルにつく。 すぐにハーブティーを用意してくれるミーノスさんを見ながら、今日はジャスミンティーかと顔がほころんだ。 「……あれ?ラダマンティスさんはお茶しないんですか?」 「ああ、ラダマンティスは仕事がたまっているようで……先にいただいていましょう」 「そうですか……でも、2人でも楽しいですよね!」 「はい、もちろん」 「待て待て待て!!」 忙しいなら仕方がない。 向こうでペンを動かしながらラダマンティスさんが声をあげるけれど、ミーノスさんと2人でお茶をすることにしよう。 「ミーノス貴様、自分の分が終わっているなら手伝わんか!!」 「何を言うんですか、ラダマンティス。ハーデス様の部下たるもの、自分の分は自分で終わらせてこそでしょう」 もう人の仕事まで大量にしょいこむのはやめたんですと、ミーノスさんがつーんと横を向いた。 子供っぽい仕草が失礼ながらも可愛くてくすくすと笑っていると、ミーノスさんも照れたようにはにかむ。 「それに、せっかく様がいらしているのに、余計な仕事で貴重な時間を削るわけにはいきませんし」 「それを俺の前で言うか、ミーノス……!」 のんびりほのぼのと言ったミーノスさんに、ラダマンティスさんが悲痛な声で吼えた。 ……ああ、またヒュプノスさんあたりの仕事を肩代わりしてるんですね……。 やっぱり苦労人ですね、ラダマンティスさん……。 切なすぎる役回りにそっと涙をこらえていると、不満そうな顔をしたミーノスさんに手を引かれた。 「……私がここにいるのに……」 ラダマンティスばかりずるいですと、子供のように頬をふくらませるミーノスさんに、思わずくらりとしてしまう。 男の人のくせに、しかも成人男性のくせに……! どうしてこんなに、可愛い仕草が妙に似合うの……!? 反則だと思いつつも、確かに失礼だったのには変わりがないので、カップを置いて頭を下げる。 「そうですよね……。すみませんでした」 「そんな、頭を下げていただきたかったわけでは……!」 ひどく慌ててしまったミーノスさんが、逆にこちらが申し訳ないほど落ちこんでしまった。 「私はただ……様ともっとお話ししたいと……」 「ミーノス貴様ぁ!!姫君になれなれしいわ!!大体お前はこの間から、姫君姫君と騒がしい!!」 可愛い!とまたまた撃ち抜かれそうになったその時、ヒュプノスさんが荒々しく扉を開けて入ってきた。 何だかおかしなことを言っていたけれど、今はそれよりもその表情の方が問題だ。 ずかずかとミーノスさんに近づくと、鬼気迫る表情で睨みつける。 私なんかはその表情だけで固まってしまうのに、ミーノスさんはそんなのどこ吹く風だ。 それどころか、さっと表情を変えるとヒュプノスさんに詰め寄った。 「ヒュプノス様!!お願いですから、後生ですから、執務はきちんとなさってください……!」 「うるさい!それよりも 「ヒュプノスさん……お仕事、ちゃんとしましょうよ……」 何かを言おうとしていたヒュプノスさんを遮って、思わず口を挟んでしまう。 仕事はちゃんとするべきだ。 お父様も、きちんとお仕事していたもの! じっと見つめていたら、ヒュプノスさんがたじろいだように瞳を揺るがせた。 「し……かし、姫君……」 「お仕事をちゃんとしない人、嫌いです」 子供のように言い切って横を向くと、ヒュプノスさんの顔色が変わる(ついでにミーノスさんが嬉しそうな顔になった)(何故なのか謎だ) 「 ものすごい勢いで出て行った(ラダマンティスさんの抱えていた書類の山も同時に消えた)ヒュプノスさんを見送って、ミーノスさんがにっこりと笑った。 「様は、勤勉な人がお好きなのですか?」 「へ?あ、はい」 なまけてばかりいるよりは、ちゃんと仕事をしてくれる方がいいにきまっている。 サガさんみたいに仕事の鬼になると、話はまた変わってくるけれど。 こくりとうなずくと、ミーノスさんがさらに嬉しそうに笑う。 「様は そこで一瞬、ミーノスさんの表情が固まった。 笑顔のままで動かなくなってしまったミーノスさんに不安を感じて、おそるおそる覗きこむ。 「……あの、ミーノスさん……?」 「 覗きこんだ瞬間、しっかりと手を握りしめられた。 声も目線も仕草も、妙に色っぽい。 どどどうしよう、ブラックってこんなに突然来るものだったの!? 疲れ果てた様子は全然なかったんだけど! 混乱しすぎてパニック寸前の耳元で、腰が抜けそうな低音がささやく。 「 耳に息がかかりそうな至近距離で、思考が真っ白になった。 どうし 「ミーノスぅぅぅぅぅ!!いい加減にしろ!!」 がすっ!! ゴッ!! 泣きたくなったその時、ラダマンティスさんがものすごい勢いでミーノスさんをしばき倒した。 テーブルが割れそうな勢いで頭を打ちつけたけれど、ミーノスさんは大丈夫だろうか……。 すっかり気を失ったミーノスさんを見下ろして、肩で息をしたラダマンティスさんがくるりと振り向いた。 「申し訳ありません、様。危険ですから、今日はもうお帰りください」 「そうします……」 もうしばらくは来ないようにしようと、ひっそり決意しながらうなずいた。 今度来る時までには、ミーノスさんが元に戻っているといいな……。 ----------------------------------- 更夜さんからのリクエスト、「ヒロインに独占欲爆発なミーノス」でした。 試行錯誤したけれど、結局こんな仕上がりにしかなりませんでした…。 リクエストではサイコ系とあったんですが、サイコ系にすると白ミーノスじゃなくなる…!と苦悩したあげく、とことん白は白で可愛らしく攻めてみました(笑) サイコ系で白って、ミーノスだとどうなるのかな…。 しかもこの2人、話の中であんまりしゃべってないと今気づく罠。 ラダマンティスは苦労人であると同時にツッコミ要員。 アイアコスが混じると、何気に鬼畜要員。 自由自在にキャラが変われるのって、いいですよね!! お持ち帰りは更夜さんのみとさせていただきます。 リクエストありがとうございました! |