「お茶会を開きましょう」
「は?」


いきなり突然の沙織さんの言葉に、思わず失礼な声が出てしまった。

しかも今、いきなりと突然が重なった。
重複言語は正しくない、いけないいけない。
でもまあ、それくらい動揺したということで。


「いきなりどうしたんですか、沙織さん」
「アフロディーテ達とばかり、毎日毎日ずるいわ!私ともたまにはお茶をしてくださいな」
「はあ、それはいいんですけど……」
「そうだ、この際いろんな方を呼んでしまいましょうね」
「…………やっぱりそうなるんですね、沙織さん……!!」


沙織さんのことだ、何かぶっ飛んだことを言い出すに違いないと思っていたら、予想通りにとんでもないことを言い出した。
お父様にお母様、伯父様にお祖母様。
次々とあげられていく名前に、くらりと目まいが起きる。

それって、いろんな意味で大丈夫なんだろうか。
話に聞いた限りでは、お父様とも伯父様ともどんぱちやってた気がするんだけれど……。

そう思う間にも、沙織さんは着々と構想を練っていく。
そして、あれこれと皆さんに指示を出して。




「……結局、こうなるんですよね……」




3日後には立派なお茶会の場ができあがっていました。

ただ一つ違うのは、伯父様が全くの別人になっていること。
この間お会いした時よりも、さらに若くなっている気がする。

両側をお父様とお母様に挟まれつつ、内心で首を傾げていると、沙織さんがその答えをくれた。


「今日はジュリアンの器でいらしたんですね。さんが驚くでしょうに」
「私が直接動くのは、あまり好ましくない。というか、本音を言えばまだ眠っていたい。少しでも負担を減らすための措置だ、許せ」


なんか今、ものすごい本音が出た。
伯父様、もしや超ものぐさキャラ……?


「アテナや、ゼウスの奴は呼ばんでもいいのかえ?」
「あんな好色のどぐされ者を呼んだら、さんが危険すぎます」
「それもそうじゃの」
「その代わりといっては何ですが、アルテミスにも声をかけたのですが……伯父様方がいらっしゃると聞いた途端に『そんな男むさいところに行けるものですか!』と断られてしまいました」


沙織さんが残念そうにため息をつくけれど、今の会話に突っ込みどころが多すぎて、どこから突っ込んでいいのかわからない。


ああ、でも、アルテミス様にはお会いしてみたかった……!
絶対に美人さんだもの、あの方。
アポロンの双子だし、アポロンは超絶美青年だし!


そんなことを思いながらお父様を見ると、うっすら顔色が悪かった。


……そうでしたね。
お母様を攫いに行った時、アテナと一緒にフルボッコにされましたもんね……。


内心心底安堵しているであろうお父様が気の毒になって、そっとすり寄ってみる。
途端にお父様の空気が和らいで、大きな手でゆっくりと髪を梳かれた。
気持ち良さに目を細めると、向かい側のお祖母様がころころと笑う。


「ほんに、妾の孫は愛らしいのう」
「ええ、本当に」


お母様の白い手がするりと頬をなでて、思わず赤くなってしまった。
そんな私にまたお祖母様達が笑って、端から見たらきっとほのぼのした風景なんだろう。
美人さんに囲まれて、もういっぱいいっぱいの私を除いて。


ちょうど通りかかったアフロディーテさんに「助けて!」と視線を送ってみたけれど、少し考えるような素振りをした後に、笑顔で手を振り返されてしまった……!


「アテナ、僣越ながら私の薔薇茶をお持ちしましょうか?」
「まあ、あなたの作る薔薇茶はとても香り高くておいしいもの、是非いただきたいわ」
「ほう、ペルセフォネーがそこまで褒めるのか……私も飲んでみたいな」


伯父様(と呼ぶには最早若すぎるけれと)もうなずいて、それではとアフロディーテさんがいったんその場から去る。
次に現れた時には、何故かサガさんまで増えていた。


「……ご歓談中申し訳ありません、アテナ。どうしても、こちらの書類にサインを   


何故だか力を振り絞るようにして沙織さんに一枚の紙を差し出したサガさんに微笑み、沙織さんがさらりとペンを滑らせる。
その間私が何をされていたかというと。


「……あの、伯父様?」
「……やはり、海界にもほしいな」
「駄目ですよ、ポセイドン。は私達の可愛い娘なんですから」


これまた何故か、背後から伯父様(の依代になっているジュリアンさんという人)にぎゅぎゅっと抱きしめられていた。
ついでに何度も頭をなでられて、もう愛玩動物の領域じゃあるまいか。

そんな伯父様を密かにお父様が払いのけようとして、その度にたくみに振り払われている。


本当なら一番上のお兄さんだったはずなのに、お父様ったら一番立場が弱いんですね……。
生まれ直したからって三男になるのもどうかと思うけど、一番下って切ないですね……。


アフロディーテさんが鮮やかな手つきで皆さんに薔薇茶をサーブし、ふるふると何かに耐えるように震えているサガさんを引きずってその場を後にする。
いつも通りの味はやっぱりおいしくて、ようやく自由になった身体で(伯父様は紅茶を飲むために自分の席にお戻りになった)お母様に笑いかけた。


「お母様がおいしいって言ってくださって、嬉しいです。この薔薇、私がお世話してるんですよ」
「まあ、そうなの?知らなかったわ」


そこからまたべた褒めされて、なで回されて……言わなきゃよかったというほどの構われっぷりでした。
こんなに緊張するお茶会、もう嫌!!











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朔良さんのリクエストで、「聖域、冥界、海界の神々とお茶会をする話」でした。
ついでにウッカリ、デメテル様まで出てきてますが、そこはまあご愛敬ということで(笑)


美人さんに囲まれて心臓が破裂しそうなヒロインと、それに気づかない神様達(沙織除く)
哀れヒロイン、頑張れ心臓!
この後アフロに癒されますが、やっぱりアフロも美人さんなのであんまり効果はなかったり。
どうしてこう、美形キャラばっかりなんでしょうかねぇ…(お前が言うな)


お持ち帰りは朔良さんのみとなります。
リクエストありがとうございました!