そんな風にして、フィールドワークをしてはヴィンセントに荷物を運んでもらってということを繰り返しているうちに、いつの間にか半年が経っていた。
無茶な行程を行こうとするクラウドを必死に止めたり、ご飯も食べないでどこかに行こうとするのを叱り飛ばしたり、何だか色々なことがあった。
もちろん私もモンスター見たさに湿地帯に入ろうとするのを止められたり、崖からロープ1本で降りたいと言ったらものすごい勢いで却下されたり、クラウドに怒られたことがたくさんあるけれど。
「、今日も野宿で大丈夫か?」
「うん。街につけないんじゃしょうがないでしょう?」
「悪いな」
私の勝手に付き合ってもらっているのに、野宿が続くとクラウドはいつも申し訳なさそうな顔になる。
別にいいのにと思いながらかぶりを振ると、厚手の毛布を渡してもらう。
荷物を枕にして、厚手の毛布一枚で寝るのも、もう慣れた。
相も変わらずクラウドが火の番をしてくれるので、一人でのフィールドワークよりもずっと楽に安心して眠れる。
今までは一人のフィールドワークの方が気ままでいいと思っていた。
けれどクラウドと一緒に移動するようになってから、誰かといることがこんなに楽だったのかと知って、正直とても驚いた。
個人プレーの多いあの仲間達とでは、きっとこんな居心地のよさはないだろう。
ほぼ確実に、皆好き勝手やってはぐれるに違いない。
「ねえ、クラウド」
「ん?」
「……ありがとね、ずっと付き合ってくれて」
しみじみと告げると、クラウドは一瞬虚を突かれたように目を見開いた。
次の瞬間にはおかしそうに苦笑して、火に小枝をくべる。
「どうしたんだ?今更」
「まさかクラウドも、フィールドワークがこんなに長くなるとは思わなかったでしょ?」
悪戯っぽくそう訊くと、クラウドも笑ってうなずいた。
「さすがに、半年もかかるとは思ってもみなかったな」
半年の間ずっと、クラウドは食費と燃料費だけでついてきてくれた。
どれだけお人好しなんだと笑った時もあったけれど、今考えればありがたいことこの上ない。
あの時クラウドに頼んでよかった。
「、次はどこに行く?」
「そうだなあ……ラッバタンの辺りにこの時期活発に活動する種類がいたはずだから、そこに行ってもいい?」
「わかった」
うなずいたクラウドが火の勢いを弱くして、もう寝ろとうながす。
おとなしくそれに従おうとして、ふと以前からの疑問が口を突いて出た。
「……クラウド、野宿の時はいつ寝てるの?」
「……が寝た後に」
「何時間ぐらい?」
「いや……正確には……」
答えるまでの間が怪しい。
こちらを絶対に見ようとしないのも怪しい。
「ク ラ ウ ド ?」
言い逃れは許さないとばかりに笑顔に力をこめて呼ぶと、気まずそうにちらりと視線が向いた。
その表情だけで、何だかすべてがわかった気がする。
「 完徹で運転なんてするもんじゃありません!明日は絶対にどこかの村か町に泊まるからね!!」
「いや、2時間ぐらいは仮眠を 」
「そんなもの、寝たうちに入るもんですか!どうせモンスターがきたら反応できるように、熟睡なんてしてないんでしょ?」
畳み掛けるようにそう言い放って、勢いよく毛布を被った。
「今日だけは甘える。だけど、今度からは完徹なんて絶対許さないんですからね!!」
クラウドは疲労をちっとも顔に出してくれないから、言ってくれなければ気づけない。
それが何とも歯がゆくて、どうしてだろうと自問自答する。
半年も一緒にいれば、もちろん仲間意識は芽生えるだろう。
けれど、研究仲間が何日徹夜しようとも、気にした事は今まで一度もなかった。
それがどうしてクラウドだと、こんなにも心配してしまうのだろうか。
単に自分の身の安全のためというより、もっとこう違う感じが 。
ああでもないこうでもないと考えていたら、クラウドに心配されたようだ。
「?火が明るすぎるか?」
「いや、大丈夫……むしろ、それ以上弱くすると、クラウドが寒すぎるでしょ」
「俺は慣れてるから」
「慣れてるからじゃありません!風邪でもひいたらどうするの」
やっぱりどこかずれているクラウドにぴしゃりと返しながら、その時唐突にわかってしまった。
私、クラウドの事が好きなんだ。
そうとわかれば、もう平静ではいられない。
叫びたくなるのをこらえつつ、のたうち回りたいような羞恥心と必死に戦う。
ここで負けたら、クラウドに不審に思われる!
けれど、そんな必死の努力も無駄だったようだ。
「 、本当に大丈夫か?何だか様子がおかしいぞ」
思いっきりばれていた。
いっそ清々しいほどに、毛布の下の動揺を見て取られた。
「何でもない。ちょっと考え事をしてるだけだから」
「またモンスターか?程々にしないと、身体がもたないぞ」
「失礼な、クラウドじゃあるまいし」
どうやら、本当に動揺を気取られただけらしい。
そのことにほっとしながら、さてどうしようとほてる頬を押さえる。
告白する自分なんて、恥ずかしすぎて想像もできなかった。
しばらく考えたけれど、今まで通り一緒にフィールドワークができれば充分だと思っている自分に気づく。
どれだけピュアなんだ、私。
自分で自分に突っ込みながらも、これから出会うモンスターと、その行程でのクラウドとの日々を思って小さく微笑んだ。
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