さんと宍戸さんの出会い、どんなだったのかすごく気になるなあ」


きっかけは、鳳君のそんな一言だった。
亮と2人で顔を見合わせて、さてどうしようと考える。


「……どうだった?」


亮が首をひねった。

なるほど、こちらは覚えていないらしい。
私はものすごく鮮明に覚えていますがね。


「知りたい?」


試しに訊いてみると、鳳君がものすごい笑顔でうなずいた。
横の日吉もちょっぴり気になっているようだ。


やれやれとため息をついて、ある意味忘れられない思い出に思いを馳せた。












亮との出会いは忘れもしない、兄貴に連れられて真冬に外に連行された時の事だ。


「お兄ちゃん、さむい!」
「駄目だぞ、子供は風邪の子なんだぞ!!」
「かぜひくのが子供のしごとなの!?」


何て嫌な仕事なんだ!!


阿呆にも間違えて覚えてた兄貴にころっとだまされて、私も風邪の子=風邪を引く子とインプット。
それなら仕方がない、きちんとお仕事をこなそうじゃないか!


というわけで、兄貴と2人きりで珍しく雪が積もった道端で遊んでいたら。




「……あれ?誰だ?」




兄貴がぴたりと動きを止めて、道路脇によけられた雪山の陰を見た。
誰かいるなんて夢にも思わなかったから、思わずびくりと反応して兄貴の後ろに隠れる。


「だれ……?」


知らない人は怖い。
何を話したらいいのかわからないし、何を言われるかわからないし。


兄貴も私が人見知りだとわかっていたから、さりげなくかばいながら人影の方に進んで行く。
少し警戒しながら覗きこんだ兄貴は、そこにいた相手を見て目を丸くしたようだった。


「あれ?僕、お前見たことある」
「……お兄ちゃん?」


誰だと視線で問いかけた私に、兄貴はうんうんとうなる。


「あれー?誰だったっけ……?」


考えてもわからなかったらしく、素直に首を傾げて相手に問いかけた。


「僕、かずたか。お前は?」


その背中越しにそっと相手をうかがうと、私と同じ年頃の男の子だった。
つり目がちの大きな瞳が、警戒心もあらわにじっとこちらを見つめている。


「……ししど、亮」
「ししど?ししど   あっ!!」


思い出したらしい、兄貴がぱっと顔を輝かせた。


「お前、ししどのおばさんちの子かー!」
「……あ」


宍戸のおばさんは、しょっちゅううちに遊びにくる人のいいおばさんだ。
くる度に私達に飴をくれるから、その認識は強かった。


ー、ほら、あいさつ」


知り合いの家の子だとわかった兄貴は、にこにこと笑いながら遠慮なく私を押し出してくださりやがった。

だから、人見知りの妹をもっと気遣えよ!
内心で盛大に兄貴に文句を言いながら、目の前に立っている見知らぬ男の子を見た。


口の中がからからに乾く。
何を言ったらいいのかわからなくなって、身を翻して兄貴の後ろに駆けこんだ。


ー?」


どうしたと呼ばれて、兄貴の服を握る手に力がこもる。
それで何となくわかってくれた兄貴が、笑って私の背中を軽く叩いた。


「ごめんね亮、こいつ人見知りでさあ」
「……だっさいの」


馬鹿にしたように言われた。
言われたというか、吐き捨てられた。


「……」


悔しくないと言ったら嘘になる。
けれど、その時の私には、言い返す度胸もなかった。


言い返せない自分が悔しくて、そんなことを言うこの初対面の少年が悔しくて、うつむいた目がじわじわと熱くなる。


?」


黙りこんだ私を不審に思ったのか、兄貴がひょいとこちらを覗きこんできた。
涙目になった私に気付いた瞬間、兄貴の顔がさっと強張る。




「……お前っ!!」




あ、と思った時にはもう、兄貴が亮につかみかかっていた。


「おにっ   !!」
「よくもを泣かせたな!!」
「なんだよ、ほんとのことだろ!?」


あの頃はまだ兄貴の力もそんなに強くなかったとはいえ、亮もずいぶんとチャレンジャーなことをしたものだ。
今の亮なら兄貴に逆らうなんてことはしないだろう。絶対に。


殴り合いっこで両方ともぼっこぼこになっていくのを、ただ泣きながら見ているしなかった私も、今思えば情けないものだけれど。


「やめてえ!」


どうすれば止まってくれるのかがわからなくて、泣きながらお母さんのところに走った。


「お兄ちゃんが」と言った瞬間にお母さんは何かやらかしたと思ったんだろう、すぐにすっ飛んで行って兄貴と亮の首ねっこを遠慮なく引っ掴む。


「何やってんの、あんた達!!」


がみがみ怒られて初めて私の状態に気づいたらしく、兄貴がものすごく気まずそうな表情になった。


「亮君も!女の子泣かせちゃ駄目でしょ!!」


怒鳴られた亮はびくりと肩を震わせて、おそるおそる私の方を見る。
目どころか顔を真っ赤にして泣いている私を見て、こちらもものすごく気まずそうな表情になった。


「ほら、ごめんなさいは?」
「……ごめん……」


さすがお母さん、よその家の子でも容赦がない。
渋々といった様子で謝った亮に満足気にうなずいて、ぐいと兄貴の首元を引っ張った。


「和隆、あんたはもうちょっとお説教しなきゃね。さ、おいで!」
「お母さん、いたい!」
「当たり前でしょう!、和隆へのお説教が終わるまで、亮君と遊んでなさい」
「え、あ   


呼び止める暇もない。

そのまま退散していったお母さんを呆然と見送っていると、いきなりぐいと腕を引かれた。
驚いて振り向いた先には、仏頂面で頬を赤くした亮。




「行こう」
「あ   うん」




まだこの男の子に対する恐怖心と警戒心は解けなかったけれど、振り払う勇気もなく。
さくさくと白い絨毯を踏みしめて公園まで行くと、いきなり亮がしゃがみこんで雪を集め始めた。


「なに、してるの……?」
「ゆきがっせん」


言うが早いか、視界が真っ白になる。


……当てられた。


思わず反射的に雪玉を作って投げ返す。
それにまた亮が投げ返して、その繰り返し。

お母さんが呼びに来た頃には、双方雪でびしょ濡れになっていた。












   というのが、そもそもの腐れ縁だけど」
「そういやお前、昔は人見知りだったよな」
「へえ……意外だなあ」


鳳君が目を丸くする横で、日吉も意外そうに視線を向けてくる。


「……いつからそういう風になったんだ?」
「さあ?記憶にないなあ」
「俺も」


亮と2人で首を傾げあったら、2年コンビに揃って微妙な顔をされた。
……本当に記憶にないんだから、しょうがないじゃないか。











-----------------------------------

すず様からのリクエスト、「ガブリエル番外編、過去の話」でした。
漢前なヒロインも、昔は普通の子だったんだよ、みたいな。


書いてて一番びっくりしたのが、宍戸の第一印象が最悪になっちゃったこと。
あれ、おかしいな!もっとほのぼのした出会い方のはずだったのにな!!
ガブリエルにデンジャラスはつきものらしいです。すいません。
我が子のくせに、みんなちっとも思い通りに動いてくれません…。

宍戸は妹がいないので、ヒロインにどう接していいのかわからなかった模様。
宍戸兄は和隆よりも3歳ほど年上なので、小学校のお友達と遊ぶのに忙しいみたいです(笑)
ていうか、泣き虫なヒロインが書いてて気持ち悪かった…(こらこら)
この子が乙女回路になったら、多分私泣いちゃう!
ガブリエルでほのぼの話を書こうと思ったら、一体どんなシチュエーションにすればいいのやら。

すず様のみお持ち帰り可となっております。
リクエストありがとうございました!