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真っ白な衣装を纏った花嫁さんは、やっぱり女ならば憧れない人は少ないだろう。 さっきまで見ていた幸せそうな笑顔を思い出して、思わず顔がゆるんだ。 「、どうしたのー?」 「綺麗だったなあって。宍戸にお似合いの人だったね」 宍戸みたいに一本気な性格にぴったりの、優しそうな人。 大学でいい人見つけたじゃないか、宍戸。 「ししどは結婚遅そうだって思ってたけどねー」 「あ、それわかる。ずっと独身っぽかったかも」 膝に寝転がるジローの頭をなでながら、そういえば宍戸は結婚なんかしないって言ってた頃もあったなあと思い出した。 あれはいつだっけ、高3の頃だっけ。 あの頃はまだ、ジローと付き合うなんて夢にも思わなかった。 「でも、ジロー?本当にいつから私のこと知ってたの?」 私が宍戸を知ってるのはまだわかる、だって同じクラスになったことあるし。 何の因果かいつも実験のペアになってたから、そこそこ仲もよかった。 でも、いくら考えてもジローとの接点がないのよね……。 「んー、内緒ー」 「内緒にするほどのことじゃないでしょ」 「やだー」 社会人になってもこの幼さ、本当にジローはどこかに大人気というものをおっことしてきたのかもしれない。 ぎゅうと抱きついてきたジローを適当にあしらっていたら、大きな瞳が不意にまっすぐこちらを見つめてきた。 「ねえ、」 「どうしたの?」 「結婚しようか」 いきなり言われて、正直意味を把握するのに数秒かかった。 「 「いきなりじゃないよ、一応ずっと考えてたもん」 口をとがらせたジローの額を小突くと、ジローは痛そうに顔をしかめた。 「だって俺、のこと大好きだし。は俺と結婚するの、嫌?」 「……考えたことないからわからないよ」 戸惑いながらそう返すと、ジローはちょっと怒ったような顔で起き上がった。 「俺じゃ頼りないって思ってる?」 ……実は思ってる。 こうやって気楽に恋人やってる間はいいけれど、結婚するとなると話が変わってくるだろう。 子供っぽいジローに、家計と私と子供の人生を託すのは、ちょっとどころじゃなく不安だ。 そんな内心がわかったのか、ジローはさらに不機嫌な表情になった。 「俺、ずっと前からちゃんと結婚のこと考えてたのに」 「だって お互い社会に出て3年目、まだ自分の事で手一杯だ。 ジローの性格のことがなくても、踏み切るにはすごく勇気がいる。 「宍戸達は色々考えてこの時期に結婚したのかもしれないけど、私はまだ自分以外の人の生活まで支える自信がないよ」 「そんなの、いつになっても不安だって従兄が言ってた」 「それに、経済的な問題もあるし」 「俺、ちゃんと結婚資金ためてるよ?」 「……親が許してくれないって」 「去年それとなく訊いたら、よろしくって言われた」 ……逃げ道がなくなった。 どうしようと考えていたら、ジローが私の両手を握った。 「。俺、と付き合い始めてからずっと結婚したいって思ってたんだよ」 「ジロー」 「告白するまですっげー勇気いったし」 言った瞬間、ジローがしまったとでも言いたげな表情になった。 何ともベタにも、卒業式の日にいきなり告白してきたジロー。 あんまり熱心だったから思わずうなずいちゃったけれど、こんなに長い付き合いになるとは思いもしなかった。 「……いつから私のこと、知ってたの?」 もう一度訊いてみると、ジローは見る間に赤くなる。 「内緒!」 「内緒はなし」 ぴしゃりと切り捨てて、聞くまでは許さないぞと長期戦の構えをとる。 ジローはあーだのうーだの言っていたけど、そのうち諦めたように眉を下げた。 「 「高2?」 何の接点もない時だ。 どうやって知ったんだろう? 「、いっぺんししどの忘れ物持ってきたでしょ?」 「……そんなことあったっけ」 その時だとジローは言うけど、いくら記憶を掘り返してもそんな思い出は出てこない。 「文句言いながらでも、全然関係ないししどの忘れ物を届けてくれたに、一目惚れしたんだよ」 「ひとめ……」 思わず絶句。 卒業式に告白するのもベタだと思ったけど、まさか出会いまでベタだったとは。 「ししどにそれとなーくのこと訊いたり、廊下からこっそり見たりして」 「ジロー、それストーカー」 「愛の力!そんなに粘着質じゃないもん」 こっぱずかしいからやめて、その言い方。 「ってものすごく真面目だし、一回決めたことはやろうとするし、しっかり者だし、結婚とかしたら多分尻に敷かれるんだろうなあとか思ったけど」 のんびりとした表情でかなり適格なことを行ったジローは、それでもと柔らかく笑う。 「きっと仕事しながらでも家のことも頑張ろうとしてくれるだろうし、俺も家事するのは別に嫌じゃないから協力できるし、子育ても一緒にできたら楽しいだろうなあとか、の作ったお夕飯を家族みんなで囲めれば幸せだろうなあとか、そんな風に考えたんだ」 でもきっと、私の知るジローなら、一生懸命に本気で真剣に考えていたんだろうと思う。 「ねえ、やっぱり俺と結婚するの、嫌?」 ジローがそんな風にずっと真剣に考えていた間、私はどこかでこの恋愛の終わりを考えていた。 「今すぐに、は嫌」 そう言うと、ジローは目に見えてしゅんとなる。 だけど、そんなジローも、気がつけば確かにあの頃よりもずっと大人になっていた。 「もう少し社会人の生活に慣れて、私も結婚資金がたまって。そうしたら、式挙げよっか」 2人で働いて、一緒に子育てして、休みには家族で旅行して。 ジローが思い描くような将来を歩くのも、幸せかもしれない。 大喜びのジローに抱きしめられながらそんなことを思って、自然と口許がゆるんだ。 ----------------------------------- シオン様からのリクエスト、「ジロで未来の夢の話」でした。 あ、あれ?おかしいな、もっとほのぼのしてふわふわしたものになるはずだったんだけどな…!! ジロちゃんはどうしても子供っぽさがイメージにつきまとってしまうので、彼女は割とこんな風に結婚をためらうかなあ、みたいな思考回路が働いたものと思われます(他人事みたいに) でも結局最後には結婚しちゃう、みたいな。ほだされキャラです、この子。 ジロちゃんはのんきそうに見せかけつつ、実はみんなをよく見てくれてる子みたいなイメージがあります。 子供な分、みんなが大好きだからよく見ちゃう子。 練習をサボって寝てると烈火のごとく怒られますが、その他の時だと割と「仕方ないなあ」みたいな感じで許されちゃうといい。 シオン様のみお持ち帰り可となっております。 リクエストありがとうございました! |