「ジングルベール、ジングルベール、すっずーがーなるー」


ささやかながら蝋燭を灯して、ひいらぎの葉っぱをドアに飾って。
月桂樹の葉で編んだリース(え?何か違うって?)(でもそんなの気にしない!)をチェストの上にちょんと置いて、我ながら綺麗な出来に満足する。
クリスマスリースって、綺麗に編むのがなかなか難しかった……。


「うん、いい出来」
「……何をしているんだ、お前は!」


うんうんとうなずいていたら、いつの間にかきていたサガさんにべしりと頭をはたかれる。


いた、痛い……!
私が一般人だってこと忘れてないですか、サガさん!!


「何って……クリスマスの準備ですよ。ほら、あと1月ぐらいで25日ですし」


綺麗に光るイルミネーションにアドベントカレンダー、そしてアドベントリース。

特に、1週間ごとに蝋燭が灯されていくアドベントリースは、中学時代から大好きなものだ。
ここではそんなことはできなかったけれど(私にはあれを作る技術がない)、せめてクリスマス気分を味わいたいと思うのは、この時期になれば当然のことじゃないだろうか。
そう思いながら首を傾げて見上げると、サガさんがものすごく頭の痛そうな表情をした。


「……いいか?ここはアテナの聖域だ。他の宗教の祭典など、言語道断   
「……駄目なんですか……」


そう言われてみれば、ものすごく当たり前のような気がする。

沙織さんはギリシャ神話の神様なんだし、他の宗教の神様をお祝いされたら、いい気はしないだろう。
考えなしだった自分に反省しつつ、作ったばかりのリースを外そうと手をかける。

と、そこへまたまた声がかかった。


「いいじゃありませんか、サガ。さんも、せっかく作ったのですから、そのまま飾っていてくださいな」


いつの間にやらやってきた沙織さんが、にこにこしながらうなずいている。


「……いいんですか?」
「もちろん」


パーティーもしましょうかとのんびり言った彼女のその一言で、聖域中が大騒ぎになることも知らずに。












「なあ、クリスマスだろ!?今年はクリスマスやるんだろ!?」


ミロさんが飛びこんでくるのと同時に、その後ろから入ってきたカノンさんがミロさんの後頭部を殴る。


「はしゃぎすぎだ、馬鹿」
「ってえ!」
「ったく……、ほら」


悶絶したミロさんを一瞥して、カノンさんが緑の輪をこちらに放った。
慌てて受け止めて見てみて、思わず声をあげてしまう。


「え   え!?」


樅の木の枝で作られた、とても大きなアドベントリース。
ちゃんと蝋燭を立てるお皿もついている。


「あの、あの、これ   
「サガが作ってたぞ。俺からはこれな」


サガさんが作ったんですか!?
確かに手先は超器用だけど、これまで作れるんですか!?

カノンさんからリース用の大きな赤と白の蝋燭を4本もらいながら、せっせとリースを編むサガさんを想像してしまった。
も……申し訳ないけれど、ものすごくおもしろい構図だ……!



「……ありがとうございますって、伝えていただけますか?」


どんなにおもしろくとも、執務でへろへろのサガさんが睡眠時間を削って作ってくれたのは確かだ。
両手に抱えるのもつらいほどの大きさのそれをそっと持ちながらカノンさんを見上げると、もちろんだというようにうなずいてくれた。

それにしても……大きい。


「どこに飾ろう……」


やっぱり天井から吊り下げたいのだけれど、あいにくとここにはそんなホールのようなものはない。

そもそも、天井から下げる方が珍しいのかも。
ヨーロッパの教会でも、ミサの時に祭壇の上に台に乗せていた気がする。


「居間にでも飾ればいいだろ。あそこなら十分広い」
「はあ……アフロディーテさんがいいって言ってくださったら、そうしてみます」


赤い蝋燭を2本、白い蝋燭を2本。
交互に立てながら曖昧にうなずくと、ミロさんがひょいとリースを持ち上げてしまった。


「アフロディーテなら大丈夫だろ!行こうぜ、
「え、あ   
「早く火をつけてくれよ」


子供のようにきらきらとした目で笑うミロさんは、初めてらしいクリスマスが本当に楽しみのようだ。
怒られてもまあいいかという気分になって、駆け足でその後を追った。












日曜日がくる度に、蝋燭の火が一つずつ増えていく。


短くなっていく蝋燭が嬉しくて何度も見ていると、その度にアフロディーテさんやムウさんに笑われた。
皆さんへのプレゼントを準備しつつ、もうすぐ訪れるクリスマスを待ち望む。
こちらではあまり雪が降らないらしく、あいにくホワイトクリスマスにはなりそうにもないけれど。


「ふふふ、実は私もクリスマスをしてみたかったんです」


こっそりと教えてくれた沙織さんと笑いあって、パーティー会場と化した教皇の間の扉を開いた。
シャンパンやワインが盛大に振る舞われる中、初めて見る七面鳥に感激しつつもぐもぐと食べる。

何故か皆さんが私の分の食事を取り分けてくれるので、壮絶な食料争いには参戦しなくて済んだ。
……いや、あれは本当に無理ですって。

食べて飲んですっかり満足した頃、沙織さんが両手を打ち合わせて注意を引く。


「皆、プレゼントは用意してきましたか?」


そう、お待ちかねのプレゼント交換!
   の、はずなんだけれど……。


「あの、皆さん、どうしてこっちにだけ来るんですか?」


手に手にプレゼントを持った皆さんが、一気にこちらに近づいてくる。


「クリスマスはプレゼントを渡すものだろう?」
「それはそうですけど……どうして私だけ?」


首を傾げながらアフロディーテさんを見上げても、気にするなと微笑まれるばかり。
オルゴールやネックレスやスカートやルームシューズやらを山ともらって、嬉しいけれど少し戸惑ってしまう。


、私達には?」


ムウさんに柔らかく訊かれて、渡していいものかと迷った。
こんなに高価な物をもらっておきながら、お返しがこれでいいんだろうか。


「……ほんの気持ちですけど……」


市販の小さなボックスを、間違えないように気をつけながら配る。
受け取った瞬間にリボンを解いて開けてしまったミロさんが、目を見開いて声をあげた。


「すげえ!蠍だ!」
「可愛らしい羊ですね」


ちまちまと丁寧に刺繍をした、麻製のコースター。
麻は市販のものだし、皆さんのプレゼントに比べたら安すぎて恥ずかしい……。
そんなに細かい刺繍もできないから、ころころと思いっきりデフォルメしてあるし……男性には似合わないかもしれない。

ちなみに、沙織さんには天使の柄を贈ってみました。


内心びくびくしながら皆さんの反応をうかがっていると、どうやら無事に気に入ってもらえたようだ。
うまいうまいと褒められて、大事にするよと言ってもらえた(一部除く)


お父様とお母様も、喜んでくださってるといいな。
夫婦水入らずで過ごしているだろう2人を思い浮かべて、そっと笑った。












(年末年始は忙しくて(死亡事故が多くて)ヒロインを呼べるほどの余裕がなかったハーデス様。ハーデス様には黒い馬、ペルセフォネーにはお花の刺繍を差し上げました。ケルベロスは難しすぎてデフォルメすら出来なかった模様)