わからないと、途方にくれたようにクラウドが呟いたのは、かなり時間が経ってからだった。


「罪って、何なんだろう?」
「多分それは、クラウドの中にあるんだと思う。私にはわからないから、クラウドが自分で探さなきゃ」
「俺が、自分で……」


噛みしめるように呟いて、クラウドが顔を上げる。


「……そう、だな。俺が自分でわからなきゃ、にもわかるはずないよな」


それはどこか穏やかな表情で、昔エアリスといた時のそれに似ているような気がした。
ほんの少し胸が痛んだけれど、クラウドの気が晴れたことが素直に嬉しい。

小さくうなずいたクラウドは、何かを吹っ切るように立ち上がった。


「思い出に、引きずられてばかりじゃいけないよな」
「そうだよ!大切な思い出もあるけど、起きちゃったことはもう戻せないんだもの」


エアリスやザックスが死んだことも、クラウドが全てを失ったことも。
乗り越えてくれればと、切に願う。


軽く目を伏せてそう思っていると、不意に手を握られた。




「……は、傍にいてくれるのか?」




すがるような、というのとは少し違う呟きに数度瞬いて、苦笑気味に目を細める。


「……いつでも、そばにいるよ」


それが他ならぬ、私の願いだから。


クラウドが必要としなくても、私は傍にいるよ。
小さくそう答えると、クラウドも綺麗に笑ってくれた。


「ありがとう……
「どういたしまして。さ、お夕飯を作ろう」


今日はジュノンから送ってもらった野菜と魚で、マリネを作る予定だ。

全部私が作ってもいいんだけれど、クラウドの料理の腕もなかなかのもの。
手伝ってもらった方が効率もいいし、何よりクラウドの気分転換にもなっているようだ。


教会の奥でいつものように火を起こしていると、不意に小さく名前を呼ばれた。


「どうしたの?」
「……がいてくれて、よかった」
「……そっか」


ぽつりと噛み締めるように呟いたクラウドに、小さく目を細める。
やがて目の前がほのかにかげって、同時に感じた肩のぬくもりに、思わず小さく反応してしまった。


クラウドがためらうように動きを止める気配がして、内心小さく苦笑する。


   どこまでも、優しい人。


今度は私からクラウドの首に腕を回して、こつりと額を合わせる。
緊張で微かに震えるこの情けない手に、気づかないでいてくれるだろうか。


「……好きだよ、クラウド。世界中が否定しても、クラウド自身が否定しても、私は最後までクラウドの味方でいるよ」
「…………」


切なそうに目を細めて、クラウドがかすれた声で呟く。
一瞬だけ唇に温かいものが触れて、そのまま触れそうなくらい近い位置で動く。


好きだ、とささやかれた言葉はどこかぎこちなかったけれど、それがそのままクラウドの不器用さを示しているようで。
もう一度ゆっくりと口付けられて、震える瞼をそっと伏せた。




「ん   ふ……っ」




生まれて初めてのキスはぎこちなくて、だからこそとても愛しい。
お互いに慣れていないのが丸分かりの稚拙なキスが、この上なく幸せだった。


重ねて、離して、また触れて。
じゃれるようなキスを繰り返して、気づいたら火が消えてしまっていた。


「……スープ、出汁とりなおさなきゃね」
「ああ」


照れながら互いに苦笑しあって、作り直した夕飯は、今までよりも美味しく感じた。