弾けるような足取りと、底抜けに明るい顔。
足音だけで彼を判別できるようになった自分に苦笑して、軽く手を振った。
「ずいぶんご機嫌ね、ザックス」
「おう、!」
駆け寄ってきたザックスは、ごく自然な動作で私の荷物を半分取る。
こういうところが人に好かれる理由なのだろう。
「最近訓練の成績がよくてさ!給料も上がったし、もう絶好調だぜ!」
「あらあら、さすがはソルジャーだね。最近はセフィロスとも仲がいいって聞いたけど?」
「あー……まあ、色々あってな」
からかうつもりで尋ねたら、一瞬だけ痛そうな目をされてしまった。
……何があったんだろう、ザックスは滅多にこんな目をしないのに。
気にはなったけれど、これ以上突っ込んで訊くのはかえってザックスを傷つける気がして、そっと口をつぐんだ。
「……セフィロスね、最近表情が柔らかくなったって。マイヤードがこっそり教えてくれたの」
事務要員の私とは直接関係ないけれど、ファンクラブが浮き足立っていると、会社全体がなんとなく温かい。
いつもより笑顔の人が多くて、有名になるとここまで影響力があるものなのかと感心してしまった。
きっと、ザックスのおかげだね。
そう言うと、ザックスが照れくさそうに頭をかいた。
はにかんだような表情でそっか、とかえへへ、とか呟いて、また満面の笑顔を浮かべる。
「セフィロスも、笑ってる方がいいもんな!」
「そうそう。前はなんだか、近寄りがたいイメージだったよね」
「だよなー、つーんとしちゃってさあ」
セフィロスのものまねなのか、ザックスが気取ったような表情で顎を上げた。
その様子があまりにも似合わなくて、思わず吹き出してしまう。
「あ!ひっでえぞ、!」
「ごめ……っ、だってザックス、似合わなすぎ……!」
わざとらしく傷ついたようなリアクションをとったザックスがまたおかしくて、さらに笑いがこみあげてしまう。
お腹を抱えて笑っていたら、拗ねたようにしゃがみこんでのの字を書き始めてしまった。
「どうせさあ……」
「拗ねないでよ」
苦笑して背中を叩くと、ザックスの腕から書類を取り返す。
「まだ、やることがあるんじゃないの?私はいいから、ラザード統括に怒られないようにしなさいよ」
「あ、それなら平気」
軽やかに笑ったザックスに、胸の奥がざわめいた。
これ以上聞いてはいけないと、直感が警報を鳴らす。
ザックスがこんな表情をする時は、話題は一つしかないのだから。
耳を塞ぎたい衝動を必死に我慢しながら先を促すと、うきうきとした残酷な言葉が突き刺さった。
「今日は早めに解放してもらえてさ、これからエアリスに会いに行くんだ!」
ああ、やっぱり。
いつもよりもずっと甘い目で笑う時、ザックスは彼女のことしか考えていない。
「うわあ、妬ける!」
わざとらしく笑いながら、針が何本も刺さったような胸の痛みを無視した。
「ほら、早く行かなきゃ。可愛い彼女の機嫌が悪くなっても知らないよ?」
「うっせえなあ、悔しかったらも早く男作れっての!」
「はーいはいはい、今は仕事で手一杯ですう」
馬鹿、あんたが好きなんだよ。
あんたが彼女に会う前から、ずっとずっと好きなんだよ。
気づけよ、二ブ男。
何回か見たことのあるエアリスは、文句のつけようがないほど可愛かった。
どう頑張っても勝てはしない、それはわかっている。
だから笑って、ザックスの背中を張り飛ばした。
「ほら、行った行った!私も暇じゃないんだからね、のろけなら業務外で!!」
さからいたい、さからえない、さからわなければ
(この胸に巣食う気持ちに)
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