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昼休みのひととき。 誰にも見つかってはいけない、秘密の逢瀬。 ラブ・アフェア 最近は昼休みになると、こっそり教室を抜け出すのが日課になってしまっている。 足音を忍ばせて専門棟に行って、馬鹿みたいに広い庭の一角に潜り込んだ。 「おまたせ」 「遅せぇぞ」 にやりと笑った亮の頭を軽くはたいて、笑顔の鳳君と一見仏頂面の日吉にも謝る。 「大丈夫だよ、まだ始まったばっかだし」 「それにお前、今日日直だっただろ」 同じクラスの日吉にまで気を遣われて、無意味に無性に悔しくなった。 「日直の仕事なんて、死ぬ気でやればすぐに終わったのに……!」 「だから手伝うかって言っただろ」 「あれくらい一人で持てるよ」 世界史の教師の阿呆! 何でよりにもよって、遠い方の社研に持って行かせるんだ……! 細々した備品を持って行くはめになったのを思い出して歯ぎしりをしていると、日吉が呆れたように肩をすくめた。 亮もちょっと呆れ顔だ。 「お前なあ、妙に意地張ってどうすんだよ」 「意地は張ってないよ。ただ、自分でできるのに人の力を頼ろうとするのが嫌なだけ」 自分だけでもできるのに、すぐに誰かに助けてもらおうとする人間が、私は一番嫌いだから。 「お前怪力だもんな」 「何か言った?亮君。いくら幼馴染みでも許さないよ?」 くひひと笑った亮に輝かんばかりの笑顔と同時に殴りかかると、案の定素速く避けられた(あとちょっとだったのに……!) 「ちょっと、避けないでよ」 「避けないわけないだろ」 「宍戸さんもも、何やってるんだ」 そのまま軽く喧嘩に突入しそう(に見える)私達に、日吉が呆れながら突っ込む。 最近の日吉は少しだけ丸くなったようだ。 以前みたいに、言葉が攻撃的じゃない時が出てきた。 そんな日吉の変化は(人間として)よかったと思う。 けれど、いつもみんなに優しい日吉なんて気持ち悪いことこの上ないから、このくらいでちょうどいいのかもとこっそり考えた。 4人で円、というよりも四角になりながらお弁当を広げると、やっぱり男女の差を思い知らされる。 ……みんな、ものすごい量だ。 「いつも思うんだけど、テニス部ってみんなそんなに食べるの?」 軽く私の2倍はありそうなお弁当箱に、いっそ感服する。 私も少食ではない方のはずなんだけど……。 何故か隣になっていた(鳳君がいそいそと亮の方につめた)日吉に訊くと、あっさりとうなずかれた。 「真面目に練習をすれば、どの運動系でもこれぐらいは食べるだろ」 「……燃費いいんだね」 うらやましい。 切実に。 ぎっしりとおかずの詰まった日吉のお弁当をまじまじと見ていると、おもむろに小さく差し出された。 「 「何か食いたいんだろ?」 違うわ阿呆!! 叫びたくなるのをぐぐっとこらえて、ついでだから何かを頂戴しようと中身を物色する。 あ、だし巻き卵、おいしそう。 「これ、もらうね」 「ああ」 一切れもらって食べると、ふわりと上品な味が口の中に広がった。 「うわ、おいしい!」 こんな上品でおいしい卵、初めて食べた! 「そんなにうまいのか?」 不思議そうに首を傾げた亮に、無言で箸を差し出す。 「お、サンキュ」 ぱくりとだし巻き卵を食べた亮も、確かにおいしいとうなずいた。 そうだろうそうだろうとうなずき返して、両脇からの視線が痛いことに気づく。 どうしたんだろうと左を見てみると、こぼれそうなほど目を見開いた鳳君。 日吉はどうしたと右を見れば、こちらも耳を微かに赤くして軽く目を見開いていた。 「……」 「え、何?」 苦々しげに日吉に呼ばれ、もしかしてもらったものを無許可で亮にも分けたのがまずかったんだろうかと内心焦る。 慌てて右を向くと、鳳君と無言でアイコンタクトをした日吉にため息をつかれた。 鳳君も微妙な笑顔だ。 「まったく……どうしてあなた達はそう、妙なところで非常識なんですか」 「日吉、宍戸さんには俺が言うから……」 「わかった」 くどくどとお説教モードに入りかけた日吉に鳳君が声をかけ、亮だけを引っ張って少し離れたところに行く。 ……え? これってもしかして、私一人だけ日吉にお説教っていうシチュエーション? ちょっと、冗談じゃないわよ!(どうせなら亮も一緒に怒られろ!) 思わずぎりりと亮を睨むと、その亮は鳳君に何やら言われて頭をかいていた。 それだけで鳳君は苦笑して許してくれたみたいで、余計に亮に殺意を覚える。 「おい、」 「え?あ、はい」 妙に鋭い視線で日吉に呼ばれ、思わず背筋を正して返事をする。 そんな私にため息を一つ落とすと、日吉は噛みしめるようにゆっくりと口を開いた。 「お前な、ああいうことをどこでも軽々しくやるなよ」 「……どんなこと?」 いくら考えても思いつかずに首を傾げると、日吉の眉間にさらに皺が寄る。 「……宍戸さんに……」 「亮に? 普通すぎて気づいていなかったけれど、そういえばあれはいわゆる「あーん」なるものに分類されるのか! 「あー……亮とはもう、半分兄弟みたいなものだからね。小さい頃からやってたから、全然そんな意識なかったよ。ごめん」 見苦しいものをお見せしました。 そういえば、単なる幼馴染みでああいうことをやるのって、やっぱりおかしいんだろうなあ。 これからは気をつけようと気を引きしめながら頭を下げると、日吉も何故か我にかえったような顔をして、戸惑ったように目をそらす。 「いや……わかればそれでいいんだが……」 「うん、ほんとごめん」 もう一度頭を下げて、ところでとずっと気になっていたことを切り出した。 「さっきのだし巻き、どうやって作ってるの?できたら教えてもらいたいんだけど」 「ああ、じゃあ母さんにレシピを 「ああ、いいよいいよ。わざわざそんなことしてもらわなくても、実施で教えてもらえればいいし」 レシピを書くのも意外に面倒だし、何より直接教えてもらった方が身体で覚えられていい。 だから家に行ってもいい日を教えてくれと言おうとした瞬間、日吉が真っ赤になって怒鳴った。 「 「え?ええ!?」 「……どうするよ長太郎、の奴絶対意味わかってねえぞ」 「……もう、あそこまでいったら、しょうがないんじゃないですか?」 ----------------------------------------------------- 日吉夢企画「ジュ・テーム」に提出させていただいたもの。 実はお題を決定していただいてから、タイトルの意味を知ったなんて、口が裂けても言えない秘密です。秘密です(リピート) 本当は「情事」なんですけどねえ…。この子にそんな甘い雰囲気を期待する方が無理というもので(笑) あえて「アフェア」の方に強調を置いて、「彼らの日常の恋愛模様」をドン。 相変わらず漢前なヒロインです!(開き直り) |