さんざんひっかき回されて、さんざんひっかき回して。
お互い様、だよね?








赤い鼻のルドルフ








キヨはいつも損ばっかしてる。


黙ってれば結構いい男のくせに、女の子を見るとすぐに鼻の下伸ばすし。
女の子が大好きだから、軽い奴みたいに思われるし。

……や、実際軽い奴だけどさ、それでも大事な約束とかはちゃんと守る奴だ。
それを知ってる人が非常に少ないことからしても、普段のキヨの行動が知れる。


情けないよ、キヨ……!


今だって、ほら。


、聞いてよ!青学に超可愛い子がいてさ」
「あーはいはい、よかったねー」
「愛がこもってない!」


当たり前だ。
男同士ならともかく、どうして女の私がそんな話題に真剣にならなきゃいけないんだ。


は俺の友達っしょ!?だったらちゃんと俺の話聞いてよ」
「だからちゃんと聞いてるじゃん、青学に可愛い子がいるんでしょ?」


あまりにもうるさいから仕方なくそう言うと、キヨはぱっと顔を輝かせた。


「そう!ほんっと、さすが青学だよねー」
「どこをどうすればその結論に行き着くのかがよくわからないけど、私としては氷帝の方が美人は多いと思うよ」


うん、絶対氷帝の方が美人が多い。
金持ち学校だから、意地が悪いのも多いのが玉に傷だけど。

キヨもそれは知ってたらしく、勢い込んでうなずいた。


「そうそう、氷帝も可愛い子多いよね。でもさ、やっぱあの学校ってつんけんした子が多いんだよねえ……。それがちょっと」


ああ、キヨはこう見えて性格重視だからなあ。
そりゃ、氷帝は敬遠するか。


「中にはそうでもない子もいるけどね。私の友達にもあそこに通ってる子はいるし」
「マジで!?」


あ、やべ。


「紹介してよ、の友達なら可愛いでしょ?」


何だ、その理論は。


駄目。だけは駄目。キヨにだけは紹介できない」


は駄目だ。
キヨが死ぬ。


「何で?」


「……の家はね、私と友達なのが不思議なくらいお金持ちなわけですよ」
「うんうん」
「当然、大事にされてるわけですよ」
「うんうん」


本人はっちゃけてるけど。
絶対お嬢に見えないけど。




に言い寄る悪い虫には、もれなくお兄さまの制裁が下るわけですよ




あ、ちなみにお兄さんも美形だけど、剣道やってるから。
5段ね。


「……すいません、俺が悪かったです」
「わかればよろしい」


重々しくうなずいて、さて、と人差し指をたてる。


「キヨ。私のお願い、聞いてくれる?」
「うん、いいよ」


あっさりとした問いかけに、やっぱりキヨもあっさり答える。


「あのさ、最近どうもストーキングされてるっぽいんだよね……。何もしなくていいから、一緒に帰ってくれない?」


私としてはそんなに深刻な話じゃなかったのに、そう言った瞬間キヨの目が鋭くなった。




「……。それって、いつから?」
「え?ええと……2週間ぐらい前、かな?」




あんまり見ないキヨの表情にびっくりしながら答えると、ますますキヨの顔が怖くなる。


「何でもっと早く言わないんだよ!俺ってそんなに頼りない!?」
「ご、ごめ……」


うっわ、キヨが怖い。


「今日から一緒に帰る。部活は南ちゃんに言って何とかしてもらうし、お礼は一緒にナンパでいいよ」


最後のところだけ悪戯っぽく言うキヨがやっといつも通りに見えて、ほっと息をつく。


「それくらいならいつでも。ナンパするのはいいけど、程々にしときなよ?」
「アイアイサー」


ふざけて敬礼をするキヨの頭を軽くはたいて、小さくため息をついた。
……南も大変だなあ……。












キヨと一緒に帰るのは久しぶりだ。
前はよく一緒に帰ってたんだけど、1回それでつきあってるって勘違いされて大騒ぎになってからは、お互いうんざりしてやめていたから。


「久しぶりだよね、こうやって帰るのも」
「そうだねー、明日にはまた噂になってたりして」
「冗談きついって」


そんな風にふざけながらも、キヨの意識は背後に向けられている。


「……どう?」
「まだ微妙。だけど、多分の思ってる通りだと思うよ」


こっそりと話しながら、徐々に静かな住宅街へと。


「……それじゃ、ちょっと怖い思いするけど。絶対大丈夫だから」
「うん、よろしくね」


小さい声で言葉を交わし、自然に見えるように別れる。


静かな道に、二人分の足音。
キヨじゃない、知らない男の足音。

試しに足を止めてみると、ついてくるそれも立ち止まる。


「……」


やっぱり、つけられてる。
歩みが自然と早足になり、やがて駆け足になった。


キヨ、キヨ、早く!


今まではこんなに露骨に追いかけてこなかった。
どうして今日だけ?


キヨが大丈夫って言ってたから、それを信じてる。
でも、やっぱり怖いよ、キヨ!


「こいつ!」


背後でキヨの声がした。
同時に追いかけてきていた足音が途絶える。

ほっとして振り返ると、キヨが高校生ぐらいの男の人ともみ合ってた。




「キヨ……」




柄にもなく泣きそうになって、慌てて目元を拭う。

高校生がキヨに殴りかかったけど、そんなのキヨに効くはずない。
余裕でそれを避けたキヨのストレートが、相手の鳩尾に綺麗にきまった。


「さて、警察に突き出そっか」
「そだねー」


タオルで手足を固定しながら(よく考えると結構えげつない行為だ)のんびりとそう言いあって、携帯で警察に電話する。
程なくしてやってきた警官にもがいてるストーカーを引き渡せば、それで完了。


、手」
「え?あ」


自分では気づかなかったけど、よく見れば小さく震えていた。


……結構怖かったんだ、私。


じっと手を見てたら、キヨにぎゅっと握られた。


「もう平気だよ?」


人肌に触れて、ゆっくりと震えが収まるのがわかった。
そのまま歩きだしたキヨに引っ張られるようにして、私も歩き始める。


「また噂になっちゃうかもね」
「別にいいんじゃない?だって、そんなんじゃ俺たちの関係って変わらないでしょ?」
「そりゃそうだ」


くすくす笑いながら歩いた帰り道、久しぶりに寄ったマックはおいしかった。