せっかく自宅に荷物を運んでもらったのに、だんだん荷台に乗せる量が増えてきた。
バイクもかなり重そうで、エンジンをかける度にしんどそうな音がする。


「……荷物、また運んでもらってもいい?」
「……待ってろ、ヴィンセントを呼ぶ」
「いや、いいよ。次の街で待ってる」


あの時は比較的ミッドガルに近かったけれど、こんなに離れてしまった今呼ぶのは、さすがに申し訳ない。
大丈夫だから戻ってくれと頼むと、クラウドは難しい顔でかぶりを振った。


「もうそろそろ、寒さが厳しい地域に入るだろ。長期間一人で置くのは、いくらなんでも危ない」
「……あの、一応今まで、一人でフィールドワークやってたこともあるんだけど……」


どんなに危なっかしく思われているんだと思いながら一応口を挟むと、クラウドは一瞬きょとんとした顔になる。
そういえばそうだったというようにうなずいて、けれど携帯を取り出す手は止めなかった。


   俺だ。また頼みたいんだが……」
「ちょっとクラウド」
は黙っててくれ」


言おうとした文句をぴしゃりと跳ね返されて、手持ちぶさたに口をとがらせる。
本当に、どれだけ信用がないんだ、私は。
次の町でまたヴィンセントと待ち合わせることにしたらしいクラウドは、燃料をちらりと確認してから後ろに乗るように合図をした。


「早く行こう、。ガソリンが心もとない」
「……わかった」


こうなったらもう、いくら嫌だと言っても聞いてくれないだろう。
ヴィンセントならばクラウドのように強行軍はしないはずだから、もしかしたらむしろ安心かもしれない。












「とか思ったのに……」


?」
「どうした?」


しれっとした顔で立っているヴィンセントを見ながら、歯ぎしりしたい衝動にかられた。
2人とも訳がわからないという表情をしているのが、また腹立たしい。


「どこを!どうすれば!私達より遠くにいたはずのこの人が先に到着して!挙句の果てに1泊しちゃったりできるわけ!?」


私達だって、それなりに急いできたはずだ。
今までよりも速いスピードを出していたし、振動で舌を噛みそうになったことも数回。
けれどクラウドは絶対に一定以上はスピードを出さなかったし、おそらくはあれが限界だっただろうに。

どんな人外だと思わず睨みつけた先で、クラウドとヴィンセントは顔を見合わせて首を傾げる。


「……ほぼいつも通りのはずだが……」
「今回はがいたからな」
「そう思って、これでもゆっくり来た」
「助かった。それなりにセーブして来たんだ」


淡々と交わされる会話に、くらりと目まいを感じてしまった。
この人外達が。

クラウドは放っておけば不眠不休で走り続けかねないウッカリさんだと思っていたが、まさかヴィンセントまでとは。
駄目だ、これでは誰も頼りにならない。


   っ、あなた達、今日はもう休みなさいな!!一体どういう身体をしてるの!」


まだまだ話し続けそうな2人に一喝すると、ヴィンセントが驚いたような目でこちらを見た。
3秒ほど見つめあった後、ほんの少しだけ笑った彼が、クラウドに視線を移動する。


   いつもこうか?」
「おかげで、ずいぶんと規則正しい生活になったよ」
「いい傾向じゃないか。   


不意に名前を呼ばれて小さく反応した私に、ヴィンセントは柔らかい口調でうなずいた。


「クラウドを頼む」
   はあ……」


何をよろしくされたのかはわからなかったけれど、規則正しい生活をするのは旅の基本だとうなずく。
明日までに持ち帰る荷物の整理をと言い残して、ヴィンセントはそのまま部屋を出ていった。
すぐに別のドアが開く音がしたから、きっと寝てくれるんだろう。


「さ。私達もご飯食べて、早く寝よう」
「……荷物の整理はいいのか?」
「ちょっとずつしてたから、そんなに大変じゃないよ。クラウドは先に寝ててね」
「いや   
「寝 て て ね ?」


クラウドが何か反論しようとしたけれど、笑顔で念を押して押し切った。

こうでもしなければ、そのままふらりと情報収集とやらに出かけてしまいそうだ。
しっかり休んでもらわないと、こちらが心配でたまらない。


夕食を取り終わってゆっくりとお風呂に入った後は、クラウドをベッドに押しこめて荷物整理の時間だ。
恨めしそうにこちらを見てくる視線があるような気もするけれど、そんなものはすぱんと無視。


大体、野宿の時に私が見張りをしたことなんて一回もないなんて、おかしいじゃないか。
ちゃんと寝ているのか確認できないのが、実はものすごく不安だ。


「クラウド、今日くらいは早く寝て。別に火の番をする必要も見張る必要もないでしょ?」
こそ、今日は疲れてるはずだろ?」
「荷物の整理だけはしなくちゃ。   ああ、でも、ヴィンセントも少し休ませた方がいいのかしら」


あの人もそのまま帰すと、不眠不休ですっ飛んで行きそうだ。
整理をせずに数日滞在した方がいいのかもしれないと、大量の荷物を見る。


「別に急ぐ旅じゃないんだろ?数日いたところで、俺は困らないぞ」
「……それもそうだね」


そうとなれば、今日はもう寝てしまおう。
実はさっきから筋肉痛とだるさを訴えてくる手足を引きずって、手前のベッドに潜りこんだ。


「おやすみ……起きたら起こして」
「わかった」


いつもと同じような会話。
けれどクラウドが小さく苦笑したように感じたのは、一体何故だろう。
考えようとしたけれど、睡魔に勝てずに目を閉じた。