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深い深い海の底。 そこでは人魚姫が幸せいっぱいに泳いで そんな中、テティスがそれに気づいたのは、単なる偶然だった。 「 静かに眠っているはずのポセイドン、その気配がどうもおかしい。 さざめいて、さざめいて、収縮し 「 どっかんと爆発した。 「何だ!?」 「敵襲か!?」 海闘士達が慌てふためく中、こちらは何が起こったか気づいたらしい海将軍が集まってくる。 「テティス、どうした!」 「ポセイドン様が 「まさか、お目覚めになったか!?」 「いや、しかしジュリアン様は 「依代など必要ない。誰か、服を持て」 聞き慣れない声が、半分混乱している彼らの会話を中断した。 しかしその小宇宙だけで、誰の声なのかは一目瞭然だ。 「ポセイドン様!?」 脊髄反射で飛び出して行ったテティスから衣を受け取り、ポセイドンは無言でそれを纏う。 そして、開口一番。 「地上へ。聖域に向かうぞ」 慌てて引き止める海将軍達も何のその、ポセイドンは問答無用で進んでいく。 もちろん格の違う彼らが止められるわけもなく、できたことといえば 「伝令を飛ばしてくださって、ありがとうございました。おかげで大きな混乱もなく、叔父上をお迎えできました」 「いえ 恐縮しきりのソレントの前で、金色の髪の青年がと向かい合っていた。 深い海の瞳でじっと見つめられ、がこてりと首を傾げる。 内心で「美人さん!美人さん!でも男の人……!」と騒いでいるのは言うまでもない。 だがしかし、いつまでも無言でいられると不安になるもので。 「あの……ポセイドン様?ですよ、ね?」 「お前がハーデスの娘か」 おそるおそる尋ねたに、ポセイドンがぽつりと呟く。 会話は全く成立していないものの、ようやく声を聞けたは顔を輝かせた。 「はい!です!!」 「……そうか」 深く染み入るようなハーデスの声とは違い、ポセイドンのそれは柔らかく青年的だ。 ポセイドンというと巻き髭の親父しか思い浮かばないだが、巻き髭よりは美青年の方がいいのは言うまでもない。 にこにこと元気に返事をすると、ポセイドンは小さくうなずいてじっとを見た。 「ポセイドン様にお会いできて嬉しいです!この間お邪魔した時は、お休み中だったみたいで……」 「 「いえ!急にお邪魔した私がいけなかったんです」 慌ててかぶりを振ったは、皆さんに親切にしていただけて嬉しかったですとはにかむ。 沙織と話の終わったソレントにお辞儀をすると、微笑みながら手を振られた。 「お久し振りです!」 「元気そうだね」 「はい!今日はアイザックさんとかテティスさんとか、いらっしゃらないんですか?」 いそいそとポセイドンに席を勧めつつ首を傾げたは、ポセイドン神殿で待機していると聞くと眉を下げる。 会いたかったと呟く姿が本当に寂しそうで、思わずポセイドンの手が伸びた。 不器用に頭をなでられてきょとりとしたは、しかしすぐにくすぐったそうに微笑む。 人に触れ慣れていないその様子が、ハーデスを彷彿とさせた。 お父様に会いたいなあとぼんやり考えていた彼女に、ポセイドンがふと尋ねる。 「テティスが欲しいか?」 「え?会いたいなあとは思いますけど……」 「ならば、お前の話し相手として聖域に預けよう」 「え!」 思いもよらない提案に、つい変な声が出た。 そんなに簡単に言っていいのか、ポセイドン。 太っ腹すぎる。 だが、ポセイドン命のテティスにとっては、とんでもない提案なことだけは確かだ。 「いえ、大丈夫です。テティスさんはポセイドン様が大好きですもの、会いたければ私がお邪魔します」 そう笑ったに、ポセイドンも頬をゆるめる。 そしてとんでもないことを言い出した。 「では、この聖域の海と風の支配権をやろう」 「そんな大層なもの結構です……!」 「そうか……」 そんな、双子座のカストルとポルックスみたいなもの……!! ヒィ!と悲鳴をあげそうなに、ポセイドンは僅かに眉を下げる。 欲のない娘だという呟きを聞いてしまったが内心で突っ込んだ。 スケール大きすぎです、ポセイドン様。 「ならば 「え?別に、これといって……みんなが仲良く過ごせれば、それが一番かなあって」 「 小さく呟いたポセイドンは、それではと片手を差し出した。 「我らの友好の証に」 「……ブレスレット?」 深い海の色の宝石をはめこんだ、華奢で控えめなブレスレット。 どこからともなく取り出されたそれは、受け取ったの手の中でしゃらりと鳴った。 涼しげな音をたてるそれをじっと見ていたの頬がゆるむ。 「 「 ポセイドンのその言葉に、その場にいた全員がびしりと固まった。 まさか、そのためだけにわざわざここまで来たのか? しかも、物で釣ろうとした? その中でただ一人、別の意味で驚いていたが、そろりとポセイドンをうかがった。 「……お……お、じ様?」 こんな美青年にむかって「伯父さん」はないだろうと思いつつも、本人が言うならばと呼んでみる。 満足そうに微笑んだその表情を見て、複雑ながらもへらりと笑い返した。 「そういえば、今日はどうなさったんですか?」 何の気なしにがそう尋ねた瞬間、ポセイドンの表情が一気に強張る。 何かまずいことでも言ったかと焦るに、ポセイドンはため息を一つ落として低く告げた。 「158、633.7」 「……?」 「何だかわかるか?」 「いえ……」 まさか身長だろうかと思いながら首を傾げたに、衝撃の一言。 「ハーデスが私の夢の中にまで侵入して押しつけた手紙の数だ。158巻、633.7メートル」 「…………」 「あやつめ、口下手だからと言って言いたいことを全て長々と書きよって!おかげで安眠もできん」 娘がどうの、娘がああだの、娘がこうだったの、娘が娘が娘が娘が娘が以下略。 毎日毎日映像まで見せつけられては、可愛い姪を見に来ないわけには行くまい? 「だが 微笑んだポセイドンに頭をなでられても、は反応も返せない。 可愛い、に微妙なアクセントがついていた気もしたが、それどころではなかった。 見ず知らずの相手に、まさか自分のことを話しまくっていたとは! 「 悲鳴のような絶叫が冥界に届くことは ちなみに後日、「絶叫したかったのは俺の方だよ!」とミロに文句を言われたとか何とか。 (あんな奴にアテナは殺されかけたんだぞ!?) (アテナのみならず、危うく地上まで水没しそうになったんだろうが!) (どっちでもいいだろ、そんなの!それがアレかよ!?) (ハーデスといいポセイドンといい、何であんなにキャラが違うんだよ!) (知るか!) ----------------------------------- 水月楓さんのリクエスト、「ヒロイン自慢をするハーデス様、それを聞いてヒロインに伯父さんと呼ばせようと四苦八苦するポセイドン」のお話。 何だか色々リクエストに添えていない気がします…(パタリ) 本当はハーデス様が何度も何度も何度もポセイドンの夢の中にお邪魔するシーンがあったり、 ポセイドンがヒロインにお菓子とかぬいぐるみとかあげまくったり、 体力切れでジュリアンの身体に入ったり、 その状態でヒロインに「伯父様と呼んでくれ」とか迫ったり、 まあ色んなネタがあったんですが、ありすぎて全部削る結果に。 ウッカリ連載になるところでした。 危なかった。 お持ち帰りは水月楓さんのみとさせていただきます。 リクエストありがとうございました! |