また、だ。


もぬけの殻になった部屋に入って、小さくため息をついた。


「クラウド……」


エッジで生活するようになって2年、クラウドはよくいなくなる。
それがどうしてか、何となくはわかるけれど……どうして何も言ってくれないんだろうと、悲しくなる。


「行き先だって、知ってるんだからね」


この場にいない金髪にぽつりとこぼして、床に転がっていたブーツを軽く蹴った。
見た目よりも重いそれは、バランスを崩してごろりと倒れる。

無性にそれに苛ついて、もう一度強めに蹴り飛ばした。


「クラウドの馬鹿!!」
   ……?」


あまりに声が大きかったのだろうか、階段がきしむ音がしてマリンが顔を出す。
ほんの少しおびえたようなその表情で、自分がどんな顔をしているのかに気づいた。


「ごめんマリン、ちょっと苛立っちゃって……」
「……ねえ。クラウド、いつ帰ってくるの?」
      


慌てて紡いだ言葉を遮ったその質問に、私は言葉を失った。


いつ帰ってくるかなんて、そんなの、私が訊きたい。


私はこの家に住んでいるわけじゃないし、ティファみたいに幼馴染みというわけでもない。
成り行きで旅に同行した、きっとそれだけの関係。

ザックスを知らなければ、きっと共に行くことすらしなかっただろう。


「……ごめん。私には、わからない」


うなだれてそう呟くと、マリンも眉を下げてうつむいた。


「クラウド……」


ねえ、クラウド。
あなたはこんなにも、必要とされている。


   あなたの心は、どこにいるの?


やりきれなくなって、セブンズヘブンを飛び出した。
目指すはあの丘、   ザックスの墓標。












「見つけた……クラウド」


声をかけるかどうか、かなり迷った。

その決心をするのに、一体どれくらいの時間がかかっただろう。
おそるおそる声をかけると、生気を失ったような目のクラウドが振り向いた。


   か」
「うん、私」


何を言っていいのかわからずに、小さくうなずくことしかできない。
ぼろぼろに錆びたバスターソードの前に、2人並んでたたずむ。
傍にいるだけでクラウドの空虚が伝わってきて、やるせなくて仕方がなかった。


「……お前の分まで生きようって、決めたんだけどな……」
「……生きてるよ。クラウドはちゃんと、生きてるよ」


返事は期待されていない呟きだったけれど、そう言わずにはいられなかった。


クラウドの心はいまだ、2年前のあの時に取り残されたまま。
クラウドはどこかで、死にたがっているのではないか。

その不安がずっと、2年前から私を苛んでいた。


「なあ、。俺は本当に生きているのか?」


虚ろな目で呟くクラウドの腕をつかんで、必死に揺さぶる。


「生きてる!ちゃんと私の隣にいるじゃない!」


私を見て、ここを見て。
君は確かに、ここにいるから。


   お願いザックス、私達からクラウドを奪わないで   !!


バスターソードに祈っても、何も答えてはくれなかった。
錆びついた鉄の固まりは、物言わずそこに突き刺さったまま。


「……クラウド、私も一緒に行く」
   どこへ?」
「クラウドが今、住んでいるところに」
……?」


もう、限界だ。
私はティファみたいに強くない。
クラウドをじっと待っているだけなんて、そんなことできない   !!


強い目でクラウドを見据えて、逃がさないように手を握りしめた。


「お願い、連れて行って」
「でも   
「クラウド」


強く呼びかけると、クラウドの身体も反応する。
揺れる瞳から目をそらさずにいたら、長い沈黙の後に小さなうなずきが返ってきた。


「今は……五番街スラムの教会だね?」


見に行ったわけではない、けれど確信を持って問いかけると、やっぱり返ってくるうなずき。


「……あそこには、ベッドも何もないけれど……」
「それでもいい。クラウドがいるなら、それでいい」


ためらいながら呟いたクラウドに、迷うことなくきっぱりと言い切る。
今何よりも怖いのは、クラウドが消えてしまうことだから。


「どうせ同居人もいないし、気楽な身だからね」


悪戯っぽく笑ってみせると、ようやくクラウドが苦笑した。
久しぶりに表情らしい表情を見て、無性にほっとする。


「……行こう、
「……うん」


この世界が君にとって望むものではなかったとしても、君は確かにここにいるのだから。