教会は以前と同じように、黄色い花を静かに咲かせていた。


エアリスが丁寧に世話をしていたらしいそれが残っていて、安堵が胸を満たす。
その花の横に薄汚れた毛布が丸まっていて、そこにクラウドが寝ていたということがすぐにわかった。


   そして、黒い包帯の正体も。


「……星痕症候群、なんだね?」
「ああ……」


特に感慨を持たずにうなずいたクラウドに、反射的な反感がふくれあがる。




「何で……っ!!」




死にたいというような目をするのが、どうしても許せない。
クラウドの幸せは、全部ザックスが持っていってしまったの?

それとも、エアリスが?


ここにはない何かを求め続けるクラウドを見るのが、耐えられなかった。
憤りに震えそうな拳を押さえていたら、クラウドの呟きを聞き逃しそうになる。


は」
   え?」

「星痕症候群には、なっていないのか?」


黒い染みからいって、クラウドの病状も進行は進んでいるはずだ。
それでもなお、自分よりも私を心配するというのか。


どこまでもお人好しで、優しいクラウド。
馬鹿、と怒鳴りたくなるのをこらえて、にじみそうな涙をこらえて、小さくうなずく。


「私も、ティファも。マリンも大丈夫」
「そうか……」


あからさまにほっとしたように表情をゆるめたクラウドが、毛布を見てはっとしたような顔になった。
そういえば、寝袋も何も持たないままに来てしまった気がする。


「私、床で平気だよ?」
「いや、これは   
「病人はおとなしくしてなさい!どうしてもって言うなら、一旦家に戻って毛布持ってくるから」


ぴしゃりと言い切って軽く睨むと、クラウドもそれ以上何も言わなくなった。
渋々といったように黙りこんだクラウドに苦笑して、入ってきたばかりの入口に足を向ける。


?」
「取りに行くから、フェンリル出してもらえる?」


どこに行くのかと首を傾げたクラウドにそう言うと、我に返ったように立ち上がって隣に並んだ。


「今は、どこに?」
「知らなかったの?東のエッジだよ」


クラウド達とは別のエッジに住んだのも、ティファに対する劣等感のようなものからだった。

私には、クラウドの近くにいるほどの資格がないから。
クラウドの側には、ティファがふさわしいから。

そう言い聞かせつつもセブンスヘブンに足を運んでしまう自分を、何度笑っただろう。


「……案内は頼む」
「任せて」


そのまま帰れと言わないクラウドにほんの少しの期待をしつつ、フェンリルの後ろにまたがった。
腕を回した腰はあの時と同じように筋肉がしっかりとついていて、彼が今でも鍛錬を欠かしていないことを物語っている。


もう平和で、さほど恐怖はないはずなのに、一体何がクラウドを駆り立てるのだろうか。
その答がひどく冥いもののような気がして、思わずぞっとした。


強くかぶりを振ってそれを吹き飛ばし、目の前の背中に頬をつける。
クラウドの気配が揺れるのを感じたけれど、気にせずに目を閉じる。
恥ずかしさよりも何よりも、クラウドが生きているということを感じたかった。


流れる景色は世界から私達を隔絶させて、エンジンの爆音と風の音しか聞こえない。




「怖いよ……クラウド」




君の鼓動は、ちゃんと時を刻んでいる?




震える声で問いかけたささやきは、クラウドに届くはずもなく風にまぎれた。