「人使いが荒いんだから、教皇ったら……あ、ここかな?今回の任務場所」


ぶつくさと呟きながら足を止めたのは、金色の鎧に身を包んだ女性。
きりりとした表情を今ばかりは少々げんなりとさせ、「任務」のポイントを探るべく意識を集中させる。


   見つけた」


誰にともなく呟き、その手に巨大な炎を生み出し   




   え?」




ぐい、と「何か」に炎を引きずられた。
必然的に、彼女自身も引きずられる。


「ちょっと、待ちなさ   


必死に抗おうとするが、その抵抗も空しく、彼女は「何か」の中に引きずりこまれた。
そうして、後には何も残らなかった。












   そして、いつの間にか聖域に戻る、と」


誰ともなしに呟いたは、ひとまず教皇に任務の状況を報告しようと階段を上り始める。
始めて、すぐに違和感に気づいた。


「この場所……私の宮ではない?」


自分の守護する宮に戻されたのかと思ったが、そこここの印象が微妙に違う。
そして何より、何者かの小宇宙が近づいてくる。
密やかに右手を構えながらその場で待機していた彼女は、見えた人影に小さく目を見開いた。


「……何者だ」
   それはこちらのセリフ。ここは私の宮よ、それに……その聖衣は?」


己と全く同じ聖衣に身を包んだ、見覚えのない男が現れたのだから。


「……」
「…………」
「………………」
「……………………こうしていても仕方がない、アテナにお伺いするか」
   アテナがいらっしゃるの!?」


無言のにらみ合いの末にシュラが言ったその一言、それに彼女の声音が一瞬変わった。


歓喜。
その一色に染め上げられた声音に、シュラは毒気を抜かれてため息をついた。


「……お前は、誰だ」
「山羊座の。アテナにお仕えする、黄金聖闘士」


今はアテナはいらっしゃらないけれどと呟く彼女を連れて、シュラは教皇庁へと続く階段へ足を運んだ。


   それでは、任務中にこのような事態に?」
「はい。私の能力で、時空の歪みをねじ伏せて来いとの教皇の任務でございました」


沙織に面会したはというと、「これがアテナの小宇宙……!」と感激し、涙を浮かべて床に額づきと(一部)大変な騒ぎになった。
彼女にしてみれば、始めてのアテナとの対面だ。
感激するのも興奮するのも無理はなかったのだが。


「あなたのいた世界に、アテナはいなかったのですか?」
「以前アテナがおわしたのは、およそ100年ほど昔と聞き及んでおります。現在黄金の地位にあるのは、私の他には蠍座と乙女座のみ」
「まあ……時代が違うわけでもないのに、所変われば随分と様変わりするのですね」
「恐れながら、そのようにございます」
   時に、お前。仮面はどうした?」


出会った瞬間から気になっていたことを、ついにシュラが口にした。
の素顔は、聖闘士だというのにさらされたままだったのだ。

それに対し、は呆れたように片眉を上げる。


「私の世界では、300年前から仮面なんて廃止されているの。女が聖闘士になってはならないなんてナンセンスだし、当時のアテナが目を見て話せないのを非常に嫌うお方だったらしくて」


大体、男と一緒に食事もするのに、どうやって仮面をつけたまま生活しろというの?
……指摘されれば、おっしゃる通りで。


「……私も、女性聖闘士の仮面廃止を提唱しようかしら」


かなり本気の目で沙織が呟いたが、それはそれ。
で。




「また時空の歪みが現れるまで磨羯宮で待機というのは納得できるけれど……どうして御前試合?」
「アテナは娯楽に飢えていてな……世界最大のグラート財団の総帥でもいらっしゃる、多忙なのだ」
「まあ、いいけれど……アテナの気をお慰めできるならば」




何故かカミュと御前試合をする羽目になったが、シュラの言葉にため息をつきながら軽く右腕を振るう。
それだけで腕全体を炎が包み込み、シュラは事前に知っていながらも目を見開いた。


「水瓶座は冷気を扱うのでしょう?それならば   こちらも、本気でお相手せねば」


そう言って微笑んだ彼女は凄絶に美しくて、シュラは思わず息を飲んだ。
紅と蒼が、闘技場を華やかに染め上げる。
誰もが彼女の技に魅了され、その小宇宙の強大さに畏怖した。


「なかなかやるな」
「そちらこそ」


涼やかな会話とは正反対に、繰り出される技はどれも大きなものばかりだ。
このままでは分がないと判断したカミュが最終奥義を出そうとしたその時。




   そこまで!」




凛とした沙織の声が、御前試合の終了を宣言した。


「見事でした、カミュ、。楽しませていただきましたよ」
「恐れ多い御言葉」
「ありがとうございます、アテナ」


深々と頭を垂れる2人に微笑み、沙織はシュラに視線を向けた。


「シュラ、彼女を磨羯宮に。ずいぶん長いこと戦いましたし、疲れているでしょう」
   は」


小さく首肯し、シュラは闘技場で息を整えているに近づいた。


「行くぞ」
「アテナは   
「存分にお楽しみだった。お前を休ませろとのことだ」
「そう」


よかった、と小さく息を吐くその様子で、彼女が安堵したのだと知る。

   とかくこの女は、感情を読み取りづらい。

こっそりとため息をつきながら、シュラは彼女の腕を引いて自宮へと戻るのだった。


「シャワーでも浴びるか?」
「そうするわ。結構汗かいたし」
「そうか。替えの服は用意させておく」


そうして、踵を返すこと数歩。




   え?」




小さくもれた、その声に振り向いて。


   は?」


間抜けな声をあげた。


!?」


黒々とした空間に、呑みこまれんとしている
対するも小宇宙全開で応戦してはいるが、いかんせん抗い切れていないようだ。


「待っていろ、今   
「来ては駄目!!これは多分、私の世界に通じるものだから」


格好よく助けようとしたシュラはしかし、常の彼女とは思えないような激しい声を叩きつけられて困惑した。


「何故、そう言い切れる?」
「これが、あの時逃した歪みと同じ気配を発しているから。   ねえ、シュラ」


打って変わって穏やかな声になったが、微笑んでシュラを見る。




「アテナにまみえることができて、本当に嬉しかったわ。けれど、あなたにはそれ以上に感謝してる」




ありがとう、わが同朋よ。
二度とまみえることなくとも、わが半身よ。


そうささやくのと同時に、彼女は黒に呑みこまれて消えた。


それからしばらく、どことなくシュラの元気がなかったとか。
それを元気づけようとした某蟹座が余計なことを言って、聖剣をぶち当てられていたとか。











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「平行世界からやってきた発火能力持ちの山羊座黄金聖闘士ヒロインが、アテナの暇つぶしで何か色々するほのぼのギャグな話」でした。
御前試合は入れられましたが、ねるとんパーティーは入れられませんでした…。
というより、つい最近までねるとんパーティーとは何ぞやを知りませんでした。ガッデム!


色々と細かい指定をして下さっていたのですが、それを生かしきれていない雰囲気がババンバン。
しかも、ギャグじゃないし!
ギャグ書けないし!!
頭を抱えてひねりながら書いたら、こんなものになりました…。
本当に申し訳ありません…。

お持ち帰りはリクエストをして下さった方のみとなります。
リクエストありがとうございました!