私の幼馴染みは、まさに才色兼備と言うにふさわしい。

顔よし、頭よし、運動神経よし。
これ以上何を求めると言うのか、本人曰く「満足はしていない」らしいけれど。
あえて指摘するならば、老け顔すぎるというのが欠点か。

けれど、あのテニス部をあそこまで立て直して部長になり、あげく生徒会長まで兼任しちゃっている我が幼馴染み殿に、私は密かに恋をしていたりする。
どう考えても釣り合わないから、言うつもりもないけれど。




俺の幼馴染みは、とにかく異彩を放っている。
がさつだしそこらの男よりも腕は立つし、それでいて美術の才能が飛び抜けていて。
中学生のくせに学校推薦でコンクール優勝なんて、もう普通の領域ではないだろう。

文武両道、その言葉を体現するようだが、本人曰く「満足なんてするはずがない」らしい。
成績も中の上、これ以上何を望むというのか。

そんな奇妙な幼馴染みに、俺は密かに恋をしていたりする。
どう考えても俺のキャラではないし、言ったところで幼馴染みには鼻で笑われて終わりだろうから、言うつもりもないけれど。




けれどどうして、こんな状態になっているんだ?












オーケーオーケー、落ち着いて考えてみようじゃないかとはこめかみをほぐした。

いつも通りに美術室で絵を描いていたら、何故かこいつらに拉致られて部室に連れこまれた。
ああ、道具も何もかも出しっ放しだ。
あんな中途半端な絵、誰かに見られたら憤死する。


「ミツ、こいつらぶん殴っていい?」


拳を握りながらかなり本気で訊くと、青ざめた顔で「……手加減はしてやれ」と目をそらされた。
思いっきり殴ってやろうと(特に首謀者と思しき不二には)思っていたけれど、ミツがそう言うならやめておこう。

いくらあの地獄のような部活で鍛えられているからといって、私の本気が全く大丈夫だというわけではないのは、ミツで証明済みだ(本気で大喧嘩をした時に悶え苦しんでいた)
冷静に考えると、不二とかむしろ報復が恐ろしそう……。


「……わかった、やめとく」


後で菊丸だけ軽く殴っとく。


心の中でひっそりと呟いて、机の下で拳を軽く握った。


さん、こんな時間まで一人で美術室なんて、危ないじゃないか」
「別に、いつものことだし。帰り道が特別暗いってわけでもないでしょ?」
「それでも、こんな時間に一人で帰るのは危ないよ」
「私を襲える男がいるとでも?はっ、いたら見てみたいもんだね」


自慢じゃないが、体術系はお祖父ちゃんからみっちり仕込まれた。
護身術の域を超えてるって、あれは。
その証拠に、そういう部活からの勧誘が絶えない絶えない。

不二の言葉を一刀両断して帰ろうとすると、「まあまあ」と腕をつかまれて強制的に椅子に座らされた。


「ほら、雨だから部活が中止になっただろ?だからここで遊んでたんだけど……手塚が美術室の方を気にするからさ」
「何かなーって思ったら、ちゃんいるじゃん!」
「これは一緒に遊ぶべきだろう?」


脳天機に笑った菊丸を、今この場でしばき倒したい。
どうせこいつが、何か余計なことを言ったに違いない。
今日みたいな日はうまく絵具が乗ってくれないから、ちゃんと形を保てているか心配なのに。

……まあ、それでも。


「心配してくれたの?ありがと、ミツ」
「……いや」


ミツが私のことを気にかけてくれていたとわかっただけで嬉しくなるのは、仕方がないことだろう。
そう考え直すと気分が少し上昇して、こいつらの遊びに付き合ってやろうという気になった。


   ま、いっか。で、何やるの?」


それからはもう、すさまじいとしか言い様がない光景の連続だった。


ポーカーにブラックジャック、オセロにチェスにババ抜きに七並べ、そして花札。
こいつらいつも、こんなものを部室に常備しているのか。

そう言いたくなるほどの遊び道具(もちろん全てアナログ)(一部室にプレステなんて置いてあるわけもないけど)が次から次へと飛び出し、負ければ必ず罰ゲーム。


乾の例の液体Xはなかったものの、やる方からすれば超恥ずかしく、見る方からすれば爆笑ものの連続。
かく言う私も何度かやらされたけれど、本気で死ぬほど恥ずかしかった。


そうこうしているうちに、いつの間にか下校時刻。
最後の最後にやったのは、いつでも王道王様ゲーム。


「王様だーあれっ」
   あ、僕だ」


何の気もないのんびりとした声に、空気が静かに張り詰める。
この不二、人当たりの良さそうな顔をして、指定する罰ゲームはいつもえげつないものばかりだ。

さて、今度は何が来るかと身構えていたら   


「じゃあ……6番が、明日の放課後、音楽室の裏で好きな人に告白すること。いなかったら、明後日の全体ミーティングで「俺様が全てだ!!」って奇声をあげること」


にっこりと笑って、やっぱりえげつないことを言い出した。
前者なら全員で音楽室から手歯亀、後者なら全部員の中で恥をさらすことになる。

さて、6番は誰だと辺りを見回すと、苦々しい顔をしたミツの表情が飛びこんできた。
…………まさか。


「……ミツ、6番?」


おそるおそる問いかければ、無言で返ってくるうなずき。
あちゃー、これは全部員の前で恥さらし決定かな。


   結果は、明日教える。それでいいだろう」
「……まあね。楽しみにしてるよ、手塚」


苦々しい顔のミツと、含みのある笑顔の不二。
ああ、対照的すぎて笑えてくる。


珍しく美術室までついてきて、片付けが終わるのを待っていてくれたミツと一緒に帰る。
入口の外で待っていてくれるあたり、ミツは私のことをよくわかってくれていた。
そんなことを考えながらのんびりと歩く道すがら、不意にミツが立ち止まる。



「ん?」


忘れ物かと一緒に立ち止まる私に、ミツがあの低い声で一言。




   明日の放課後、音楽室の裏で」




「ああうん、わかっ   ?」


いつものように軽くうなずこうとして、途中ではたと気づいた。


   放課後?音楽室?
それって、例の罰ゲーム?


混乱する頭に、もう一度念を押すようにミツの言葉が押しこまれる。




「放課後、音楽室の裏。   いいな?」




よくよく見ると、ミツの顔もうっすらと赤かった。
それが何を意味するかがわからないほど鈍感ではなく、うまくまわらない呂律で「うん」とうなずく。


   わかっ、た」


それからどうなったかは   まあ、お楽しみということで。











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「手塚と幼馴染マネージャーのヒロインが、お互いに片想いをしあってくっつくまでの話」の、はず、が…「マネージャー」の部分をすこーん!と忘れ、こんなお話になりました…(ガクリ)
すいませんすいません、ほんとすいません!!


しかも多分、こう、期待されていたようなほのぼのから斜め45度外れた話の展開になる罠。
いつも期待を裏切る管理人です、ありがとうございます。
この後ちゃんと、次の日手塚は「罰ゲーム」を律儀に実行します。
で、ヒロインも律儀に応じます。
出歯亀部隊は、後でヒロインがまとめてお説教。

お持ち帰りはリクエストをして下さった方のみとなります。
リクエストありがとうございました!