今日も今日とて、魔女の快進撃はとまらないのです。(しれっ)
とめてください、頼みますから……!









うつくしき









もはやこの状況が当たり前になってから、一体どれぐらい経つのだろうか。

至極当然のように部室になじんでいるを見ながら、柳生はこっそりとこめかみを揉みほぐした。
そんなことをしても頭痛が収まるはずもないのは承知済みだが、それでも気分的なものだ。


「……さん」
「んー?」


テレビ画面から目を離さずに、あからさまに生返事を返すに対し、柳生はどこまでもジェントルマンだった。



「PS2、貸して差し上げますから。いい加減帰ったらどうですか?」



……いや、微妙にジェントルではなかった。



「やだよ、うちにもうこれ以上ゲーム機置く場所ないし」
「一体何を持ってるんですか」


正直に言うと、どうしてそんなものにつぎ込む金だけはたんまり持っているんだと小一時間問いつめたい気分だったが、それをこらえて違うことを訊く。


「えー?PSにPSXにXボックスにドリキャスにDSにPSPに……あと何があったっけ?あ、そうそう。今度PS3を買う予定」



……いくら何でも買いすぎだと思ってしまった柳生は、間違ってはいないだろう。



「それに、ソフトも結構あるからねー。この間ちょっと整理して売ったけど、まだ50本近くあるんじゃないかな?」




ありすぎだ。




瞬時にそう突っ込みたくなった柳生は、しかしジェントルマンらしくぐぐっとこらえた。


「よくそんなに置く場所がありますね」
「うん、弟の部屋も使ってるし」


つまり、入りきらない分は全て弟の部屋に放り込んでいると。

からからと笑うに恐ろしいものを感じながら、脇からブン太が口を挟んだ。


「なあなあ、そん中にエクステーゼある?」



エクステーゼ?



柳生には全く理解不能の単語だったが、それだけでにはわかったようだった。


「サモンの?あるよ、貸そうか?」
「マジで!?よっしゃ、今更買うのも嫌だったんだよなあ」



……もはや、柳生には理解不能の会話である。
しかし、その後のブン太の言葉だけははっきりと理解できた。




「でもさ、。家にPSXあるんなら普通にゲームできるよな」




……ゲ ー ム で き る ん で す か !?




できるならおとなしく家に帰ってやってくださいよ、傍迷惑な!

柳生の心の叫びなど露知らず、は眉根を寄せて小さくうなった。


「うーん、そうなんだけどさ……私のお金で買ったくせに、お母さんが韓流にはまっちゃって。PSX占領してDVD見まくってるんだよねぇ」


だから、今は家じゃ全然できないの。




娘が娘なら親も親だ。




そんな考えが頭をよぎった柳生だったが、もうそれ以上は何も言わないことにした。
その代わり、そっと席を立って部室を出る。

それにも気づかずコントローラーを握り続けていたが、不意に絶叫をあげた。


『わたくしのうつくしき   




「ギャー!!朴さーん!!」
うおっ!?何だよ、驚かせるなよ!」



びっくぅ!と飛び上がったブン太が心臓ばっくばくで文句を言うが、そんなことなどにとっては知ったこっちゃない。


「だってブン太、朴さんだよ!?エドがこんなこと言っちゃってるんだよ!?」
「スクエニかよ!」


もはや本人たちにしか理解できない会話を続けていた二人の背後に、ひたひたと忍び寄る黒い影。




「貴様ら…………」




地の底を這うような声に、二人そろってようやく危機を悟る。


「ブンちゃん……」
……」


ひっそりとささやきあって、視線を交わし合う。


「うん、やっぱりそう思う?」
「おう」


真剣な表情でうなずきあった二人は、近くにいたジャッカルを手招きした。
ちょいちょい。



「どうした?」



二人の背後が恐ろしすぎて近寄りたくないのが本音なのに、呼ばれたから近づいてしまったジャッカルは、やっぱりいい奴だった。


「あのね」


にっこり笑ったは、背後がまるで見えていないようだ。




「そりゃっ!」




いや、やはり見えていた。


奇妙なかけ声と同時にジャッカルを力の限り突き飛ばし、背後の真田にぶち当てる。


「うぎゃあ!」
「ぬっ!?」


哀れな悲鳴を上げたジャッカルと時代錯誤な声を上げた真田を尻目に、ブン太が神業級のスピードでPS2を片づけた。
ちゃっかりソフトを取り出していたも一緒に、もつれて倒れ込んだ真田たちの横を走り抜ける。


「ちくしょう、何で真田が来るのさ!?」
「知らねえよ、だってあいつ今日も幸村のお見舞いだって   あ!柳生の奴、途中から抜けてやがった!」


「奴か……!じぇんとるだと思ってたのに!!


憎々しげな声と共に、隣からギリギリギリと歯ぎしりをする音が聞こえたが、賢明にもブン太は何も聞こえない振りをした。




「だから言ったでしょう、早く家に帰りなさいと」




進行方向斜め前から呆れたような声がかけられた瞬間、はくわっ!と鬼のような形相に変化する。




「おのれ、柳生……!」
、それ一歩間違えたら佐々木小次郎だから」
「うっさいブン太!」



余計なことを口出ししたブン太をぎろりと睨み、は柳生をびしりと指さした(マナー違反)


「よくも真田を召喚してくれたね!」
「何のことですか?」
「しらばっくれるでない!」


怒り心頭のに呆れた息をついて、柳生がぐさりと一言。


「テニス部でもない、まして男ですらないあなたが、部室に入り浸るのは少々どころかかなり問題ですよ」


だがしかし、そんなことではがひるむはずもなかった。




「何よ今更!あんたらの裸なんざ、見たってちっとも欲情せんわ!




逆にぐっさりお見舞いして、は憤懣やるせないといった様子でずかずかと歩いていく。
後に残された二人はしばらくその様子を見送った後、ぽつりと呟いた。


「さっすが、言うスケールが違ぇや……」


「……はしたない……!」


柳生の苦悩の叫びがに届く日はくるのやら。